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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode1 女嫌い現る
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第5話 見たくない物

おはようございます!

寒くなってきましたが、どんどん書いていきます!

「じゃあ、俺こっちだから。」

「おう、じゃあな真樹!」

 成田駅に着いた真樹は、帰る方向が違う他の野球部員たちと別れて自宅がある佐倉行き方面のホームに立ち、電車が来るのを待っていた。時刻はすでに夕方で辺りは薄暗くなっており、ホームには多くの人達が真樹同様電車を待っている。真樹がふと振り返ると、ある光景が見えた。

「ねえ、今度の休みどこでデートしようか?」

「そーだな。水族館行こう!」

「行きたーい!イルカのショーとか見よ!」

「お前と見れるなんて楽しみ過ぎて今夜は眠れないぜ!」

「そんなこと言ってくれて嬉しー!」

 近くにいる若いカップルがお互い腕を組みながら楽しそうに次のデートの打ち合わせをしていた。このような光景を見た物に心理には様々であるが、もてない事を悩んでいる人が見れば「羨ましい」もしくは「人前でイチャイチャするな」と思うだろう。だが、真樹に関しては違った。

「よくもまあ、四六時中女と一緒にいれるよな。こっちは同じ教室に一緒にいるだけでも不愉快になるのに。」

 真樹は聞こえない程度にそう呟いた。一見真樹の発言は女性と仲良くなりたいのになれない男の僻みに聞こえるかもしれない。しかし、彼の違う所は男女が仲よくすることその物が理解できていないと言う事だ。

「大和田の奴も言っていたが、どうしてそんなに男女仲よくすることにこだわる奴がいるんだろう?」

 真樹は今、学校内で慶以外の女子生徒とは非常に険悪な関係だ。この日の昼も喧嘩をしていたが、彼が女子生徒と喧嘩をするのは一度や二度ではなくほぼお約束となっている。だから、普段から女子生徒と仲が悪いのが当たり前の真樹にとって同年代の男女が良好な関係を築く事その物が異常なのである。そんなことを考えている内に電車の到着を知らせるアナウンスが来たのだが…。

「ふぅ、間に合った。あ、湯川君!」

 女性がダッシュでホームの階段を駆け下りてきたと思ったら、真樹に気付いて声をかける。普段真樹に声をかける女性は慶しかいないのだが…。

「…先生。」

 そこにいたのは真樹のクラス担任である国語教師、立石美咲だった。立石はよっぽど急いでいたのかまだ肩で息を切らしている。

「元気ないわね。どうしたの?」

「訳のわからない物を見て動揺してただけですよ。」

「ふーん、変なの。」

 立石は真樹の言葉に首をかしげた。そして電車が到着して二人とも乗り込む。電車内はあまり混雑している訳でもなく、座れる場所がたくさんあった。立石は真っ先に座ったが、真樹は座ろうとしない。

「座らないの?湯川君。」

「女性の隣に座りたくないので。」

「う~ん、先生も別に自分が好かれてるって思ってないけど、ここまで露骨に避けられるのは悲しいな。」

「勝手に悲しんでて下さい。」

 真樹は立石の隣に座らないばかりか、正面には立たず一歩ずれた所に立っている。そして、避けられた事に少し違和感を覚えている立石をさらに冷たく突き離した。そんな真樹に立石は溜め息をつきながら聞いた。

「はぁ…ねえ湯川君。」

「何です?」

「いつまでこうするつもりなの?」

「一生ですよ。」

 真樹は躊躇いも無くそう言った。その発言に立石は驚きつつも質問を続ける。

「担任の私が言うのも難だけど、確かに鬼越さん以外の女子の間ではあなたの評判は悪いわ。これは私の勝手な推測なんだけど、あなたは確かに勉強も部活も実力はある。だけど、何かこう…自分は他とはレベルが違うっていう、女子への当てつけに見えるなぁって思う事がたまにあるの。実際はどうなの?」

 立石の質問に対し真樹は少し黙った。よく聞けば当たっていなくもない回答に少し驚きつつも落ち着いた様子で返す。

「まぁ、好きに思っていただいて結構ですよ。まぁ、こんな環境にいる以上、女子に埋もれて雑草扱いされたくないっていう部分は少し当たってますけどね。じゃあ、僕はここで。」

 自宅最寄り駅である佐倉駅に到着したので、真樹はそれだけ言うと立石を残して電車から降りた。そして普段通りに改札を抜けて、まっすぐ家に帰ろうとした時、またある光景が目に入った。

「ママー、今日ご飯何?」

「あなたの大好きなカレーよ!」

「嬉しー!早く帰ろうよ、ママ!」

「あらあら、この子ったら!」

 駅を出た所で、6歳くらいの男の子が母親と手をつなぎながら楽しそうに話している場面に出くわした。それを見た瞬間、真樹は背筋がぞっとするような感覚に襲われる。

「う…、母と子か。世界で一番見たくないものだな。」

 真樹は今も昔も、同じ学校の女子に対していい思い出はないが、母親に関してもいい思い出が無い。そして、母と子の場面を見る度に過去のトラウマが蘇って不愉快な思いになるのだ。

「これ以上見ると頭おかしくなる。急いで帰ろう!」

 真樹は下を俯きながら、急ぎ足で自宅へと戻っていったのだった。

おはようございます!

真樹君には色々と訳がありそうですが、それに関しては今後少しずつ明らかにしていく予定です。

それではまた次回!

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