第53話 口は災いの元
こんばんわ!
さあ、大変なことになってまいりました。
Episode4もいよいよ佳境です。
真間子と取り巻き達はある日の放課後、学校を出た所で見るからに怪しい数人の男たちに取り囲まれ、絡まれた。真間子の方も最初は強気でいたが、彼らが普通じゃないことを察知すると段々と焦りが見えてきた。そして、最も彼女を驚かせたことは…。
「な、何でお前が…。」
「あれだけ言われて、俺が黙って見過ごすと思ったか?」
集団の中心には二日前に罠に引っ掛け、ボロクソに言って振った翔真がいたことだった。杜夫の時はボロクソに言って掲示板に晒したことで、学校に来られないほどメンタルをズタズタにできたが、翔真には通用しなかったようである。それどころか、火に油を注いでしまったのではないかと真間子達は思い始めた。
「まあいい。ここは落ち着かないから、もう少し静かな所で話そうや!あ、お前らに拒否権なんて無いからな。よーし、こいつらを連れて行け!」
「「オッス!了解です、若!」」
翔真がそう言うと、周りの男達は彼の命令に従い、真間子たちの腕を掴んで逃げられないようにし、どこかへ連行して行った。
「や、やめろ!放せよ!」
「何すんのよ!」
「ちょっと、やめなさいってば!」
真間子と取り巻き達は喚いたが、抵抗むなしく連行されるのであった。
十数分後…。
「さーてと、ここまでくれば邪魔が入らず、ゆっくり話せるな!」
翔真が嬉しそうにそう言う。真間子達が連れて来られたのは、町から少し外れた場所にある工場跡地だった。連行された後、真間子達は乱暴に放り投げられ、三人固まって地べたに座り込んだままである。そんな状況だが、真間子は若干声を震わせつつも翔真を問い詰めようとした。
「お、お前は…お前たちは何者なんだよ!?」
その質問に対し、紫スーツ男が真間子に顔を近づけながら威圧感満載で答えた。
「やれやれ、強気だねぇ、姉ちゃん!木戸組相手に喧嘩売るとか、いい度胸じゃねぇか。」
「き、木戸組…?じゃ、じゃあこいつは…?」
「こいつ?お前、若に向かってなんて失礼な!我が組の跡取り息子だぞ、コラァ!」
今度は黒スーツのスキンヘッド男がそう真間子達に向かって怒鳴り散らす。そう、木戸翔真は暴力団組織である木戸組の組長の息子だったのだ。それを知った真間子達はとんでもない相手に喧嘩を売ってしまったことにようやく気付いたのだ。因みに周りにいる男たちは彼の父親である組長の側近で、翔真の事も可愛がっていた。故に今回翔真が真間子達に酷く振られた上にネットで晒し者にした事を許せなかったのだが、何故側近の組員たちがこの事を知っているかというと、答えは前日までさかのぼる。
前日。木戸組の事務所にて。
「もしもし、木戸組ですけど?」
事務所内の固定電話に一本電話が入る。もしかした他の取引先の組かと思って紫スーツ男が出たのだが、どうもそうではないらしい。電話からは少年の声が聞こえた。
「もしもし?木戸翔真君のお家で間違いないですか?」
「そうですけど、どなたですか?」
「あ、すいません。失礼しました。僕、翔真君の友達の湯川真樹と申します!」
電話の主は真樹だった。真樹は午前中の休み時間に翔真とやり取りした後、何と昼休憩の時間に彼の自宅でもある木戸組の事務所に電話を入れていたのだった。真樹は申し訳なさそうに続ける。
「突然電話してしまってごめんなさい。でも、翔真君に心配なことがあって、いてもたってもいられなくなって電話しました!」
「は、はぁ…若に心配なことですか…?」
紫スーツ男は戸惑いながら首をかしげると、真樹が詳細を説明する。
「実は僕、翔真君が彼女が欲しいって言うのでその手助けとして一人の女の子を紹介したんです。でも、その女の子がすごく性格悪くて…翔真君の事をボロクソに悪口言って振ったって聞きました。本当に申し訳ありません。僕がもっと彼女の性悪な部分を見抜いていれば翔真君が嫌な思いしなくて済んだのに、本当にごめんなさい!」
真樹は申し訳なさそうに謝っているが、全て演技である。本心を言うと、翔真が振られて怒りに燃えていることが作戦の要でもあるので、むしろ喜んでいるくらいだ。全てを聞いた紫スーツ男が驚きながら真樹との通話を続ける。
「え、若がそんな…。し、心配してくれてありがとうね。」
「それだけじゃないんです!」
「え?」
「実は、その女の子…翔真君に酷いこと言っただけでなく、その様子をネットにアップして晒し者にしてたんです!僕と同じ学校なんで、すぐに情報入ってきたんですけど、見てびっくりしました。ローマ字でmamakoって言うSNSの掲示板なんですけど、ちょっとあまりにも酷すぎたんでお家の人には伝えておきたいと思いまして…。それに、そんな女の子を紹介した僕の責任でもあるんです!本当に、ごめんなさい!」
「ああ…大丈夫ですよ。わざわざ連絡してくれてありがとう。若が帰ったら伝えておくから。」
「すみません。それでは失礼いたします!」
そう言って真樹は電話を切った。そして、その顔からは微笑みが垣間見える。
「フフフ、向こうも疑ってない。上手く行ったかもな。」
真樹はそう言って教室に戻って授業に出る。一方木戸組の事務所では、真樹に教えられた真間子の掲示板の内容を見て、組員たちが驚きと怒りの感情を爆発させていたのだった。
「よくもまぁ、あんなたちの悪いマネできるよな!」
「てめぇ、自分がしたこと分かってんのかぁ!」
「木戸組舐めてんじゃねぇぞ、コラァ!」
組員たちが四方八方から真間子達を怒鳴りつけ、威圧する。真間子達はもう完全に腰を抜かしており、震えるばかりで何も言い返せない。そして、自分たちがしたことをひどく後悔したのだった。だが、時すでに遅し。翔真が強い殺気を漂わせながら真間子達を睨みつけ、言い放つ。
「お前ら、よくも侮辱した上に晒しものにしてくれたな。代償を払ってもらうぞ。おい!お前ら、やれ!」
「「はっ!」」
そう言うと、組員たちは真間子の取り巻きの両腕を掴んで固まってた3人をバラバラにし、拘束する。
「ちょっと!」
「放してよ!」
取り巻き達はもがくが、大男たちの力にかなう訳が無かった。そして、とうとうパニックが頂点に達する。
「真間子!元はといえば真間子がいけないんでしょ!」
「はぁ、私のせいにすんなし!ウォーミングアップのためにって提案したのはお前らだろうが!」
「じゃあ、なんでこんな目に遭うのよ!あそこでラブレター捨ててればよかったのに!」
3人は仲間割れを始めた。そして、そんな口喧嘩はすぐに中断させられた。パァン、パァン!という激しい音によって。
「ぎゃぁぁぁ!」
「うわぁぁぁ!」
取り巻き達はこれでもかという位大声で絶叫した。なんと、取り巻き達を押さえつけていた組員が、持っていた拳銃で二人の足を撃ち抜いたからだ。取り巻きは足から血を流しながらその場に倒れ込み、真間子はその様子を見て呆然とするしかなかった。
「うるせぇ!お前らの喧嘩見に来た訳じゃねえんだよ!」
そう怒鳴ったのは翔真だ。真間子はどうしたらいいか分からなくなっていたが、腰を抜かしながら最後の力を振り絞って声を出す。
「わ、悪かった。やり過ぎた!二度とやらないから許してくれ!ホント、謝るから!」
声を震わせながら必死で謝る真間子。しかし、翔真がそのまま子の謝罪を聞きいれる訳が無かった。
「はぁ?今更謝ってもおせーんだよ、このクソ女が!おい、お前ら!今度はこいつの番だ!」
「「了解です、若!」」
翔真が言うと、組員たちは真間子の両腕を抱え上げ、後ろにある壁に押し付ける。そして、両手を広げた状態で手首を鎖で壁にしばりつけ、足も閉じた状態で鎖でぐるぐる巻きにする。完全に磔状態だった。
「反省の色が全然見えないな、真間子ちゃん。そんな君には特別なプレゼントをあげるよ。」
「やめろ、何しやがる!解け!」
しかし真間子の叫びはむなしくも無視された。そして、翔真がバタフライナイフを取り出して真間子に近づいていく。
「安心しな、真間子ちゃん。別に殺すつもりは無いからな…。」
「た、助けて…助けてくれぇーっ!」
真間子は目に涙を浮かべながら大声で叫んだのだった。
「よし、そのまま盛大にやってくれれば計画通りだ。」
「ま、真樹…。さすがにこれはやり過ぎじゃね?相手はヤクザだぞ。」
真樹と佳久はそんな会話をしているのだが、かなり小声でぼそぼそとしゃべっている。それもそのはず。二人も今、真間子達が捕まっている工場跡地にいてその様子を物陰から見ているのだから。どうして二人が場所を知っているのかというと、放課後翔真が大谷津学院に殴りこんでくると読んでいた真樹は校門近くで待ち伏せており、翔真と真間子が接触し、彼女たちを連れ去った所を見計らって予めGPS登録しておいた翔真の連絡先を追跡してこっそり忍び込んだのだった。殺伐とした雰囲気に佳久は怖気づいているようだったが、真樹はいたって冷静だった。
「そんなこと知った事か!両成敗を下すにはこれしかない。今は黙って見ていよう。」
そう真樹は言ったが、佳久がヒヤヒヤしているのは言うまでもなかった。
こんばんわ!
目標達成の為にヤクザまで利用してしまう真樹君はとんでもない子でした。
緊迫する事態、果たしてその結末は…?
次回をお楽しみに!




