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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode5 アイドル声優を潰せ
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第59話 めぐり合わせ

こんにちわ!

今月最後の投稿です!


 アイドル声優ユニット「トライスターズ」のリーダー、大津悠と真樹との因縁は二人が中学時代まで遡る。悠自身は元々かなり上昇志向が強く、目立ちたがりな性格であり、幼少期からずっとテレビに出て有名になりたいと考えていた。一方、過剰なまでの強気な性格のせいで弱い者虐めの常習犯という一面もあった。

「お、可愛い髪飾りじゃん。お前みたいなブスが着けるのは勿体ないから私が貰ってあげる!」

「やめてよ、返してよ!」

「うっさい!汚い面してるくせに私に逆らってんじゃねぇ!」

「きゃぁ!」

 気弱な女子生徒からアクセサリーを強奪し、逆らうと暴力に出るその姿は正に暴君そのものであった。そして女嫌い且つ女性から非常に嫌われやすい真樹がターゲットになったのは言うまでもない。廊下で真樹とすれ違おうものなら…。

「うっわ、湯川だよ!キモーい!」

「…。」

 周囲に聞こえるように真樹を侮辱するのは当たり前。真樹は案の定無言で睨みつけるだけだったのだが、無視を決め込む真樹を面白く思わなかった悠の仕打ちはエスカレートした。ある日、真樹が登校すると…。

「…。何だこれは…?」

 真樹の机の中に入れていた教科書やノートがズタズタに切り裂かれた状態で机の上に山積みになっており、替わりに机の中には大量の生ごみが詰め込まれていた。真樹は勿論、周囲のクラスメート達も異様な光景に唖然としていた。そんな中、悠が登校してきたのだが…。

「あっれぇ、湯川君!教材もボロボロだし、机も随分ゴミ臭いねー!あ、そもそも湯川がゴミそのものだから仕方ないかー。ハハハ!」

 意地悪そうな表情で笑いながら真樹を侮辱する悠。そんな彼女に真樹は溜め息交じりに問い詰めた。

「お前がやったのか?」

「だから何?」

「よくもまぁ、こんなふざけた真似ができるよな。あ、他にすることないから暇なんだな。」

 中学に上がる頃には幼少期の気弱な性格が鳴りを潜め、女子生徒相手に強気に挑発できるようになっていた。悠の方は挑発に乗ってしまい、逆切れしながら真樹に詰め寄った。

「うるさい!湯川のくせに生意気。お前みたいなゴミが綺麗な教材や机使うの似合わないから、ふさわしい形にしてやったのに!つーかさ、お前目障りだからマジで学校来ないでくれる?」

「はぁ、目障りなのはどっちだよ?」

「っ!このクソ野郎が!」

 その後、二人は大げんかになり、周りにいた他のクラスメート達が必死に止めていた。尚、二人は厳重注意を受けたのだが、被害者であるはずの真樹は担任の女性教師に「あんたが普段から女子に態度悪いのがいけない」といわれてしまった。この件で、真樹の女嫌いがますます加速してしまったことは言うまでもない。


 ある日曜日の午前中。この日は休日で野球部の試合も無かったが真樹は成田駅にいた。因みに制服でも私服でもなく運動用の黒いジャージを着ている。傍から見たらどういう状況か分かりにくいが、しばらく待っていると…。

「おはよう!おっ待たせー、真樹!」

 慶が現れた。彼女もまた、真樹と同じく制服でも私服でもなく、水色のジャージとリュックサックという格好である。

「大丈夫だオニィ。全然待ってないぞ!」

「良かった!じゃあ、行こうか!」

 そう言うと二人は駅を出てある場所へ向かった。そこは学校近くにある広い公園である。因みに、一度ここで二人は押上美紅に因縁をつけられたことがあった。到着後、二人は軽く準備運動をしながら会話する。

「いやぁ、本当にありがとう真樹!休日に僕のトレーニングに付き合ってくれて!」

「全然だ。こっちも暇だったし、誘ってくれて感謝してるのは俺だよ!」

「ふぅ、僕は準備完了!真樹は?」

「俺もいつでもいけるぞ!」

「ホント?よーし、スタートだ!」

「走り込みなら負けないぜ!」

 そう言うと二人は公園内をジョギングし始める。今回は、慶が大会に向けてトレーニングをしようとしていたのだが、真樹も試合に向けてトレーニングしたいと思っており、慶の方が合同自主トレを提案した。とはいっても、それ以前に二人は何度か一緒に自主トレをしたことがある。季節は11月の末なのでかなり肌寒くなってきたが、走り込みを続けた真樹と慶は体がすっかり火照り、汗を流している。

「ふぅ、結構走ったな!一回水分補給するか!」

「うん!天気が良くて助かったよ!予定なくても家でじっとしてるのも落ち着かないしさ!」

 二人は鞄からスポーツドリンクを取り出して水分補給をし、一度クールダウンをする。休憩後にもう一度走って汗を流した後、ストレッチなどの柔軟体操を行う等もっちりトレーニングを行った。こうして真樹と慶は体を動かし、鍛えている内に時刻はすでに午後になっていた。

「結構やれたな。晴れた日は外で体動かすのが一番だ!」

「僕もそう思うよ!よーし、これで次の大会は優勝目指すぞ!」

「俺も来年こそ甲子園にいきたいな。そうだ、せっかくここまで来たんだしお参りしていくか。」

「賛成!本堂まで走って行こう!」

 方向は違うが、成田駅はかの有名なお寺である成田山新勝寺の最寄り駅だ。二人は成田山に向かって走り始め、汗を流しながら本堂に到着した。日曜日とあって、多くの参拝客で賑わっている。二人はお賽銭を入れてお祈りをすると、その場を後にしようとした。

「オニィ、何をお祈りしたんだ?」

「勿論全国大会出場だよ!真樹は?」

「俺は来年甲子園に行きたいってお祈りした!」

「流石だね!頑張って!」

「お互いにな。」

 そう話しながら本堂から離れようとした時、後ろで物音がした。

「うわっ!」

 真樹と慶が驚いて振り返ると、一人の初老男性が本堂の階段から転げ落ち、持っていたカバンの中身をぶちまけていた。

「ああt、私の大事な資料が。」

 よろけながら散らばった大量の紙を拾い集める男性。その様子を見て真樹と慶が動く。

「オニィ。」

「うん!」

 二人は足元にあった男性の物と思われる資料をかき集めるのを手伝った。全てを拾い集めた二人は、男性の元に駆け寄って資料を渡す。

「おじさん、大丈夫?」

「はい、これで全部ですか?」

「おお、すまんすまん。大事なものだから本当に助かった。ありがとう!」

「いえいえ。」

「どう致しまして。」

「あ、いたた…。」

「お、おじさん?」

「とりあえず、座れる所に行こう!」

 二人は敷地内にある休憩スペースに男性を誘導し、椅子に座らせる。男性は点灯時に足を怪我したのだが、幸い骨折などは無く、擦り傷と軽い打撲で済んだ。慶は持ってきた絆創膏を男性の足に張り、真樹は飲み物を購入して男性に渡した。

「私としたことが…何から何まで済まないね。本当にありがとう!」

「いえいえ、とんでもないです。」

「資料も集まったし、怪我が大したことなくてよかったです。」

 男性は申し訳なさそうにしていたが、真樹と慶は全く気にせず、むしろ気にかけていた。すると、真樹がある事に気付いたのか男性に質問した。

「おじさんってもしかして、アニメ関係の人?」

 なぜ真樹がその質問をしたかというと、男性が落とした資料には全てアニメのキャラと思しきイラストなどが書かれていたからだ。真樹の質問に対し、男性は頷いた。

「そうだよ。私は大門隆三郎(だいもんりゅうざぶろう)。アニメの制作現場で監督をしている。」

「えー、アニメの監督さんなんですか!?すごいです!」

 慶は驚きながらそう言った。真樹は質問をつづける。

「その監督さんがどうしてこの成田山に?」

「亡くなった母のお墓が近くにあってね。お墓参りの後、いつもここに来るんだ。」

 大門と名乗る男性はそう答えた。怪我も大したことは無く、資料もすべて無事なのだが、男性には今一つ元気が無い。それを感じ取ったのか、今度は慶が質問する。

「大門さん、大丈夫?元気ないよ…。」

「いやぁ、それがね。色々あってね…。」

 大門は飲み物を一口飲むと、顔を曇らせながら話し始めた。

「私はね、年明けに放送予定の新アニメの制作に取り掛かっているんだ。さっきのはその設定資料集。制作自体は順調だったんだが、一つ問題があってな…。」

「問題…?」

「それはどういう…?」

 真樹と慶が首をかしげながらそう質問する。大門は深いため息をついた後、暗い表情で話し始める。

「キャスティングだよ。メインヒロインの声優が見つからないんだ。何度かオーディションもやった。だけど、来るのはみんな同じような甲高くて甘っちょろい声の者ばかり…。ろくなのがいないから全員落とすしかなかったんだ。」

「で、でも今声優さんってすごく人数いますよね。それでも駄目だったんですか?」

 慶がそう質問した。大門は難しい表情で続ける。

「ああ、確かに数が多い。でも外ればかりだ。アイドル声優だか何だか知らないが、私の作品には実力がある人にやってもらいたい。最近はお気に入りの声優が出るかでないかで見る作品を決める人もいるみたいだが、私は中身で勝負したい。時代遅れかもしれないが、声優で釣る様な真似はしたくない。」

「そうだったんですか…。アニメの制作って思った以上に大変なことが多いんですね。」

「ああ。お陰でメインヒロインの部分だけアフレコができず、このまま見つからなければ1月の放送日に間に合うかどうか…早く収録したいと現場スタッフから声が出ているが、私しては妥協できず、行き詰っているんだ。」

 慶も大門に同情した。真樹の方も難しい表情で何かを考えている。しばらく考え込んだ後、真樹は大門にある質問をした。

「大門さん。」

「ん、何だい?」

「稲毛智子さんといいう方をご存知ですか?」

 真樹は大門が何度かオーディションをした事を聞き、その中に野球部の先輩である秀太の姉で現役声優の智子がいたか確認した。大門は質問に対し、首を振る。

「いや。聞いたことない名前だな。」

 それを聞いた真樹は安心したのか少し微笑んだ。慶は何か気付いたのか、真樹に尋ねる。

「ねえ、真樹。もしかして…。」

「ああ。可能性があるならダメ元だ。」

 そう言った真樹。そして、この後の真樹の行動が予想外の展開を呼び起こすのだった。

こんにちわ。

アイドル声優の本性が明らかになりました。

そして、真樹の目的は一体何でしょう?

次回をお楽しみに!

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