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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode6 留学生を救え?!
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第87話 真樹の情報提供

おはようございます。

いよいよ事態は大きく動きます。

 沙崙の自殺未遂を重く見た真樹達は、放課後彼女のお見舞いに行った。そこで2年D組で受けた仕打ちや、下の階に住む男性住人の山田に付きまとわれていることを聞いたのだった。そして、真樹は茉莉奈達を成敗すると言って沙崙を含む全員を引き連れてある場所に行ったのだが…。

「何でダメなんですか?」

「もう少し明確な証拠が無いと、こちらとしても動けないので…。」

 真樹は不満そうな顔で目の前の中年男性にそう聞いた。彼らが向かったのは地元の警察署の少年課だった。そこで沙崙が茉莉奈達から暴行を受けていることや山田に付きまとわれていることを伝えたのだったが、やってきた中年の男性警察官は何かと理由を付けて動こうとしない。これには慶と美緒もご立腹だった。

「早くどうにかして下さい。実際傷だらけで、自殺未遂まで起こしているんですよ!僕はもう辛くて見ていられないんです!」

「怪しい男に付きまとわれて、しつこく言い寄られているのも本当なんですよ!早くしないと、手遅れになるじゃないですか!」

 声を荒げる二人だったが、やはり男性警察官はあまり乗り気じゃない。

「そう言われてもねぇ…。仮に君達の言うことが本当だったとしても、証拠が無いと向こうの言い分次第ではそっちの勘違いとして流されちゃうことがあるんだよね。どうしてもって言うのならとりあえず被害届だけ出してくれる?そうすれば調査して逮捕状出せるかもしれないからさ。」

 やる気のない男性刑事とこれ以上話しても埒が明かないと思った真樹達は、校内での暴行と山田の付きまといに関して被害届を出して警察署を後にした。

「何だよ、あの刑事。最悪だったな。」

「俺らが高校生だからって完全に舐めてて腹が立ったわ。」

 伸治と武司は男性警察官に対し、不機嫌になりながら文句を言っている。すると、後ろにいた沙崙が申し訳なさそうな顔で言った。

「ごめんなさい、皆さん。私の為にここまでしてくれて…。でも無理そうなのでもういいです。」

 沙崙は諦めモードになっていたが、真樹は首を振りながら話し始める。

「いや、諦めるのはまだ早い。動かなきゃ、無理やりにでも動かしちまえ。」

「え、何か手があるの?真樹。」

 慶が首をかしげながら聞いた。すると真樹はスマートフォンを取り出して何やら検索をしている。

「えーっと、問い合わせは…。ここか。」

 真樹はそう言うとどこかに電話をかけ始めた。コールの音が鳴り、しばらくすると誰かが出た。

「はい、もしもし。オリエント通信編集部です。」

「お忙しい所すみません。僕は湯川真樹と言いまして、千葉県の大谷津学院高校に通っている者なのですが。」

 オリエント通信とは、主に韓国や中国、台湾や香港と言った日本の隣国である東アジア地域のニュース記事を発信する民間企業である。ネットニュース記事の作成は勿論、『週刊オリエントタイムズ』と言う雑誌も発行しており、取り扱っている内容も政治経済、芸能、スポーツと幅広い。真樹はそこに電話をかけると、女性職員が出た。

「本日はどのような御用件でしょうか?」

「実は、うちの台湾出身の留学生に関して、記事を作成して貰いたくて情報提供しようと思いましてね。台湾や教育部門の担当の方がいらっしゃれば代わってもらいたいのですが。」

「畏まりました。少々お待ち下さい。」

 女性職員はそう言うと電話に保留をかけた。2,3分経過後に保留音が止まり、先程の女性とは別の職員が出てきた。

「もしもし、お電話代わりました。私、オリエント通信台湾担当の飯田と申します。」

「もしもし。ありがとうございます、大谷津学院高校2年の湯川真樹です。」

 出てきたのは飯田と名乗る男性職員だった。真樹は飯田に自己紹介すると、飯田の方も真樹に質問をしてきた。

「えーっと、そちらの高校に通う台湾からの留学生に関しての記事の作成と伺っておりますが。」

「そうです。」

「因みに、どのような内容なのでしょうか?」

 飯田がそう言うと、真樹は一呼吸置いて説明を始める。

「暗い話になってしまいますが、その留学生がクラスメートから酷い虐めを受けておりまして、この間屋上から飛び降り自殺を図ったんです。遺書まで残して。僕が丁度下にいて受け止めたおかげで助かったんですけど、下手すれば本当にお亡くなりになる所でしたね。」

「え…?」

 あまりに壮絶な内容に飯田は思わず絶句してしまった。それでも真樹は続ける。

「しかもその子の担任もやる気ないせいで事態は改善していないんです。それに加えて、寮として住んでいる団地の住人からしつこく付きまとわれて心身ともに参っている状態なんです。さっき警察に行って説明したんですけど、警察もちゃんと取り合ってくれませんでした。僕達はその子を救いたいので、力を貸してくれるとありがたいのですが。」

 真樹は自分が知っていることを一通り飯田に説明した。少し間を置いて飯田が再び話し始める。

「状況は分かりました。今上の者に確認をとりますので、少々お待ちいただいても宜しいですか?」

「はい、大丈夫です。」

 真樹がそう言うと、再び電話から保留音が鳴り響く。その場にいた全員が沙崙の状況を打破できる望みがあると信じて…。


 一方こちらは都内にあるオリエント通信のオフィスだ。先程、真樹から電話で説明を受けた飯田は深刻な表情で電話を保留にした。

「台湾から来た留学生へのいじめ問題か。俺も昔台湾に語学研修行ったし、もし彼の言うことが本当なら放ってはおけないな。是非期待に応えたい。」

 飯田はそう言うと、奥にあるデスクに座る中年男性の所へ向かった。

「課長、今よろしいですか?」

「どうしたんだ、飯田君?」

「実は…ちょっとご相談がありまして。」

 飯田は課長に真樹から受けた電話の内容を細かく説明した。それを聞いた課長は驚いた表情で言った。

「それは本当かね?」

「ええ。彼が嘘を言っているようにも思えませんし、もしこれが本当なら私もその留学生の力になりたいと思いまして。」

 課長は少し難しい表情で考え込んだ。何せ今までに扱ったことが無いような前代未聞な内容だったから無理もない。そして、課長は心を決めたような表情で飯田に言った。

「分かった。確かその高校生は千葉に住んでいると言ったな。」

「ええ。大谷津学院なんで成田市ですね。」

「いいだろう。じゃあ、明日成田に行ってその高校生と直接コンタクト取って来い。交通費は経費で落としていいから。」

「ありがとうございます。」

 飯田はそう言うとデスクに戻って電話の保留を解除した。

「もしもし、お待たせいたしました。私としても詳しい話が聴きたいので、明日成田に向かいますのでお時間作れるでしょうか?」

「本当ですか?じゃあ、放課後は大丈夫なんで16時に成田駅前に来て下さい。」

「畏まりました。それではまた明日宜しくお願いします。」

「ありがとうございました。」

 真樹はそれだけ言うと電話を切った。飯田は真樹からこの話を聞いてやる気が燃えていた。

「彼が留学生を救うために勇気を出して知らせてくれたんだ。俺も頑張んなきゃだな。」

 飯田はそれだけ言うと残っている仕事を済ませ、翌日に向けて準備を始めたのだった。


 一方こちらは警察署を後にした真樹たち一同。真樹は飯田との電話を終えた所だった。

「ダメ元でかけたんだけどな、取り合ってもらえるみたいでよかった。明日成田に担当の記者が来るってさ。」

 真樹はその場にいた全員に状況を説明した。それを聞いた杜夫が驚きと関心が入り混じったような表情で言った。

「真樹…お前すごいな。いや、マジで…。」

「そうか?」

「だ、だってよ。警察がダメならジャーナリストに飛び込みの取材依頼かけるなんて普通の人間にはできないぜ。」

「八広達をシバくには、これしか方法が無かったんだからしょうがないだろ。」

 真樹は涼しい表情でそう言ったが、驚いているのは杜夫だけでなく慶と美緒も同じだった。

「真樹って普段は消極的だけど、こういう時の行動力はすごいよね。」

「同感。ただの頭でっかちじゃないってことは分かったわ。」

 そして、伸治と武司は笑顔で沙崙に声をかけていた。

「どうだい、陳さん?すげぇだろ、俺たちの真樹は!」

「他の女子達からは散々な言われようだけど、味方にしとけばいいこといっぱいあるって!」

 二人にそう言われた沙崙も驚いた表情で真樹を見ている。それでも沙崙は真樹達が国際科のクラスメートたちとは違うと分かり、少し安心した様子で口を開いた。

「湯川君…。その、ありがとう。私の為にここまでしてくれて。」

「気にするな。八広を処刑する為だ。あそこまでやった奴にもう遠慮も容赦もいらないからな。」

 真樹はそう強く言いきった。その後、彼らは沙崙を部屋まで送り届けてそれぞれの家に帰って行った。沙崙の茉莉奈に対する反撃が今始まろうとしていたのだった。

おはようございます。

真樹の行動力には驚かされますね。

さて、取材を受けることになった真樹達だが一体どうなるのか?

次回をお楽しみに!

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