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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode4 告白に御用心
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第45話 ニュータウンの悲劇

こんばんわ!

杜夫の口から語られる事件の真相とは?

 C組の女子、市川真間子の陰謀により、偽物のラブレターを掴まされた揚句ネット掲示板に晒されてしまった杜夫。彼はこの日体調不良ということで欠席したが、実際は心理的なショックで学校に行くどころではなくなっていた。そんな杜夫を心配した真樹は帰りに杜夫の見舞いに行った。厳しい言葉をかけたものの、真樹の真剣な気持ちが届いたのか、閉じこもっていた杜夫はようやく部屋のドアを開け、真樹を招き入れる。真樹は床に腰かけると、杜夫に質問した。

「杜夫、教えてくれないか?昨日何があったのかを。」

「あ、ああ…。実はな…。」


-昨日 午前9:00 千葉ニュータウン中央駅改札口-

「ヤバい、ドキドキする!はぁ、早く会いたいなぁ~。愛しのユキちゃん!」

 ユキから「もうすぐ着く」というけっせー字を受け取った杜夫は早くユキとデートがしたくて仕方が無かった。待ち切れずにずっとそわそわしてると、突然後ろから肩を叩かれた。

「杜夫君。」

 女性の声がして思わず振り向くと、見覚えがある顔触れの3人の少女がいた。

「あれ、確かC組の市川だよな?」

「そうだよ。」

 現れたのは待ちわびていたユキではなく、市川真間子とその取り巻きの二人の女子がいた。杜夫は訳が分からず、首をかしげる。

「何でここにいるの?」

「うるせぇよ。居ちゃいけないのかよ?」

 疑問を投げかける杜夫に、喧嘩腰で返す真間子。杜夫は一瞬ムッときたが、すぐに胸を張りながら言い返す。

「別に。君らはの事は知らないけど、俺は今から可愛い女の子とデートだもんね!構ってる時間は無いよ!」

 自信気にそう言った杜夫だが、それを聞いたまま子は不敵な笑みを浮かべながら言った。

「ユキ、だろ?」

「え…?何で知ってるの?」

 杜夫は訳が分からなくなっていた。そして、思い返しながら、ある疑問を投げかけた。

「あ、もしかして、ユキちゃんの手紙を俺の下駄箱に入れたのって…。」

「ああ、私だ。だがな、安心しろ。ユキは来ない。」

「は…?」

 真間子の言葉にますます訳が分からなくなる杜夫。何で真間子にそんなことが分かるのか理解できなかった。

「何でそんなこと言うんだよ?!」

「気付いてねーのかよ、ほんとお前は底抜けのバケツ馬鹿だな!」

 杜夫に軽蔑の視線を送りながらそう言う真間子。そして、その後ろでは取り巻きの二人がクスクスと笑いながらはしゃいでいた。

「ウケる。マジで引っかかってる!」

「真間子の言う通り、馬鹿な非モテってこんなにチョロいんだね。」

「だろ。だから心配いらねーって言ったろ?」

 杜夫は3人の会話に付いていけなかった。そして、訳の分からない状況に段々とイライラが溜まってきていた。

「何だよ。どういうことなんだよ!」

 杜夫の疑問はその直後に明らかになった。真間子はスマホを取り出してメッセージアプリを起動させると、あるトークページを開いた。

「まだ分かんねーのか。おめー、手紙受け取ってからずっとやり取りしてただろ?こんな風にな!」

 杜夫は真間子のスマホ画面を見て驚愕した。そこには今まで杜夫とユキのやり取りのページがそのまま移っていたからだ。

「これはユキちゃんのトークだ。どうして市川がこれを。」

「だって、これ私の裏アカウントだからな。あって当然だろ?」

「な、何で、もうわけが分からない。」

 杜夫の頭は段々と混乱してきた。そんな杜夫に、取り巻き二人から説明が入る。

「だ・か・ら、公津君はずっと真間子の裏アカウントと会話してたって訳。」

「そう言うこと!だから、ユキなんて女の子はいませんよーだ!」

 杜夫を馬鹿にするように事実を突き付けた取り巻き達。杜夫はそれを聞いて唖然とした。それはそうだろう。初めて自分を好きになった少女は初めから存在していなかったということなのだから。

「そ、そんなバカな!だって、写真まで送ってきたんだぞ!」

 事実を信じたくない杜夫は最後の望みとして、写真の事を出した。しかし、そんな望みもすぐに崩れたことは言うまでもない。

「ああ、あれな。あれは私が適当にネットから女の子の写真引っ張ってきてお前のケータイに送っただけよ!こんな単純なことも気付かねーとか、脳みそ猿以下だな、ホント!」

「やめなよー、真間子。猿に失礼よ!」

「ホント、ホント!公津君と比べられる猿の身にもなってよ!」

 楽しそうに杜夫を侮辱する3人に対し、杜夫は当然怒り心頭だった。それはそうだろう。彼女が欲しいっていう切実な思いをこうも簡単に弄ばれたからだ。

「どうして、どうしてこんなことしたんだ?!」

「は、そんなの暇つぶしに決まってんだろ?不愉快な奴をどうやって滅茶苦茶にするか考えてたら、たまたま偽ラブレターを思いついてな。お前、キモいくせに彼女欲しいとかホザいてたから引っかけて懲らしめてやろうと思ってな。」

「お前みたいな奴好きになる女の子いないよーだ!」

「自分の顔鏡で見たことあるの?キモいのにちょっと女の子からメッセージ来ただけで、非モテ卒業って考えとか頭おかしいんじゃない?キモさが100倍増しね!」

 真間子たち3人は見事なまでに罠にはまり、醜態をさらしてしまった杜夫を見て終始嬉しそうだった。そして、杜夫は初デートの夢を打ち砕かれた上にそんな事実を知り、怒りだけでなく悲しみまで込み上げてきたのだった。

「言いたいことばかり言いやがって…俺の、俺の男心を踏みにじるとかふざけんなよ!」

 杜夫は怒りの口調でそう詰め寄ったが、その目には涙が溢れだしていた。自分の初恋が、こんな女子達によっていとも簡単に粉砕されるなんて思ってもみなかったからだ。そして、真間子たちはそんな悲しむ杜夫を見て更に笑い転げていた。

「こいつ、泣いてやがる。だっせー、キモいの自覚ないのに自分に彼女ができた気になってたくせに!」

「どう、分かったでしょ?自分がどれだけキモくて馬鹿なのかを。勘違いしてたあんたを分からせてくれたんだから真間子に感謝すべきよ!」

「そうよ、そうよ。お前がキモいのが悪いのに、それを教えてくれた真間子を怒るとかマジであり得ないから。やっぱお前、生きてる価値無いわ!」

 散々な言われようだった。確かに杜夫は勉強も運動もダメで見た目も良くない事を自分でも分かっていた。だが、自分にも恋位する権限はあると思っていたのに、どうしてここまで否定され、侮辱を受けなければいけないのだろうと思った。そして、そんな杜夫の中で何かが壊れた。

「ふ、ふざけんな。ふざけんなぁーっ!」

 杜夫は怒りの感情が完全に暴走状態と化していた。そして、そのまま真間子の所に突っ込もうとした所、真間子からカウンター気味に腹に蹴りをくらい、後ろに吹っ飛んで倒れ込んだ。

「そこでくたばってな。お前には、泣きながら床を這いずり回ってる所がお似合いだよ!」

「女の子から蹴りくらって悶絶するとか、弱っ!マジでキモい!」

「真間子、動画動画!キモ男が成敗されて床で泣きじゃくってる決定的瞬間を撮らなきゃ!」

「おっ、そうだな!」

 真間子はスマホのカメラを起動させて、床に倒れながら泣いている杜夫の動画を撮影した。そして、杜夫は悔しくて更に怒りと悲しみを爆発させながら立ちあがった。

「やめろぉぉ!」

 そう叫んだが、真間子たち3人はさらに面白がって杜夫をバカにする。

「うわぁ、泣き顔で迫ってきやがった!やべぇ、こいつさらに狂ったわ!」

「キモーい、逃げろー!」

「みなさーん!ここに不審者がいまーす!キモいのに勘違いして、逆切れしたサイテー男なんで、逮捕しちゃっていいですよー!」

 真間子たちは大声で面白そうに叫びながら、泣きながら怒る杜夫から蜘蛛の子の如く逃げ去ってしまった。真間子たちが去った後、全てが情けなくなってそのまま駅の床に座り込み、泣きじゃくった。その後、駅の改札口をパトロールしていた警察官に声を掛けられた杜夫は、交番に案内されて事情を説明した。杜夫は警察官に慰められたものの、心の傷が癒えることは無く、悲しみながら帰宅し、部屋に閉じこもってしまった。翌日になっても立ち直れなかった杜夫は、母親に体調不良だから休みと伝えるよう母親に頼み、学校を欠席した。


「…っという訳だ。」

「なるほど。屑だな市川って。」

 杜夫からすべて聞いた真樹は呆れて物も言えなくなっていた。と同時に、真間子に対する敵対心がさらに燃え上っていた。

「安心しろ。俺が完膚なきまで叩きのめしてやる。」

「どうすんだよ、真樹?」

「いい考えがある。お前は落ち着くまでとりあえず休め。あとは俺に任せておけ!」

 それだけ言うと、真樹は立ちあがって鞄を持つ。

「もう帰るのか?」

「ああ。このまま俺が居座っても心休まらんだろ。とりあえず、待ってるぜ。お前がまた学校に来れるまで。」

「真樹…。」

 真樹は心配そうな顔をする杜夫を背に、優しく声をかけて部屋を出た。そして、杜夫の母親にも挨拶し、公津家を後にした。真間子を叩き潰し、踏みにじられた杜夫の恨みを晴らそうという思いを乗せて…。

こんばんわ。

ユキの正体は真間子が作った架空の人物でした。

非道な真間子に対し、真樹はどう出るのか?

次回をお楽しみに!

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