第319話 本当の平和
こんにちは。
今エピソードはこれでラストです。
大財閥である大和田コンツェルンの御曹司で、学校一イケメンのモテモテ男子、大和田裕也。彼は大和田コンツェルンの不祥事で逮捕された両親や執事に代わって自分が財閥トップになって好き勝手やろうとしていた。しかし、時すでに遅し。大和田コンツェルンと癒着があったものは全員摘発され、裕也の悪事も全て暴かれて登校した所をあっさりと逮捕されたのだった。そして、そんな裕也を庇おうとした取り巻きの女子たちも警察に殴りかかってかなりの人数が逮捕されたのだった。そんな様子を見届けていた真樹達だったが、あまりの事態に学校は臨時休校となったのだった。
-その日の午後-
「お、やってるやってる。」
家に帰ってきた真樹は、少しくつろいでからテレビを点けた。すると、案の定裕也が逮捕されていることがニュースで報道されていた。
「今朝、千葉県成田市の大谷津学院高校で生徒1名が逮捕されました。逮捕されたのは3年生の男子生徒で、
数多くの暴行事件や違法転売、更には自身が所属するサッカー部での試合で、審判を買収して危険プレーを見逃させていた疑い。これに対し、少年は容疑を認めており『自分は大財閥の跡取りだから、舐められないために威厳を示したかった。学校の女の子たちに自分の格好いい所を見せたかった』と供述。また、容疑者の少年を庇おうと複数の女子生徒が警察に暴行を働こうとして、公務執行妨害で逮捕されています。」
テレビにはいつもの自信満々な表情とは打って変わって、がっくりと項垂れて抜け殻の様になった裕也が警察に連れられている所が映し出されていた。真樹はそんな裕也の映像をご機嫌な様子で見届けた後、ある所に電話した。
「もしもし、沙崙か?俺だ。今大丈夫か?」
「もしもし、真樹。私は今、丁度お昼休憩入った所。どうしたの?」
「喜べ、ビッグニュースだ。」
電話の相手は台湾にいる沙崙だった。真樹は今朝あった一部始終を彼女に話したのだった。
「つー訳で、大和田の馬鹿は逮捕された。見せたかったぜ、アイツが焦って警察に連れていかれる所。」
「マジで?ウケるんだけど!あんな勘違いナルシスト野郎、同情する価値もない。ざまあみろだわ。」
「これで、日本は大財閥を一つ失った。だが、それは癌細胞だ。これから日本経済はいい方向に再生されるだろう。」
「台湾にある大和田系列のお店は、完全撤退かこっちの企業に買収されているわ。これで町中で大和田の文字を見なくて済むと思うと、ほっとするわね。」
世間は完全に大和田を排除する方向に動いている。実際にネット上でも『大和田ブラック企業で草!』
『チェーンの味も微妙だし。』『会員費高すぎてぼったくりだし。』『息子の勘違い発言ウケる。』など、かなりの者が大和田コンツェルンに不満を持っていることが分かった。だが、そんな大和田コンツェルンの天下は、真樹の手によってあっけなく終わりを迎えた。
「とにかく、これで正真正銘。学校にも日本にも平和が訪れたってことだ。」
「そうね。真樹もよく戦ったわね。お疲れ様。」
「ありがとうな。じゃあ、また。」
こうして二人は電話を切った。取り敢えず、真樹と裕也の全面戦争は真樹の勝利で幕を閉じたのであった。
-数日後 千葉県内の刑務所-
「大和田裕也。面会だ。」
「んだよ、うるせーな。」
刑務所に収監されている裕也は看守に悪態をつきながら、面会場所まで連れて行かれた。すると、そこには見覚えがある顔が。
「よお。来てやったぜ、大和田裕也君。囚人服似合ってるよー!イケメンは何を着ても似合うって本当なんだな!」
「なっ…!湯川、てめぇ!」
裕也の面会人は真樹だった。捕まった裕也を見た真樹は、煽るかのように裕也に言い放った。そんな真樹に裕也は食って掛かる。
「全部お前のせいだ!親父も、お袋も、山本も!お前のせいで俺の家庭が、大和田コンツェルンが滅茶苦茶になった!どうしてくれるんだ!」
「大勢の人生滅茶苦茶にしておいて、よくそんなことが言えるな。自分だけ助かろうとか、勝手にも程があるぜ。」
「うるせぇ!お前みたいな貧乏人は、俺たち特権階級に大人しく従ってればいいんだよ!この俺にこんな味合わせておいて、覚えておけ!貧乏クズ湯川!」
「残念ながらもうお前は特権階級でもない。ただの犯罪者一家のバカ息子だ。今まで通り好き勝手出来ないからな。じゃあ、俺は帰るからせいぜい反省しろよ。」
「くそぉ…この俺が…!」
悔しがる裕也を背に、真樹は警察署を後にした。3年間いがみ合い続けた両者だったが、もうその必要がない平和な学校生活が送れるようになったのだった。
その後、国が動き大和田コンツェルンの今までの行いが問題視され、政府や警察関係で大和田との癒着があったものが次々と逮捕されていった。また、大和田コンツェルンは被害者への補償などで資金を次々失い、持っていた土地や別荘などは次々に売りに出され、最終的には財閥は解体。沙崙が話していた台湾と同様に、倒産もしくは買収されて大和田の名前が日本から消えるまで時間がかからなかった。そして、逮捕された大和田親子と執事の山本はというと、今までの豪華な生活とは真逆の日常に絶望し、全員抜け殻の様になって刑務所に収監されているとの事だった。そして、ある日の夕方。真樹は誰かに会うために喫茶店を訪れていた。
「すみません。今学校終わって。」
「いいの、いいの。さ、座って。」
そう言ったのはオリエント通信のジャーナリストの飯田だった。その隣には弁護士の岩本もいる。真樹が座ると、岩本も口を開いた。
「湯川君。今回はよくやってくれた。実際僕も大和田がらみの件で相談を受けたことがあるから、今回取り締まれて本当に良かったよ。」
「いえいえ、そんな。僕はあいつが気に入らなかったから、懲らしめただけですから。」
謙遜しながら真樹はそう言った。すると、飯田はその後の事を色々教えてくれた。
「国外でも大和田コンツェルンの影響力は最早ゼロになっている。あと、坂田工業の特許は無事息子さんに引き継がれたよ。レジャーランドの建設も完全に白紙化した。」
「見る影もなくなりましたね。」
真樹はさらりとそう言った。大和田コンツェルンはもう、世界屈指の大財閥ではない。高校生一人に潰された超絶ブラック犯罪者グループとしてその名を世間に刻んだのだった。そして、最後に岩本が言う。
「君の家の窓の修理代と、燃やされた壁の修繕費。あと、殺されかけたことによる慰謝料も全部請求できるよ。さあ、もう喜んでいいんだ。僕たちが奢るから、好きな物食べて。」
「はい。岩本さんも飯田さんもありがとうございました!」
こうして、3人は食事を楽しんだ。学校一の嫌われ者が、あくどい勘違い男に勝利し、真樹達はこれで安心して学校生活が送れるようになったのだった。
こんにちは。
真樹と裕也、やっと決着がつきました。
次のエピソードですが、10月に投稿しようと思っております。
よろしくお願いします。




