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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode6 留学生を救え?!
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第89話 反撃のカウントダウン

こんにちわ。

6月最初の投稿です。

 真樹の計らいにより、沙崙はオリエント通信の飯田から取材を受けることになった。目的は沙崙が茉莉奈達から受けているいじめと、同じ団地の住人である山田からしつこく付きまとわれていることを記事にしてもらい、世間に訴えかけることなのだが、飯田も予想以上に壮絶な内容に怒りを隠せず、ジャーナリスト魂に火が付いたようだった。現在も、市内にある小さな喫茶店で取材を続けている。

「それと、住まいはどうしているんだっけ?」

「学校が寮として借りている団地があるんですけど、そこの一室に住んでいます。」

「湯川君の話だと、同じ団地の男性にしつこく付きまとわれているって聞いたけど…。」

「…。はい。」

 沙崙は山田との嫌な思い出を思い出したのか、表情をこわばらせながら詳細を話し始める。

「私が部屋に住み始めたその日でした。部屋の整理整頓を終えて同じ団地の人に菓子折り持って挨拶に行ったんです。そのうち私の真下に住んでいる人がその山田さんて人なんですけど、挨拶した次の日から『ご飯行こう』とか『学校まで送って行くよ』と言う感じに迫ってきて、私が断ると『僕の事が嫌いなんだ!』とか『人の好意を踏みにじると罰が当たるよ!』なんて言いながらすごい剣幕で怒り始めるんです。何を言っても話を聞いてくれるタイプじゃなさそうなので対処に困っているんです。」

 悲しそうな顔で山田の事を話した沙崙。飯田も険しい表情で真樹と杜夫に質問する。

「湯川君と公津君はストーカーの件はどうやって知ったの?」

 飯田の質問にはまず真樹が答えた。

「僕が陳さんと一緒に先生に連れられて病院に行った際、彼女が遺書を持っていたんです。その遺書の内容が今回のいじめとストーカー関係の悩みでした。一度クラスの皆で陳さんのお見舞い行った時もやはり昼間なのに部屋の近くをずっとうろうろしてましたね。」

 真樹が話し終えると杜夫が追加情報を話し始める。

「見るからに怪しい奴でした。真樹が部屋聞いただけなのに『陳さんはあまり元気が無いようです』やら『何かあったら僕がどうにかします』とか意味分かんないことぬかしてて、お前は陳さんの何なんだよって思いましたね。」

 真樹と杜夫の話を聞き終えた飯田は深刻な表情でコーヒーを飲んだ。飲み終えた後に何か決意のこもった表情で真樹達3人に言った。

「話は分かった。今回ことを今週号のオリエントタイムズやWEBニュースの特集記事として書いて、陳さんの事を知ってもらおう。」

「「「本当ですか?ありがとうございます!!!」」」

 3人は声を揃えて飯田にお礼を言った。そして、飯田は更に続ける。

「どう致しまして。ただ、記事にするための止めの切り札の用意が必要なんだ。君達の力が必要なんだけど、協力してくれる?」

「当然ですよ。僕から電話をかけておいて何もしないなんてことは無いですから。」

「私にできることがあるなら何でもします。もう、こんな地獄みたいな日常は終わらせたい。」

 真樹はさらりと答え、沙崙は切実な思いでそう言った。すると飯田は微笑みながら頷いた。

「分かった。じゃあ、その切り札の説明をするね。」

 真樹達は飯田の説明を真剣な面持ちで聞いた。説明を終えた後、4人は店を後にするのだが、店を出たタイミングで飯田が沙崙に質問する。

「そう言えば、さっき言ってたストーカーって毎日現れるの?」

「ええ。学校行く前とか帰った時に団地の中庭にいて私に話しかけてくるんです。まるで待ち構えているみたいに。」

「そうか…。僕も現状を知りたい。みんなで家まで送って行こう。」

「あ、ありがとうございます。」

 飯田の提案により、真樹達は沙崙を家まで送り届けることになった。取材を受けた店は彼女が住んでいる団地とは反対方向の為、歩くと少し時間を要する。それでも団地に到着し、沙崙を部屋まで送る届けようとした時、中庭に人影が見えた。

「げっ…あのおっさんまたいるじゃん。どんだけ暇なんだよ。」

「騒ぐな杜夫。下手に刺激して事態を悪化させたら面倒だ。ここは普通にやり過ごせ。」

 山田を見て顔を顰めた杜夫を冷静になるよう促す真樹。飯田はうろうろする山田を見て、沙崙に質問する。

「あの人が陳さんに付きまとっている人なのかな?」

「ええ…全く、なんで毎日いるんだろう?」

 山田を見て沙崙は完全に怖がっている。飯田の方も山田の様子に完全に引いているようだった。それでも4人は部屋に着く為に山田が立っている所へ歩きだす。部屋に上がる階段の前に到着したその時、山田が不満そうな声で沙崙に話しかける。

「沙崙ちゃん、これはどういうこと?」

「いや…その…学校の友達と一緒に帰っただけで。」

「僕の誘いは全て断るのに、こんな奴らの誘いには乗るんだ。いい加減にしてよ、僕の事が嫌いなら、はっきりそう言って!」

「こんな奴らって、お前なぁ!」

 あまりの悪態の上に、こんな奴ら呼ばわりされて杜夫もさすがに怒りが爆発しそうだった。怒りながら山田に詰め寄ろうとした杜夫を真樹は冷静に宥める。

「待て、杜夫。ここでキレたら相手の思う壺だぞ。」

 真樹に言われて杜夫は落ち着きを取り戻した。そして、山田の方を向き直って言った。

「同じ学校の生徒同士で一緒に帰って何が悪いんですか?普通ですよね?それに、陳さんが嫌がっているのにしつこく付きまとうのはどうかと思います。少しは陳さんの気持ちを察して下さい。」

 真樹の忠告に対し、山田は尚も不満そうに続ける。

「うるさい。お前みたいなガキに言われる筋合いはない!沙崙ちゃんは僕にとって特別なんだ!そんな沙崙ちゃんをたぶらかして悪の道に引きずりこんだのはお前らだ!状況によっては、僕がお前らを許さない!覚悟しておけ!」

 山田の話を聞いた真樹は、これ以上話しあっても無駄だと判断し、沙崙達と一緒にさっさとその場を後にした。部屋に到着した際、飯田も唖然とした様子で言った。

「い、いやぁ…あれは予想以上だね。あんなのが近所に住んでたら僕もいやだなぁ。とにかくお疲れ様。じゃあまた来週ね!」

「いえいえ、皆さんも私に付き合ってくれてありがとうございます。」

 沙崙は深々とお辞儀をしながらそう言った。その後、真樹、杜夫、飯田の3人は帰宅すべく成田駅へと向かったのだが、中庭では山田がまだ騒いでいたのだった。


 翌日。この日は土曜日だったので真樹は野球部の午前練習に出ていた。先日の飛び降り騒動で練習が中断していたので、出来なかった分の穴埋めも兼ねている分いつも以上に練習メニューの密度も濃い。その後、休憩時間になり真樹は少し息を切らせながら鞄に入ったスポーツドリンクを取り出した。飲み終えた後は水を得た魚の如く生き返った真樹だが、そのタイミングで伸治と武司が話しかけてきた。

「よぉ、真樹。そう言えば昨日の取材どうなったんだよ?記事にしてもらえそうなのか?」

「陳さん元気そうだった?今週は全部休んでたけど、ちょっと気になるな。」

 二人の問いに、真樹はさらりと答える。

「大丈夫だ。担当してくれた記者さんも昔台湾に語学留学したことある人で、今回の事は許せないし、絶対記事にするって言ってたぞ。心配はいらなそうだ。」

 真樹の言葉に二人は安心したようだった。

「よかったな。やっぱお前の行動力は尊敬出来るぜ、真樹!」

「後はあのストーカー野郎だな。学校の問題が解決しても、帰ったらあいつがいるんじゃなぁ。」

 記事の作成がほぼ決まった事に喜ぶ武司に対し、伸治は山田のことが気がかりだった。その事についても真樹は冷静に話し始める。

「大丈夫だ。それに関しては多分明日までにどうにかなる。」

「「え…?」」

 真樹の言葉に二人は少し驚いた表情になった。それからすぐ、休憩時間が終わり、真樹達は練習に戻ったのだった。


 同時刻。沙崙が部屋にいると、インターホンが鳴った。

「はーい。」

 沙崙は返事をしながら玄関に向かう。ドアを開けると、そこには私服姿の慶と美緒がいた。

「陳さん、元気してた?迎えに来たよ!」

「今日は一旦嫌なことは忘れて、私達と楽しむわよ。」

 この日は3人で出かける約束をしていた。沙崙を元気づけけるのと、山田からの護衛も兼ねられるということで美緒が提案したのだった。来日後、友人たちと出かけるのが初めての沙崙は少し緊張していたが嬉しそうに微笑みながら言った。

「鬼越さん、菅野さん。今日はありがとう。宜しくお願いします!」

「気にする必要はないよ。それと、僕のことは慶ってよんでいいよ。」

「私も美緒でいいわ。陳さん、準備はいい?」

「ええ。私の事も沙崙って呼んでいいわ。慶、美緒。」

 準備ができたようなので、沙崙は荷物を持ち、部屋に鍵を掛けて慶と美緒と共に階段を下りて行った。すると、そこには案の定山田が待ち構えており、3人に絡んでくる。

「沙崙ちゃん。昨日僕が言ったことをもう忘れたの?どうしてそんなに僕を避けるの!僕より先にこいつらとお出掛けなんてひどい!」

「前から約束してたんです。山田さんには関係ないですよね?」

 今までとは打って変わって、沙崙は顔を強張らせずに冷静に流した。山田はそれが気に入らなかったのか、更に怒りを込めながら続ける。

「僕にそんなこと言うなんて…。僕はこんなにも沙崙を大事にしているのに。もう怒ったよ。これ以上僕を怒らせたらただじゃ済まないから。」

「どうぞご勝手に。」

「強がっても無駄だよ、沙崙ちゃん。そうだ、救済措置をあげる。明日から一週間、僕に晩飯を奢ってくれたら許してあげる。どう、これなら大丈夫でしょ?」

 山田の一方的な因縁に対しても、何故か沙崙は冷静だった。そして、見るに耐えられなくなった慶と美緒が怒りを爆発させながら山田に詰め寄る。

「ねぇ、山田さんだか何だか知らないけど、これ以上僕の友達を困らせないでくれる?マジでうざいんですけど!」

「そうよ。しかも痛い目に合わせるとか、1週間ご飯奢ったら許してやるとか何考えてるんですか?完全に脅しよ、こんなの。」

 慶と美緒に怒りをぶつけられても、山田の言いがかりは止まらなかった。

「うるさい。女はいつもこうだ!大したことないのに怒って、僕の悪口を言う。でも沙崙ちゃんだけは違った。引っ越してきた時に笑顔で挨拶してくれた。僕に優しい笑顔を見せてくれた女性は沙崙ちゃん唯一人だったのに…。そんな彼女を悪に染めたお前らを僕は許さない!明日命が無いと思え!」

 騒ぎ立てる山田を見て、3人は呆れて言葉も出なくなってしまった。そして、慶が溜息交じりに吐き捨てる。

「行こう、二人共。これ以上構ってたら時間の無駄だよ。」

「そうね。早くいかないと日が暮れちゃう。」

「うん。早く遊びたいわ。慶、美緒。改めて宜しくね。」

 慶に続いて美緒と沙崙もギャーギャー騒ぐ山田を無視して、足早にその場から立ち去った。そして、近くにあるバス停にバスが止まっているのが見えたので急いで駆けこんだのだった。

「沙崙、なんかずいぶん冷静だったね。」

「湯川君が昨日教えてくれたの。山田さんの問題を明日までに解決させるためにちょっと仕掛けをしてね…。」

 少し驚く慶に対し、沙崙は微笑みながらそう言った。そして、スマホの画面を起動させた沙崙はある動画を見せた。そこには先程の騒ぎ立てる山田が映っている。それを見た美緒が言った。

「これはいい証拠映像ね。これで言い逃れできないからきっと逮捕できるわ。」

「うん。今まで私は逃げることばかり考えてたけど、湯川君の逃げずに立ち向かう所を見習っていきたいと思ったの。」

 沙崙の言葉を聞いて、慶と美緒は感心した様子で言った。

「僕も真樹がいてくれてよかったって思ってる。友達として見習いところもあるけど、それでもやっぱり誇らしいよ。」

「口が悪くて生意気なのは玉に傷だけど、湯川君の正義感に共感できる所はいっぱいあると思うわ。」

 そんなことを話している内に3人を乗せたバスは目的地に向かい、ショッピングや映画などで楽しく時間を過ごしたのだった。


 また次の日。

「うーん…そろそろ寝るか。」

 ここは沙崙に付きまとっている男性、山田の部屋だ。時刻は朝の6時だが、彼は徹夜でネットゲームをやり続けており、キリがいい所で終わったのでこれから寝ようとしていた。散らかった部屋を適当に片付けて横になろうとしたその時、突如インターホンが鳴った。

「なんだよ、人が折角寝ようとした時に!」

 イライラしつつも玄関に向かう山田。ドアを開けると、スーツを着た数人の男性が立っており、山田の顔を見るなり話し始める。

「山田四朗さんですね?」

「そうですけど。」

「千葉県警です。何で僕達が来たか分かる?」

「分かりません。ってゆうか眠いんで寝させてもらっていいですか?」

 突然警察が来て驚いたが、山田は眠気が勝っていたので寝たいと言った。しかし、山田の要望は受け入れられなかった。

「そんなこと言っている場合?あなた、同じ階の女性にしつこく付きまとった上に、痛い目に合わせるとか言ったよね?」

「付きまとってません。彼女との関係は特別です。仲良くやってます。」

「でもねぇ、その女の子直接警察署に来て被害届まで出しているんだよ。証拠映像付きでね。」

「嘘だ!沙崙ちゃんは絶対にそんなことしない!僕に優しい笑顔を見せてくれた唯一の女性なんだぞ!そんな優しい子があり得ない!いい加減なこと言うな!」

「言ってないよ。だって逮捕状まで出てるんだよ。ほら。」

 そう言って刑事は山田に一枚の紙を見せた。そこにはしっかりと逮捕状の文字があり、山田の名前と罪状も書かれている。しかし、それでも山田は認めようとしない。

「こんなの誰かが適当に作った偽物だ!冤罪で僕を嵌めようとしてるんだ!」

「残念だけど、これは裁判所から発行された正真正銘の本物だよ。そう言う訳で山田さん。あなたをストーカー規制法違反及び脅迫の容疑で逮捕します。」

「ふざけるな!やめろ―!」

 山田の叫びもむなしく、刑事は彼の手に手錠をかけ、そのままパトカーに乗せて警察署に連行した。こうして、沙崙を苦しめていた問題のうち、1つが解決したのだった。

こんにちわ。

問題が一つ解決してよかったですね。

に懲り一つの問題はどうするのでしょうか?

次回をお楽しみに!

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