第73話 いろんな意味で終わり
こんにちわ!
最近、お酒にはまっています!
2月も過ぎ、晴れた日は温かく感じる3月になった。1月から始まる1クールアニメからすれば、放送される最後の月である。続編やシリーズ化を狙うアニメからすればアピールする最後の場所でもあり、ハーモニーエンジェルが正にそうなのだが、やはり厳しい状況であるのには変わりない。ただでさえ内容の評価が低いのに加え、過激なファンによる脅迫騒動で逮捕者が続出したことにより、作品のイメージが余計に下がってしまったのだった。だが、逆風はこれにとどまらなかった。
ある日の休日、真樹はJR千葉駅前にあるファーストフード店に呼び出された。
「着いた…にしても佳久のやつどうしてこんな所に呼び出したんだ?」
溜息交じりでそう呟いた。昨晩の事なのだが、真樹が練習試合を終えて疲れて帰宅したタイミングで佳久からメッセージが届いたのだった。内容は『真樹、お疲れ。突然で悪いんだけど、もし明日暇だったら、千葉駅前のハンバーガー屋に来てくれないか?どうしても話したいことがあるんだ。』というものだった。真樹は最初首をかしげたのだったが、特に予定もなかったので『分かった。行くよ。』と承諾した。佳久はすでに店に着いているらしく、真樹は駅から歩いて店に向かう。店内に入り、店員に案内されると、佳久はすでにいた。
「おう、真樹。来てくれたか。」
「佳久。どうしたんだ、こんな所に呼び出して。それと、この人達は誰…?」
椅子には佳久の他に真樹が初対面の男性1名、女性2名がいた。戸惑いながらも真樹が着席すると、佳久が説明を始める。
「おう、紹介するわ。お前がこの間家の前で大津に絡まれたって聞いて、俺も我慢の限界でな。同じくあいつの被害にあった人と一緒に、大津を懲らしめたくなったんだ。SNSで呼び掛けてな。そしたら集まってくれたんだ。」
そう説明したよし示唆に対し、真樹は彼の行動力に驚きを隠せなかった。確かに、真樹は自宅の前で突然押し掛けてきた悠に絡まれたことを佳久に話したのだが、それを聞いた佳久がここまでやってくれるとは思わなかったのだった。その後、真樹にとって初対面の3人が自己紹介をする。
「初めまして。僕は大津さんの高校の同級生の山崎翔太です。大津さんには『キモい奴は目障りだから死ね』と言われてお弁当を全部捨てられたり、教科書にカッターの刃を仕込まれて怪我したこともありました。もう我慢の限界です。彼女を懲らしめてやりたいんです。」
山崎と名乗った細身でメガネの少年は切実な思いでそう語った。続いて、小柄で真樹と同い年くらいの女性が話し始めた。
「私は川田沙紀。事務所は違いますが大津さんと同い年で声優やってるんですけど、『地味子が人気作品のレギュラーなんて生意気』と一方的に絡まれてカツアゲされた後、私が言い返したら『枕営業で仕事をもらった卑怯者』とネットで書かれて炎上させられた上、レギュラーだったアニメを降板させられました。そして、その後彼女が私の後任になったと聞いた時は怒りが収まりませんでした。あの子を好き勝手にさせてはいけません。」
真樹はそれを聞いて唖然としてしまった。元々自分勝手だとは思っていたが、まさかここまでとは思わなかったのだった。最後に20代前半くらいの女性が話し始めた。
「初めまして。私は海野明美。声優をやっています。前に大津さんに遅刻したのを注意したら、『パワハラされて精神が病みそう。』と書き込まれて私のSNSが炎上して、1年間の活動休止に追い込まれました。みんな可愛くて売れてるあの子を甘やかしていますが、私は絶対に許しません。」
真樹や佳久も中学時代に悠には散々な目にあわされたが、高校に進学して離れ離れになっても悠の気に入らない人間を虐める癖は治っていなかった。真樹は悠が多くの人の人生を狂わせておきながら、自分は楽しく生活していることを知ると、怒りがついに頂点に達したのだった。
「初めまして。僕は湯川真樹。大津悠とは中学の同級生でしたが、あいつは自分が1番になるためにはどんな汚いこともする奴です。僕も散々悪口言われたり教科書をズタズタにされたりと散々な目に遭いました。皆さんの話を聞いて決心ができました。被害届を出しましょう。そして、警察に突き出して罪を償ってもらいましょう。もう、あいつの好き勝手にはさせません。」
真樹は強い口調でそう言い切った。そして、それを聞いた佳久も少し嬉しそうだ。
「よかったよ真樹、お前が協力してくれて。俺も前からあいつのことは気に入らねねって思ってたんだ。一緒に懲らしめてやろう。」
佳久の言葉に真樹はうなずいた。そして、真樹はスマホを起動させると、何やら説明を始める。
「えー、被害届を出す前にまず説明しておきたいことがあるのですが…僕の部活の先輩のお姉さんが声優として出ている機動恐竜ダイノイドが荒らされ、更にはそのお姉さんのプロフィールが晒されて誹謗中傷されるということがあったんです。それも恐らく大津で間違いないでしょう。その証拠がこれです。」
そう言うと、真樹は別のページを開いた。それは大津悠のSNS公式アカウントなのだが、彼女が書いたコメントの語尾には必ず「|(^0^)|」と言う独特の顔文字が付いている。そして、智子を晒した時の掲示板にも|(^0^)|の顔文字が見受けられた。更に、顔文字だけでなく本人しか知り得ないであろう情報も書かれており、実際アニメの現場で体験した声優2名はこれが成り済ましではなく悠本人が書き込んだ事を確信した。
「黒だな。」
「酷い…。」
「大津さんは声優の恥晒しだわ…。」
佳久達も呆れかえってしまった中、真樹は立ち上がって言った。
「みなさん。大津悠を裁きに行きましょう。これ以上の被害を食い止めるために!」
「「「はい!」」」
真樹の言葉に頷いた3人は速やかに警察署に被害届を提出したのだった。
翌日。現役高校生でもある悠はこの日は仕事がなく、普段通り学校での授業を終え、帰宅していた。家には悠の他に母親がいて、自宅でくつろいでいたのだがそんな静寂をインターホンが破る。
「誰だろう?出てくるわ、ママ!」
悠はそう言って玄関に向かう。すると、見知らぬ男性数人が険しい表情で待ち構えていた。
「あの~どちら様ですか?」
「大津悠さんの自宅でお間違いないですね?」
「大津悠は私ですけど。」
「大津悠さん。あなた、インターネットで複数の人に対し誹謗中傷した容疑がかけられています。他にも恐喝や器物損壊などの容疑がありますね。」
「は?何のこと?意味分かんないし。」
「既に被害届が4件提出されているので、我々はこのまま引き返す訳にいきません。大津さん、あなたを名誉棄損、脅迫、器物損壊、威力業務妨害の容疑で署までご同行願います。」
「ちょ、ちょと離してよ!勘違いよ、こんなの!」
やってきたのは警察だった。悠はあの後情報開示の要請に応じなかった上、真樹達によって被害届を出されたので、警察が動き出したのだった。結局、サイバー犯罪担当が書き込んだ端末を辿っていき、案の定悠に行き着いたので、彼女は重要参考人として連行されるに至った。
「ちょっと、悠!これはどういうことなの?」
「ママ!違うの!これはえん罪よ!すぐに戻ってくるから!」
「悠ー!!!」
悠の母親は何が起こったのか分からず、玄関で叫ぶしかできなかった。その後、悠は警察署に連れていかれて厳しく事情聴取を受けることになった。
その日の夜。結局悠は言い逃れもできず、容疑を認めてそのまま逮捕となった。悠が逮捕されたことはすぐに速報としてニュース番組やネットで報道された。『人気美女声優、罪を重ねて逮捕』と言うタイトルがネットでつけられたり、人気絶頂で業界でも引っ張りだこなトライスターズのリーダーが逮捕されたことにより、多くの人が衝撃を受けた。一方、真樹は悠が逮捕されたことを知り、現在は夜のニュースを見ながら喜んでいる。
「フン。ざまぁ見やがれ!実力もないのに人を陥れて上に上がろうとした天罰だ!これで他の作品も安心して制作に移れるだろう。」
真樹はご機嫌な様子でそう言った。しかし、騒ぎはこれだけで収まらなかったのだった。
こんにちわ!
悠の悪事がばれてしまいました。
女性の嫉妬て怖いですね。
さて、更なる騒動とは何なのか?
次回をお楽しみに!




