第48話 お前も救ってやるよ
こんにちわ。
杜夫を助けるために本格的に動き出した真樹。
果たして、彼の考えとは?
ある日の放課後、真樹は人と会う約束をしていた。その人物は初富佳久といい、真樹の中学時代の同級生だった。駅の改札口で待ち合わせた後、二人は近くのファーストフード店へと場所を移す。メニューを頼み、席に着いた後佳久は真樹に問う。
「久しぶりだな、真樹。びっくりしたよ。にしてもどうしたんだ?相談して貰いたいって。」
「実は少し提案があってな。協力してほしい。その見返りといってはあれだが、お前の悩みも解決してやる。」
「ふーん。まぁ、話して見ろよ。」
佳久にそう言われて、真樹は事の経緯を話し始めた。自分の友達の杜夫が同学年の女子の真間子の偽ラブレターの罠に引っ掛かり、晒しものにされていること。そのショックで杜夫は寝込んでしまい、学校に来れていないこと。そのまま子に仕返しをしようとしていることをすべて説明した。それを聞いた佳久はかなり引いた表情をしている。
「マジかよ。ひでー事する奴がいるもんだな。」
「そうだろ。このままじゃ奴が浮かばれん。だから、協力してほしい。」
「それはいいけど、どうして俺なんだ?つーか、何すればいいの?」
「お前、この間会った時学校に面倒くさいのがいるって言ったろ。」
「ああ。」
「そいつ諸共まとめて成敗してやるってことだ。」
真樹の提案に佳久が驚いたのは言うまでもない。何せ、具体的にどんな事をしようとしているのかまだ理解できないでいるのだから。
「え、マジで?まぁ、確かに俺はそいつの事を面倒くさいって言ったけど、どうするつもりだ。」
「だからいい案を持ってきたって言ったろ。耳貸せ。」
まだ驚きを隠せない佳久に真樹は何かを耳打ちした。そして、それを聞いた佳久はだらに驚くのであった。
「え…マジでやるの、それ?」
「当たり前だ。俺が冗談言うためにここまで来たと思ってんのか?」
「いや、そうじゃないけど。そう上手く行くのか?」
「大丈夫。俺を信じろ。とにかく、さっき言った事を頼んだぞ。」
佳久はコクコクと頷いた。そして、食べ終わった二人は店を出て、一緒に歩いて帰ることにした。その道中、佳久は苦笑いしながら真樹に話す。
「いやぁ、さすが数多くの修羅場を経験している真樹だけはあるな。あんなこと、誰も思いつかねぇよ。」
「中学の時も散々な目にあったしな、俺。」
「ホントだよ。覚えてるか?中二の時、それこそ今回みたく偽ラブレターがお前の机の中に仕掛けられてさ。お前取り出して即効破り捨てて、仕掛けた女子が逆切れして大喧嘩になったやつ。」
「勿論覚えてる。あんな見え透いた罠で俺を嵌めようなんざ、100万年早いぜ。」
「しかしなぁ、お前は女嫌いのくせに性格悪い女を良く引き付けるよな。」
「向こうが勝手に因縁つけてくるだけだ。」
「高校になっても相変わらずだな。何なんだろう?女子から目を付けられる理由?」
「別に知りたくもない。」
笑いながら家路を目指す二人。中学時代は真樹が野球部、佳久が卓球部だったがクラスは3年間同じで当時からよく遊んでいた。高校は別々の所に進学したが、連絡は取り合っており、時々遊んだりもしている。佳久もまた、女嫌いでなおかつ当時から女子から嫌われていた真樹を心配していたのだった。こうして二人は途中で別れてそれぞれの家に帰り、作戦の第1段階は済んだのだった。
翌日。真樹はいつも通り投稿し、授業も受けていた。休み時間。真樹はスマホにメッセージが届いたのに気付き、アプリを開く。送り主は昨日会った佳久だった。
『話したぞ。今日にでも会いたいって。』
『分かった。じゃあ、昨日と同じ場所で。』
そう真樹が佳久にメッセージを送った所で、慶が真樹に話しかけてきた。
「ねえ、真樹。」
「ん?どうしたオニィ。」
慶は難しい表情で話を続ける。
「なんか、全然状況良くならないね。噂も全然収まる気配ないし。」
「俺が来週までに収めるから安心して見ていろ。」
「そうじゃなくて…。その、市川さんが杜夫の次に真樹を陥れるって宣戦布告してから他の女子達がそれに乗っかって排斥運動の如く真樹の悪口をあちこちで言いまくっててね。なんか、僕辛くなってきたよ。何の罪もない自分の友達が、見えない所で悪口言われているの聞くのが。」
「俺が女子から悪口言われるのなんて、いつもの事だろ?」
「でも…真樹が辛い目に会う所を見るのはやっぱり僕は心が痛むよ。僕はただ、友達と楽しく学校生活送りたいだけなのに。」
「オニィ。お前、本当にいい奴だな。ありがとう、心配してくれて。でも言ったろ?俺を信用しろって。大丈夫だ。こんなんで泣き寝入りするほど、俺はもろくないから。」
「そう。でも、本当に辛くなったらいつでも僕に言ってね。」
慶は心配そうな表情で真樹にそう声をかけた。こうして休み時間が終わり、いつもの授業時間がまた始まる。
放課後。真樹は自宅の最寄り駅である佐倉駅に降りたが、自宅にはまっすぐ帰らず前日佳久と会ったファーストフード店へと向かった。佳久から連絡があり、既に店内で待機していると連絡を受けたからだ。
「いらっしゃいませー。」
「すみません。待ち合わせをしておりまして。」
店員に説明し、奥の席へ向かう真樹。そこには先に来ていた佳久の他、もう一人が座っていた。
「待たせたな、佳久。」
「おう、真樹。あ、紹介するわ。俺と同じ学校の木戸君だ。木戸君、俺と同じ中学だった湯川真樹君だよ。」
佳久は一緒に来ていたもう一人の少年。木戸をの方を向いてそう言った。着崩した制服。長く伸びた髪の毛を金髪に染め、吊りあがった目つきと、耳に付いた大量のピアスが目立つ。一言で表すなら、頭の悪そうなチャラ男といった感じだ。木戸という少年は立ち上がると、不敵な笑みを浮かべながら自己紹介を始める。
「お前が俺に協力してくれるって奴か。俺は木戸翔真。こいつの同級生だ。」
「俺は湯川真樹。佳久から話は聞いている。俺でよければ力になってやろう。」
お互いやや上から目線の自己紹介が済み、握手を交わす真樹と翔真。そして、席に付くと翔真が話し始めた。
「で、具体的にどう協力してくれるんだ?湯川君。」
「お前の彼女が欲しいという願いのアシストをしてやるってことだ。」
それを聞いた翔真は一瞬驚いた後、高らかに笑い始めた。
「ハハハ、マジかよ!見るからに陰キャでもてなそうなお前に紹介できる奴が居んのかよ!お前、俺の事舐めてんの?」
「それなら最初からここには来ない。」
「まあいいや。見せてみろよ。言っとくけど、俺の見る目は厳しいから、変なのだったらただじゃおかないからな。」
半ば脅しに近い言い方で真樹に突っかかる翔真。しかし、真樹は冷静に1枚の写真を取り出した。クラスの集合写真だ。そして、ある女子生徒の所を指さした。
「こいつだ。」
指差したのは真間子の所だ。翔真は写真を受け取ってマジマジと見始めた。そして、真樹と佳久はその様子を緊張気味で見ている。
(真樹、大丈夫なのかよ?)
(安心しろ。こいつでダメなら取り巻きだ。)
心の中でそんなやり取りをする佳久と真樹。そう、今回は翔真の彼女が欲しいという欲望を利用して、真間子を巻き込む作戦だ。しかし、もし翔真が真間子もしくは保険として提案した取り巻きとの接触を拒否した場合、すべてが水の泡になる。ドキドキしている二人だったが…。
「おおおおお!いいじゃん!俺、髪の毛がくせっ毛の子が好みなんだよね!それに、この先公なんかには屈しないって感じが伝わってくるのもいいね!親近感湧く!ナイスだナイス!ありがとうございます、湯川様。」
どうやら真間子は翔真の好みに合ったようだった。真樹はホッと一息つき、続ける。
「ならよかった。じゃあ、早速手引きをしよう。」
「お願いします!」
「まぁ、流石にお互いの学校は距離があるし、本格的に動き出すのは月曜日になるかな。」
「何でもいい!早く連絡取っていずれは会いたい!」
「分かった。じゃあ、これをお願い。」
そう言って真樹は封筒と便箋を取り出して翔真に渡す。
「これに手紙を書いてくれ。そうすれば俺が奴の下駄箱に入れておいてやる。さすがにそれなら気付くはずだ。」
「分かった。所で名前はなんていうの。」
「市川真間子だ。」
「真間子ちゃんか!分かった。俺の特製ラブレターを見せてやる!」
そう言って翔真はペンを取り出して便箋に何やら書き始めた。その様子を見て、真樹と佳久は更に安心した。
(こいつの趣味が悪くて助かった。上手く行きそうだ。)
(よ、よかった。めっちゃビビったわ。)
こうして翔真はラブレターを書き終え、真樹に渡したあと3人は店を出てそれぞれ帰宅した。真樹を陥れようとしている真間子は、その裏で真樹が動いている事など知る由もなかった。
こんにちわ。
またも新キャラ登場です。
そして、ラブレターにはラブレターでお返しということでしょうか?
真樹は今後どう動くのか?
次回をお楽しみに!




