第38話 悪魔の贈り物?
こんばんわ!
新エピソード、スタートです!
思春期は、人にとって様々な転換期でもある。幼少期と違って色々なことが分かり始めたり、新たなことに興味を持ち始めたりする者も多い。俗に言う中二病を発症しやすいのも大体思春期である10代であるこの時期だ。そして、異性(もしくは同性)に対して恋愛感情を抱き始めるのもほぼ思春期であると言っても過言ではない(もちろん個人差はあるが)。しかし、どんな事がらに漏れ以外が存在するように、真樹に関してはこれに当てはまらない。幼少期から異性絡みで散々な目に遭い続けた真樹は、女性は自分にとっての天敵としか思えなくなっている。なので、どうして自分と同世代の男子が異性に片思いしたり、彼女を作ったりするのか全く理解できないのだ。そんな真樹はある日の休日の夕方に自宅で祖父母と共にテレビを見ている。テレビを付けた所でトークバラエティが放送されていたのだが…。
「えーっ?そんなに告白されたの?」
「そうなんです!多い時じゃ一週間に5人とか。」
「モテモテじゃん!」
「それはいいんですけど、彼氏がいる時も普通に告白されたりして…。ちょっと嫌だなって思ったことありましたね。」
「下手すれば修羅場になっちゃうよね…。今はどう?」
「こないだ彼氏と別れたばかりなんですけど、振られた理由が『お前がモテ過ぎて安心してデートできない』って言われたんです。」
「『彼氏いるからもう連絡してこないで』って冷たく突っぱねればよかったんじゃない?」
「確かにそうなんですけど、男の子に好かれること自体は悪い気はしないし、逆恨みとか怖いんで…その辺は難しいですね。」
番組内では、人気急上昇中のカリスマギャルモデルをゲストに迎えて彼女の恋愛履歴に関して触れていた。MCの男性タレントは若干引き気味だったが、当のゲストであるギャルモデルは楽しそうに話している。真樹がその内容を見て視聴を続ける訳が無く…。
「見るんじゃなかった。時間の無駄だった。」
と言いながら即座にチャンネルを変えた。変えたチャンネルでは心霊特番を放送していたので、ホラー好きな真樹はこの番組を見ることにした。
「ごはんだよー!」
「はーい!」
祖母の多恵に呼ばれて食卓に座る真樹。そして、祖父の正一達と3人で夕飯の時間を迎えた。夕飯を食べながら、心霊番組を楽しそうに見る真樹に対し、正一が声をかけた。
「なぁ、真樹。」
「どうしたの、爺ちゃん?」
「学校が嫌だと思ったことは無いか?」
「そりゃ、一杯あるけど何で?」
首をかしげる真樹に正一が心配そうな表情で続ける。
「この間の体育祭見た時にお前が迫害される様子を見て少し思う事があってな。もし、お前が辛いって思ったら転校してもいいと爺ちゃん思ったんだ。」
やはり、自分の孫が同じ学校の女子生徒から忌み嫌われている状況を見るのは辛いであろう。正一にとって何より辛いと思ったのは、真樹が学校に居続けることでもっと酷い目にあわされてしまうのではないかという考えがよぎった事だ。そして、祖母である多恵も続ける。
「あんたが小学校の時、女の子からずーっと酷いいじめを受けていた時もね、お父さんがあんたを転校させれば良かったって後悔していてね。だから、私達も学校が真樹が辛いって思ったらすぐにでも転校できるように掛け合って見せるから。真樹の学力ならもっといい学校に転入するのも簡単だろうし。」
多恵の方も真樹の現状を知って無視できないでいた。そして、真樹が幼少期にいじめを受けていたことも知っていたので、今度こそ真樹に楽しい学校生活を送ってもらいたいと思っている。ただ、真樹は首を横に振りながら二人に言った。
「爺ちゃん、婆ちゃん。心配してくれてありがとう。でも大丈夫。もうあの頃の何も出来なかった俺じゃないし、対抗手段はいくらでもある。それに、うちみたいに女系社会の学校で女子を倒すことに意味があるから自分から転校を申し出るなんてことは無いよ。安心して。」
真樹は幼少期に受けた女子生徒からのいじめから、トラウマを植え付けられた半面多くのことも学べた。女子の闇の部分に関してはかなり知りつくしているので、今ではどんな非道な手段に対しても切り抜けて返り討ちにできる自信はあった。真樹は正一と多恵に心配無用であることを伝えると、心霊特番の視聴を続けた。
翌日。また新たな一週間が始まる。学校に向かうべく、真樹は成田駅の改札を出ると…。
「真樹ー、おはよう!」
「おう。おはよう、オニィ!」
慶が元気良く真樹に声をかけてきた。季節も10月が終わろうとしており、少し肌寒くなり始めている。そんな中、慶は笑顔で真樹に話題を振る。
「真樹、昨日心霊番組やってたの見た?」
「勿論だ。下手なトークよりもああいうのがスリルあって面白い。昨日の放送もレベル高かったしな。」
「だよねー。昨日のじゃあれが一番怖かったな。病院のやつ。白い服着た女の人の幽霊がモロ映ってたもん!」
「俺は山の幽霊屋敷のがすごいと思ったな。誰もいない筈なのにずっと笑い声が聞こえた上に、ポルターガイストまで起きたし。」
どうやら慶の方も真樹と同様に昨晩の心霊特番を見ていたらしく、二人はその話題で盛り上がりながら学校へと向かった。そして、学校に到着し、階段を上がって教室へ向かおうとしたのだが…。
「おい、湯川。」
いきなり後ろから誰かに呼び止められた真樹。声をかけてきたのは隣のクラスのイケメンサッカー男子、裕也だった。正直真樹は無視して早く教室に行きたかったのだが、裕也は真樹と慶の前に素早く回り込んだ。
「何、邪魔なんだけど。」
「お前が言えた立場か?」
お互い喧嘩腰で牽制し合う状況に、隣にいた慶も見慣れているとはいえ流石に顔を顰めた。裕也は少し不機嫌そうに真樹に対して続ける。
「この間はよくもうちのクラスの子を停学に追い込んでくれたな。しかも来年体育祭に参加できないし、大学の推薦枠も剥奪だってよ。」
「知ってる。まぁ、当然だろうな。」
「これがどういう意味か分かるか?」
「そのまんまの意味だ。」
そう素っ気なく答えた真樹に対し、裕也は何かカチンと来たのか胸倉をつかみながら真樹に詰め寄った。
「お前なぁ!押上さんの件もそうだし、体育祭の件でうちのクラスから停学者二人目になったけど、全部お前がらみじゃないか!いい加減にしろよ!お前と違って彼女達は将来有望だったのに…。人の未來を狂わせてんじゃねーよ!害虫のお前が停学になるべきなんだよ!この非モテクソ童貞が!」
どうやら自分のクラスの実行委員が処分を受けたのが不満なようだった。更に、以前真樹達に濡れ衣を着せた美紅に関しても今だに恨んでるようだった。さすがにそれには真樹も怒られる筋合いは無いし、隣にいた慶もあまりに身勝手な裕也に怒り心頭だった。
「大和田君!いくらなんでもそれは酷くない?あれ完全に傷害未遂だし、処分を受けるのは当然だよ!気に入らない生徒や怪我や体調不良になれば、何したっていいって言うの?」
慶の主張はもっともである。裕也はただ単に気に入らない真樹が普通に学校に来ていることへの当てつけでしかない。しかし、裕也は自分の主張を曲げようとしなかった。
「うるさい!俺は女の子とも仲良くしたいのに、こいつは男女の溝を深めて雰囲気悪くしようとしやがる!邪魔なんだよ!ウぜーんだよ!こんな灰色の青春送っている奴と一緒じゃ俺まで気分悪くなる!女の子を大事にできない奴は俺の敵だ!非モテオーラなんて、この世で一番いらないものなんだよ!」
それだけ言うと裕也は教室に入って行った。真樹と慶は訳が分からないという表情でしばらくポカンとしていたが、気を取り直して教室に入って行った。
「うぃーっす。」
「おはよー!」
真樹と慶が挨拶しながら教室に入ると、既に来ていた杜夫が暗い表情で机に座っているのが見えた。心配になり、二人は声をかけるが…。
「杜夫、どうした?」
「元気ないよ。」
「はぁ、体育祭でも失敗しちゃったし、半年以上たったのに彼女の一人も出来ない。いつになったら俺に春が来るんだろう?」
杜夫は体育祭でいい所を見せて彼女を作るきっかけを作ろうとしたが、見事に失敗。そして、それをまだ引きずっているようだった。真樹は溜め息をつきながら杜夫を宥める。
「ふぅ。そんなことか。もういい加減切り替えろよ。他にやるべきことがあるだろ?」
「そうだよ!ずっと同じことで落ち込んでても意味無いよ!」
慶も宥めるが杜夫に対してあまり効果は無かったようだった。二人はやれやれと思いつつ自分の席に着席し、長い一日がスタートしたのだった。
「じゃあ、僕部活あるから!」
「おう、じゃあな!」
「またな!」
部活に向かう慶を見送り、活動が無い真樹と杜夫はそのまま昇降口に向かった。二人は靴箱から自分の外葉気を取り出そうとしたが、杜夫の靴箱に異変が…。
「ん?おい杜夫。何か落ちたぞ。」
「お、ホントだ。何だこれ?」
杜夫の靴箱から1枚の水色の封筒が落ちた。外に向かって歩きながら封筒を開けると中から一枚の紙が出てきてこう書かれていた。
『突然のお手紙すみません。前から公津君のことが気になっていました。一杯お話ししたいので私のIDを載せておきます。よかったら連絡ください。』
という文書とSNSのIDと思しき物が書かれていた。ただし、差出人の名前らしきものは無く誰が書いたのかは不明だが、杜夫宛であることには間違いない。そして、これを見た杜夫は…。
「キター!」
大声で喜び始めた。更に笑顔で続ける。
「真樹、ついに来た!俺にラブレターだ!やっと、やっと俺に彼女ができるんだ!」
ずいぶん嬉しそうな杜夫に対し、真樹は怪訝な表情を浮かべた。そして、浮かれている杜夫に警告とも言えるべきことを伝える。
「待て、杜夫。差出人も何も書いてないし、そのくせID載せるなんておかしいだろ。多分悪質な悪戯だ。無視した方がいい。」
「真樹、お前もひねくれてんなぁ。恥ずかしくて名乗れないだけだろ?勇気出してわざわざ伝ええてくれたのにそれ無視する方が酷いだろ!俺は答えてあげなくっちゃ!さーてと、この連絡先を登録してっと…。」
杜夫は真樹の忠告に耳をかさずに手紙に書かれていた連絡先を自身のスマホに追加登録した。そんな様子を見て真樹は何か不吉な気配を感じていた。
(いくらなんでも話が上手すぎる。どこの誰か知らないけど、早めに対処しないと危険だ。)
杜夫の様にラブレターをもらって嬉しいと思う男性は多いかもしれない。しかし、真樹は経験上、この手の物はトラップであると考えていた。杜夫の方は疑いもせずにウキウキだったが、後にこれがとんでもない騒動になると誰が予想できただろうか?
こんばんわ!
すみません、色々詰め込んで長くなりました。
杜夫君は浮足立っていますが本当に大丈夫でしょうか?
そして、真樹はそんな杜夫を見てどう出るか?
次回をお楽しみに!




