第42話 真樹、焦る
こんばんわ!
8月最初の投稿です!
(分からん。どうして自身を拒絶する相手を好きになれるんだ?俺には理解できない。普通ならすぐに嫌いになるはずなんだが…。)
ある土曜日の朝、真樹は布団から体を起こすと、ふとそんなことを考えた。勿論、これは杜夫の事を指している。真樹と杜夫の共通点は二人共女性受けが悪いということだ。ただ、二人には決定的な違いがある。真樹の場合、幼少期のトラウマから女性に対する拒絶反応が起き、女性を憎しみ嫌うようになった。杜夫の方も昔から女性受けは悪かったが、彼の場合はモテない状況が続けば続くほど異性への興味が肥大化し、女性から受け入れられたいという欲求が高まっている。
「あれから説得したが、あいつはまるで聞く耳を持たない。知らない人に付いて行っちゃいけないって、幼稚園の頃言われなかったのか?」
真樹は寝まきから制服に着替えながら、呆れ半分でそう呟いた。真樹は杜夫から謎の人物、ユキとデートをすると聞かされてから何度もやめるように説得したが、彼は不機嫌になり…「せっかく手紙くれて、連絡までしてくれたのに無視するなんて失礼じゃないか!」と真樹に怒った。杜夫は今まで恋人がいたことが無いだけでなく、女子と連絡先を交換したこともない。なので、女性と携帯電話でやり取りできたことが嬉しくてたまらなかった。しかし、真樹は直感でこれがユキ(もしくは手紙を仕込んだ人物?)の狙いじゃないかと直感で思っていた。この先に幸せな結末なんて無いと忠告しても結局彼の耳に届くことは無く、杜夫は翌日にユキとデートする事になった。
「あいつ、自分に都合がいいことばかり考えているけど覚悟ができているのか?いや、できてないな。あのままじゃあいつは涙を流すだろう。」
溜息交じりに真樹はそう言うと、制服に着替え終えて部屋を出たのだった。
場所は変わって、ここは大谷津学院のグラウンド…。
「礼!」
「「宜しくお願いします!」」
大谷津学院野球部の練習日は毎週水曜日の放課後と、土曜日の午前中だ。ただ、この日は通常の練習ではなく、他校との練習試合だ。因みに相手は大谷津学院と同じ地区にある成田総合高校。強さ的には大谷津学院と大差は無いので、練習試合の相手として最適といえる。
「いいかみんな。練習試合とはいえ、ホームで負けたくは無い!怪我しない程度に全力でいけ!」
「「はい!!!」」
顧問の関口の言葉に部員たちは気合いっぱいでそう答え、後攻なのでテキパキと守備に付いた。因みに、真樹も3番ファーストとしてスタメン出場である。キャッチボールを済ませ、相手校のトップバッターが打席に入り、試合開始だ。
「プレイボール!」
審判の掛け声とともに、土曜日朝の練習試合がスタートしたのである。
その後、試合は進み現在7回裏、ノーアウト1塁である。スコアは3-1で大谷津学院が2点リードしている状況だ。真樹は試合に集中しているものの、ベンチに帰るとやはり杜夫のことが気になって仕方が無かった。そんな真樹の様子を妙に思ったのか、伸治と武司が話しかける。
「真樹、どうした?元気が無いぞ!」
「そうだよ。いつも部活中は楽しそうにしてるのに、珍しいな。」
心配そうに声をかける二人に対し、真樹は顔をあげる。杜夫が手紙をもらったことは彼らを含む1年生男子はほぼ知っており(杜夫自身が自慢げに周囲に喋っていた為)、今更話しても仕方ないと思ったが、真樹は正直に今の本音を話した。
「杜夫のことだ。あいつ、俺が止めたのに明日一度も会ったことない奴とデートだって言い張って聞く耳持たなかった。やめた方がいいのに。」
「ああ、あれか。マジであいつに彼女できんのか?」
「でも信じられないな、杜夫に一目ぼれしてラブレター送ってくるなんて。どんな子なんだろう?写真で見る限り可愛いけどな。」
武司と伸治は首をかしげながらそう言った。杜夫がラブレターをもらったことを聞いた1年男子達の反応は様々だった。羨ましがる者もいれば、興味を持たない者、真樹みたく少し怪しいと思う者等もいたが、杜夫本人はそんなことはどうでもいいと思っている。ただただ女の子とデートしたくて仕方なかった。
「俺は怪しいからやめろと何度も忠告した。だが、あいつは聞き入れてくれなかった。どうして、そう簡単に信じ込む。詐欺の可能性って考えないのか?」
「まぁ、恋は盲目って言葉あるから、今のあいつに何言っても無駄じゃないか?」
「そうそう。あいつの事だし、振られても『もっといい恋があるはずだ!』なんて簡単に開き直りそうだけどな。」
武司と伸治は半分呆れつつも楽観的にそう言った。杜夫は現在、今までモテたかったのにモテなかった反動を、手紙をもらったことで一気に受けている状態だ。いわば感情の暴走状態である。一方の真樹も、デート前日にもかかわらず杜夫の説得に失敗し、ユキの正体も分からないままなので焦りを隠せなかった。
「これは間違いなくな誰かが仕込んだ罠だ。止めたいが、あいつデートの場所を聞いた時『お前絶対邪魔するから教えない!月曜日に土産話いっぱいしてやるから!』って言って教えてくれなかった。参ったな。これじゃ、もうどうしようもない。」
「気が早いな、杜夫の奴。」
「ホントだよ。っていうか真樹!お前の打順だろ!」
「あ、そうだった。」
武司と伸治に言われて、真樹は急いでバッターボックスに入る。既にツーアウト3塁になっていたが真樹は見事にタイムリーヒットを打ち、スコアは4-1の3点リードに変わった。結局、大谷津学院はそのまま逃げ切って練習試合に勝利した。だが、真樹は明日の杜夫のデートでとんでもないことが起こると予知していたので気が気でなかったのだった。
こんばんわ。
初めて、真樹が試合している所を書きました。
さて、杜夫はデートをする訳ですが、どのような結末が待っているのでしょうか?
次回をお楽しみに!




