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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode6 留学生を救え?!
89/328

第88話 取材開始

おはようございます。

5月最後の投稿です。

 真樹がオリエント通信に沙崙の事で取材を取り付けた翌日、彼はいつも通り家を出て学校に向かおうとしていた。電車に乗り、学校最寄り駅である成田駅に到着するといつも通りに慶と出会う。

「おはよう、真樹。」

「おはよう、オニィ。」

「そう言えば、真樹。今日は取材の日だったね。」

「ああ。勿論陳さん同伴でな。」

「本当に僕も行かなくて大丈夫?」

「オニィ今日練習だろ?それに、あんまり大勢で行くと目立つし、万が一八広に見つかったらまずいからな。」

「それも、そうだね。」

 二人は本日の取材に関して話していた。そうしている内に学校に到着し、校舎に入って行ったのだが…。

「おい、湯川!」

 いきなり声をかけられた。振り向くとそこには裕也が蔑む様な笑みを浮かべて立っていた。真樹は面倒くさそうに返事をする。

「何か用?」

「お前、陳さんが飛び降りた時に下で受け止めたんだって?」

「それがどうした?」

「うわー、だっせー!何、カッコつけてヒーローにでもなろうと思った訳?お前みたいな嫌われ者が救世主なんてなれる訳ないのに!」

「ちょっと大和田君。そんな言い方は無いんじゃない?真樹がいなかったら陳さんが死んでたかもしれないんだよ!」

 真樹に絡んだ挙句、悪口を浴びせる裕也に対し苛立ちを隠せない慶は荒い口調で裕也にそう言った。すると裕也は舌打ちをしながら慶に近づき、胸倉をつかんで思い切り投げとばした。

「うわっ、何するんだよ!」

「うるせえ、ブスの分際でこの俺に舐めた口きいてんじゃねぇ!」

 裕也は慶に言われたことがよっぽど腹が立ったのか、頭に血を上らせながら声を荒げた。そんな裕也を見て真樹は完全に呆れかえっている。周囲はざわついているが、真樹は気にせず裕也に言葉をかけた。

「遂にお前も女に暴力か。女の子は大事にしなきゃいけないって言ってる割に行動が矛盾してないか?」

「フン。魅力の欠片もない女んか人間扱いする価値もねぇよ。鬼越も、あの留学生もな。こんな奴らははっきり言って邪魔。八広さんみたいな美人で勉強も出来て目標の為に努力している女の子がいいに決まってんだろ?」

「あっそ…。で?何でお前は俺に声をかけたんだ?」

「あのねー。国際科の女の子達、あの留学生の事迷惑がってんだよね。折角自分から死んで、茉莉奈ちゃん達が楽しくが過ごせるはずだったのに、よくも邪魔したよね?余計なことしないでくれる?」

 裕也は茉莉奈の事を気に入っており、茉莉奈の方も裕也にぞっこんな部分はある。裕也としては茉莉奈が迷惑がっている原因が排除できなかったことを面白く思っていないようだった。あまりにも無茶苦茶な言い分に真樹と慶が言葉を失っていると、今回の事件の張本人が現れた。

「おっはよー、裕也君!」

 八広茉莉奈である。茉莉奈は裕也を見るなり満面の笑顔で駆け寄ってきた。

「ねぇねぇ、裕也君!途中まで一緒に教室行こう!」

「いいよ!朝から茉莉奈ちゃんに会えるなんてラッキーだよ!」

「嬉しい―!私も裕也君の顔見れて最高!それと、何でこいつらがいる訳?」

 茉莉奈は真樹と慶を見るなり、見下すような表情で言った。それに対し裕也が説明する。

「湯川が茉莉奈ちゃんの邪魔するから懲らしめてやったんだ。それに対して鬼越まで俺に楯突くからホント不愉快ったらありゃしない!」

「わーい、ありがとう裕也君。」

 茉莉奈は笑顔で裕也にそう言った。そして、真樹を睨めつけながら続ける。

「湯川さぁ、よくも余計な真似してくれたわね!ホント無理なんだけど!マジでこの世から消えてくんない?」

「うるせぇ、俺にとってはお前の方がよっぽどクズなんだが。」

「ひどーい!裕也君、こいつにクズとか言われたんだけど!」

「行こう、茉莉奈ちゃん。こんな奴らに構うだけでも時間の無駄だから。こっちまで頭おかしくなっちまう。」

「うん、そうね。行こう行こう!湯川のバーカ!キモい、死ね、カス!」

 茉莉奈はそれだけ言うと、裕也と共にその場から立ち去った。真樹は慶に近づいて手を差し伸べる。

「大丈夫か、オニィ?」

「うん、僕は平気だよ。それにしても、大名田君と八広さんの人間性を疑うよ。」

「ほっとけ、地獄を見るのはあいつらだから。俺達も行こうぜ。」

「うん、そうだね。」

 真樹は慶を立たせると、そのまま教室に向かったのだった。


 放課後。成田駅にて。

「いやー、取材か。少しドキドキするな。」

「お前が緊張してどうする?今回のメインは陳さんなんだからな。」

 緊張する杜夫に対し、真樹はそう声をかけた。今回沙崙の取材には真樹と杜夫が立ち合うことになった。本当は真樹と沙崙の二人が取材を行う予定だったのだが、写真部の杜夫はプロによる本物の取材を見てみたいということで立ち合うことになった。しばらくすると、本日の主役が来た。

「あ、おーい陳さん!こっちこっち!」

 杜夫は沙崙を見つけると手を振りながら言った。沙崙は立石の気遣いで今週いっぱい休む様に提案され、この日も授業を欠席していた。なので真樹と杜夫が制服なのに対し、彼女は私服である。

「湯川君、公津君。私のためにわざわざ時間を作ってくれてありがとう。」

「気にするな。これも八広達に鉄槌を下す為だ。」

「そうだぜ、陳さん。大船に乗ったつもりで真樹についていきなよ。」

 感謝する沙崙に対し、真樹と杜夫がそう話していると、20代後半くらいの男性が3人の元に近づいてきた。

「失礼。私、オリエント通信の飯田と言う者ですが、昨日うちに電話してきたのはあなたでしょうか?」

「はい。僕が湯川真樹です。そして、この子が昨日話した留学生の…。」

「陳沙崙と申します。本日は宜しくお願いします。」

「二人の友人の公津杜夫です。宜しくお願いします。」

 3人が自己紹介を終えると、飯田は少し安心した表情で言った。

「よかった。大谷津学院の制服着てる人いっぱい歩いているから人違いだったらどうしようって思って。」

「大丈夫です。それでは行きましょう。」

 真樹は飯田にそう言うと、取材を行うべく場所を移す為に先頭に立って歩き始めた。今回真樹が取材場所として用意したのは学校とは反対側にある小さな喫茶店である。ここなら他の大谷津学院の生徒達に出くわす可能性が低いと踏んだからだ。4人は奥の席に案内され、全員が着席した所で飯田が口を開く。

「えーっと…君が陳さんだね。初めまして。」

「はい。」

「僕も昔台北で語学研修受けたことがあるし、台湾にも友達いるから、湯川君の話を聞いた時に是非君の力になりたいと思ってね。」

「そうだったんですか。ありがとうございます。」

「うん。まず、君の事を教えてくれないかな?」

 飯田がそう言うと、沙崙は静かに話し始めた。

「私、台湾の台南出身で小学校の頃に日本のアニメや音楽の事を知って、将来日本に留学したいと思ったんです。高校も国際教育に力を入れている所を選びました。2年になると希望者数名が語学留学に行けるので私も応募したのですが、本当は岡山県の高校に行くはずだったんです。その時先生が千葉県の大谷津学院と言う高校が国際個教育の幅を広げるために英語圏以外の国の留学生を募集し始めたので、よかったら行かないかって提案してくれたんです。千葉県なら東京から近く、ずっと行きたかった秋葉原にも行きやすいと知ったので大谷津学院への留学を決めました。なのに、いざクラスに入ったら女の子達から暴力を振るわれたり物を壊されたり、悪口を言われたりして、辛すぎて思わず屋上から飛び降りてしまったんです。」

 沙崙の話を聞いた飯田は深刻な表情で持ってきたノートパソコンに彼女の話を記録していた。そして、今度は真樹に質問を始める。

「なるほど。それで、湯川君がその自殺を阻止したと。」

「そうですね。丁度野球部の練習中だったんですけど、屋上のフェンス外に人が立っているのが見えましてね。みんな何事かと騒いでいた時に陳さんが飛び降りたんです。僕は反射的に体が動いて陳さんの所にダイブしました。その後うちの担任の先生が僕達を病院に連れてってくれて、野球部の顧問の先生も色々対処してくれました。」

 真樹の話を聞いた飯田は、頷きながらパソコンのキーを打ち続けている。そして、ある疑問を抱いた飯田は再び沙崙に聞いた。

「陳さんは、何か虐められる心当たりとかはあったの?担任の先生は何かしてくれた?」

「特にありません。ただ、クラスの中心にいる女の子が私の事を気に入らないみたいで…。優等生ぶって生意気だとか、お前がいても私達にはデメリットしかないから台湾に帰れとか散々言われました。でも、その子は美人で成績も良く、クラスで人気者なので担任の先生もその子の味方ばかりして、私の事を鬱陶しがっているような気がするんです。」

 その話を聞いた飯田はすっかり呆れかえってしまった。そして、わずかだが苛立ちのこもった声で言った。

「事情は分かったよ。そして、今まで取材しててこんなに胸糞悪いって思ったことは無い。僕は語学留学してた時、現地の先生や友達によくして貰えたからね。ただ気に入らないからってだけで留学生を虐めるなんて、同じ日本人として…いや、人間として恥ずかしい。とにかく、君を虐めた子達を僕も許すつもりはないよ。上にも掛け合って、是非この事を記事にして陳さんを助けられるように努力するから。」

「ありがとうございます!改めて宜しくお願いします!」

「いえいえ、ジャーナリストとしての誇りだからね。じゃあ、取材を続けようか。」

「はい。」

 飯田に深々とお礼を言った沙崙には少しずつ笑顔が戻りつつあった。そんな様子を見て、杜夫は感心した様子で真樹に話しかける。

「流石…プロの取材は違うな。カッコいいわ。いい人でよかったな、真樹。」

「ああ。八広のやつ、朝会った時も全然反省していなかったし罪悪感の欠片も見られなかったからな。もう容赦はしないぞ。」

 頼もしい見方が見つかり、沙崙も真樹たちも安心していた。好き放題にふるまっている茉莉奈への反撃の土台が、今組み上がろうとしていた。

おはようございます。

沙崙も少し元気が出てきたようでよかったですね。

これから真樹はどんな反撃の手を使うのでしょうか?

次回をお楽しみに。

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― 新着の感想 ―
[一言] 今回はこの学校のクズを一回まとめて処分出来ればいいのですね。 陳さんの実家はもし、茉莉奈の親が務めた会社の上流会社の重役もしくはオーナーだと、話は面白くなってきますね。 シャープと鴻海の関係…
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