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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode4 告白に御用心
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第47話 歪んだ悪魔

こんにちわ。

さぁ、真樹が杜夫のために動きだしましたよ。

 真樹は家の最寄り駅に到着後、電話をかけて誰かとやり取りをしていた。相談に乗ってもらいたいとの内容だったのだが、どうやら話はうまくまとまったらしい。

「分かった。木曜日の夕方な。丁度部活ないし、大丈夫。ありがとう。」

 そう言って真樹は電話を切った。そして、ホッと一息ついてから微笑んだ。

「まずは第一歩だ。杜夫、見ていてくれ。必ずお前の無念を晴らしてやる。」

 そう言って、真樹は足早に自宅へと向かって行ったのだった。


 一方こちらは市川真間子の自宅。彼女は既に帰宅しており、部屋のベッドでスマートフォンを操作しながらゴロゴロとしていた。しかし、その表情はどうも苛立っているように見えなくもなかった。

「ちっ。」

 そう言ってスマホを放り投げた後立ち上がった真間子。いつも不機嫌そうな表情だが、どうやら今の彼女は本当に不機嫌の様だった。

「公津は上手く引っかけたけど、流石に湯川は隙が見えねぇ。強襲する訳にもいかないし、そんな手が通用するような相手でもねぇしな。」

 真間子は自分のストレス発散の為だけに杜夫に嘘のラブレターを送り、架空の人物になり済ましたうえで、彼を晒しものにした。だが、さすがに同じ手、しかも女性を敵対視している優等生の真樹に通用するとは思えないでいた。

「あー、気に入らねぇ。さっさと湯川を処刑したい。邪魔者痛めつけて、みんな消したい。」

 いらつきながらそう漏らした真間子。彼女は天性のカリスマ性で幼少期から友達は多かった。ただ、一人っ子の上両親共に多忙で家を空けることも多く、自宅では退屈な日々を過ごさざるを得なかった。そして、小学校時代はお世辞にも男女仲があまり良くなく、男女間で喧嘩が勃発する事も多かった。勿論真間子も例外ではない。特に真間子は勉強も運動も得意ではないので、成績がいい男子やスポ根男子からバカにされがちだった。そして、小学校5年の時に真間子の今の思考回路を完成させる出来事が起こる。


「市川。また30点か。友達と仲良く遊ぶのはいいが、もう少し勉強も頑張れよ。」

 それは算数のテスト返却時だった。真間子はやはり成績が良くなく、先生から呆れ顔でそう言われた。勿論真間子自身はそんなこと言われていい思いをしている訳が無く、イライラしながら席に着いた。そして、その次の休み時間に隣の席の男子から言われた。

「市川さん。いつも威張りくさってる割に成績がこれじゃあ、説得力ゼロだよ。騒ぐ元気があるなら少しは努力したら。」

 そう見下されるような感じでその男子は真間子に説教臭く忠告した。彼はクラスでもトップの優等生で、難関校を目指しているような子だった。その男子は、真間子の普段の粗暴な態度がよほど気に入らなかったのか、かなり見下しているような感じがした。そして、その瞬間真間子の中で何かが切れた。

「う、うるせぇ!ちょっと勉強できるからって調子こいてんじゃねえぞこのチビが!」

 真間子は男子の胸倉を掴んで持ち上げたあと、頭から地面にい叩きつけた。その後蹴りを入れたり踏みつけたり椅子で殴ったりと大暴れした。相手の男子はかなり小柄で痩せ形であり、体格では真間子が勝っていたので、いくら運動が得意では無いとはいえ喧嘩しても真間子が負ける理由が無かった。勿論すぐに先生に見つかり、仲裁に入った。その時真間子は先生にこう言ったのだった。

「こいつが私が勉強できないのをすごいバカにしてきたから腹が立ったんです!」

 そう説明すると、先生は男子に対して渋い表情を浮かべながら言った。

「お前さぁ。言いたいことは分かるし勉強できるのはいいけど、もう少しいい方ってもんがあるだろ?男なんだからもう少し相手の気持ち考えて言えよ。」

 先生はその男子に対して説教をした。それを見た瞬間、真間子はなぜかとても快感を覚えた。自分が気に入らない奴が酷い目に会うのを見るのがとても楽しく感じたのだった。それ以降、真間子は気に入らない人間を見つける度に様々な手を使って陥れていった。中学時代は自分の事を好きだとしつこく付きまとってきた男子生徒に対し、喧嘩好きな男友達を使ってリンチさせたこともあったし、また別の気に入らない男子生徒に対しては保健室の先生に手を出したと噂を振りまいてその生徒を孤立させたこともあった。退屈さと勉強や運動が苦手なことに対するコンプレックスが彼女の性格を歪めてしまったようだった。


「湯川。お前みたいに女を見下す奴が一番嫌いだ。絶対追放してやる。その全女子生徒の願いを達成すれば、私は本物のヒロインになれる!」

 狂気じみた笑顔を浮かべた真間子は、部屋にあった集合写真に写ってる真樹の顔に画びょうを刺しながらそう言った。しかし、彼女は大きな間違いをしていた。湯川真樹という人間を甘く見てはいけないということに彼女はまだ気付いていないのだ。


 木曜日。

「湯川君。ちょっと職員室に来てくれる?」

 国語の授業が終わった後、真樹は立石に呼び止められた。何の事か分からず、面倒くさそうな表情をした真樹だったが、ここで目立つ行動はできないと思った真樹は大人しく立石の後をついて行き、共に職員室に入った。そして、立石は自分の椅子に座ると真樹の方へ向き直り、質問をする。

「湯川君。公津君の様子はどう、連絡取ってるんでしょ?」

 やはり杜夫の事だった。この日も杜夫は学校を欠席している。立石は欠席の連絡を受ける度に虚しい気持ちになっていた。そして、やはり杜夫の事が気になっていたので仲がいい真樹が見舞いに行ったり連絡を取り合っていることを知って事情を聞こうとしていたのだった。

「いや、もう重症ですよ。あそこまでやられてまともなメンタル保てる訳ないじゃないですか。」

 真樹は少しイライラしながらそう言った。真間子に仕返しする方法を思いついたとはいえ、事件の事を思い出すとやはり苛立ちは隠せない。

「そうよね。ごめんなさい余計なこと聞いて。でもね、私は担任として放っておけないと思ったの。だから詳しく事情を知りたいし、私も家庭訪問しようかなって思って。」

 立石はそう言ったが、真樹はすぐさま首を横に振りながら言った。

「大丈夫ですよ先生。これは生徒同士の問題なんで俺らで何とかします。」

「でも…。」

「ご心配なく。それだけでしたら俺はこれで。」

 真樹はそう言うとさっさと職員室から出て行ってしまった。そんな真樹を見て立石は溜め息交じりに呟いた。

「大丈夫かしら…?」

 立石は腑に落ちない部分がありつつも、ただ見守ることしかできないのだった。


 その日の放課後。真樹は佐倉駅にいた。駅の改札口でスマホを見ながら誰かを待っているようであった。そして、しばらくすると…。

「ん?いたいた!おーい、真樹!」

 真樹を呼ぶ男性の声がした。年は真樹とほぼ同年代で、他校の学生服を着ている。それを見て真樹も反応した。

「よぉ、いきなり呼び出して悪かったな。佳久。」 

 真樹は微笑みながら近づいてきた少年にそう声をかける。彼の名前は初富佳久(はつとみよしひさ)。真樹の中学時代の同級生だ。真樹が以前電話をしていた相手は彼である。

「いやいや。全然いいって!」

「ここじゃ落ち着かないから、場所を移そう!」

 そう言って二人は駅を後にした。今回真樹は真間子への復讐の協力者として彼を選んだ。こうして、真樹の計画はこの日も動いているのであった。

こんにちわ。

真間子の過去、そして新キャラ登場と色々動きました。

真樹はなぜ佳久を協力者として選んだのか?

次回もお楽しみに!

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