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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode4 告白に御用心
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第39話 杜夫、浮かれるな

こんばんわ!

ラブレターをもらった杜夫。

果たして大丈夫なのでしょうか?

 夕方、成田駅のホームで帰りの電車を待ちながら真樹は考えていた。先程校舎から出る時に杜夫の靴箱から封筒が落ちてきたのだが、開けてみるとそれは杜夫に宛てた手紙だった。内容は杜夫のことが気になっており、連絡も取りたいとのことで差出人の物と思われるトークアプリのIDも書かれていた。もらった杜夫はこれを自分へのラブレターと解釈し、大はしゃぎしていたが真樹はどうしても引っかかることがあった。

「名前を書かずにIDだけ載せるってことは、すぐに正体を知られたくないということだよな。」

 普通、手紙を書く時自分が出したとすぐに知られたくないとしても、苗字と名前のイニシャルくらいは載せる人が多いだろう。しかし、手紙にはそれらしきものは一切なくメッセージのやり取りをしたいとしか書かれていなかった。

「とすると…杜夫の連絡先が欲しかっただけか…?」

 あの文面だけでラブレターと決め付けるのは早い。ただ、正体不明の相手はトークアプリを使って杜夫に何かしらの事をしようとしていることだけは確かであると真樹は踏んだ。しかし、この時点ではどこの誰が手紙を杜夫の靴箱に入れたのかまでは特定できそうにない。

「うちの学校の人間が入れたのは間違いないと思うが…、入れたのは本人かあるいは第三者。手紙の主が外部の可能性も考えられるな。」

 靴箱に手紙を入れた人間は杜夫の靴箱の場所を知っているのは確定している。ただし、手紙を入れた者が必ずしも書いた本人とは限らない。何らかの理由で第三者に頼んだ可能性も十分に考えられる。その場合、大谷津学院の人物ともそれ以外の可能性もあり得る。

「一体誰なんだ…?杜夫の事を知っている奴じゃないと指名できないしな。どの道迂闊に手を出すのは危険だな。」

 そう思った真樹は、反対方向の電車で既に帰った杜夫にメッセージを送る。

『おい、杜夫。さっきの手紙やっぱり怪しいぞ。無視しろ。登録した連絡先も削除した方がいい。』

『何言ってんだよ真樹!折角神が与えてくれたチャンスを捨てろって言うのかよ!』

『どこのだれかも分かんない奴と連絡先交換する必要はない。これで何か変なことに巻き込まれたらどうするつもりだ?』

『少なくとも手紙の主は俺の事を知ってるみたいだから大丈夫だ!それに、このシチュエーションは誰がどう見たってラブレターだろ?大丈夫大丈夫!』

『あの内容だけじゃそんなこと分からないだろ?何でそう言い切れる?』

『直感だよ、直感!何でもネガティブに捉えすぎなんだよ真樹は!じゃあな!』

 そんな感じでメッセージのやり取りは終わった。このような手紙を初めてもらった杜夫はすっかり舞い上がってしまい、真樹の警告に全く耳を貸さなかった。そして、杜夫のそんな様子が余計に真樹を心配させた。

(完全に浮足立ってるな。まあいい。さっさと手紙の主と送った目的を突き止めなきゃだな。泳がせるのもいいか。)

 真樹は杜夫の説得を諦めて、先に相手をいぶり出すことに決めた。モヤモヤした感覚はぬぐい切れなかったが、真樹は先に家に帰り休みたいと思っていた。


 翌日。昼の教室内にて…。

「なぁなぁ、真樹!やっぱり俺の直感は間違ってなかった!遂に恋の女神が俺に微笑んでくれたんだよ!」

 昼食を食べている真樹に、杜夫が今まで見たことが無いほどの満面の笑顔でそう言ってきた。真樹は正直怪しいと思っているので嫌な予感しかしなかったが、泳がせて正体を突き止めたかったのでそのまま話を聞いた。

「とりあえず話せ。杜夫。」

「真樹もようやく興味持ってくれたか。昨日の子なんだけどね…。」

「何の話ー?」

 杜夫が話そうとした時に、ちょうど慶がジュースを買って教室に戻ってきた。そんな慶を見て、真樹が言った。

「ちょうどいいや。オニィ。お前にも聴いて欲しい。」

「う、うん。分かった。なんか、杜夫がやけに機嫌がいいからどうしたのかなーって思って。」

 慶も杜夫のいつもと違う様子が気になっていたようだ。慶が椅子に座って弁当箱のふたを開けた所で、杜夫が話し始める。

「実は…ここだけの話なんだけど。俺、ラブレターもらっちゃって!」

「ええっ?!」

 慶は思わず大声で叫んでしまった。その様子を見て周りの生徒達がチラチラと真樹達を見ていたが、真樹は冷静に小さな声で慶を落ち着かせる。

「落ち着けオニィ。杜夫、続けろ。」

「お、おう。それでな、書かれてたIDを連絡先に登録してメッセージ送った訳よ!そしたら返事来てさ!まぁ、見てくれよ!」

 杜夫はそう言うと、スマホのアプリを起動させて謎の人物の連絡先を開いた。トーク履歴を見ると、そこにはこんなやり取りが残されていた。


『こんにちわ!公津杜夫です!手紙ありがとう!』

『受け取ってくれたんですね!ありがとうございます♡あんな形でお手紙渡して御迷惑でしたか?』

『そんなことないよ!すごく嬉しかった!』

『良かったです!私、ユキって言います!』

『所で、どうして俺のことを?』

『私、大谷津学院の近くに住んでるんですけどあそこ女子ばっかりで、男子が目立つじゃないですか?ある時前を通ったら、公津さん見かけたんですけど感じよさそうな人だなぁって思ったんです!』

『杜夫でいいよ!大谷津学院の人…じゃないんだよね?』

『はい。今高校1年生で別の高校なんですけど、友達が大谷津学院通ってたから、事情話して公津さんのこと教えてもらったんです!それで、その子に頼んで手紙を下駄箱に入れてもらったんです!』

『ってことは同い年?やめなよ敬語なんて!タメ口でいいから!』

『分かったわ。杜夫君。今日話せてうれしかったわ♡ またお話ししてくれる?』

『勿論だよ!いっぱい話そう!』

『嬉しい^^ 今日は本当にありがとう♡』


「どーだ!俺にも春が来たぜ!」

 自信満々に杜夫はそう言い放ったが、これを見た慶は唖然としていた。真樹の方は顔を顰めながら黙って文章を見続けている。

「どう思う?オニィ。」

「う、うーん。確かに杜夫に気があるように見えるけど…見ず知らずの他校生を一回見かけただけで頭から離れなくなるなんてことあるのかな?」

「一目ぼれしたんだろ!勇気を出して、他の人に頼んでまで俺に手紙を届けようとしたんだ!」

「うちの1年生とそのユキって子が友達なんだよね?うちの子…一体誰だ?」

「誰だっていいんだよ!ユキちゃんの気持ちが俺に届いて、こうして繋がったんだ!とにかく俺はこのチャンスを無駄にしない!待ってろ、俺の幸せな青春!」

 慶は色々疑問に思いながら首を傾げ、杜夫はすっかり彼女ができた気でいた。そして、真樹はますますこの謎の人物、ユキに怪しい気配を感じ取っていた。

(やっぱりおかしい。何もかもが不自然なほど都合がよすぎる。それに、いくらうちの男子が少なくて目立つからってピンポイントに杜夫に行くのはどうなんだ。これには絶対裏がある。ユキの正体を早く突き止めないと、とんでもないことになりそうだ。)

 危機感を覚える真樹をよそに、杜夫はウキウキモード全開で更にご機嫌になった。だが、みんなはまだこの手紙の裏にあるシナリオを知る由もなかった。

こんばんわ。

すっかりウキウキの杜夫君。

ユキって一体何者なんでしょうね?

次回もお楽しみに!

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