第304話 恐ろしき大和田家
こんにちわ。
7月最初の投稿です。
水戸大学に完全に経営移管された大谷津学院。それから平和になった学校では各部活動で新入生が入部し始めているのだが、それは3年時も引き続きクラスの学級委員長になった菅野美緒も同様だった。ある日の練習前、この日は新入生が入部してくる日であり、顧問の教師がそのことを美緒たちに伝えていた。
「みんな!今日から新入生も一緒に練習に参加します。さ、みんな入って自己紹介をして!」
「「「はーい!」」」
大体20人ほどの新入生が1列に並び、自己紹介していく。そして、新入生が自己紹介を終えると、顧問は美緒の事を紹介した。
「うん。じゃあ、紹介するわね。この子が今年度からうちのキャプテンを務めます、3年の菅野美緒さんです!」
「菅野美緒です!新入生の皆さん、ようこそバレー部へ!みんなと一緒に全国目指して頑張りたいと思います!分からないことがあれば、遠慮なく聞いてください!」
美緒がそう言うと、新入生たちは笑顔で話し始めた。
「菅野先輩よ!」
「噂に聞いてたけど、本当に美人!」
「それでいてバレーの技術も一級品。」
「しかもあの人気インフルエンサーのリオリオのお姉さんよ!」
「確かにそっくりだわ。」
美緒は高校バレー界ではすっかり有名人になっていた。因みに、あれから妹の莉緒の動画には定期的に出演を続けており、視聴者からも人気が出ている。美緒は少し恥じらいながら、新入生たちに言った。
「さ、練習始めましょ。まずは軽く準備体操して、それからパス練習よ。」
美緒がそう言うと、部員たちはてきぱきと準備して練習を始めたのだった。
-2時間後-
「今日はこれまで!お疲れ様!」
顧問がそう言ってこの日の練習が終わり、美緒たちはコートの片付け始めた。そんな中、新入部員たちは何やら楽しそうに話しながら片づけをしていた。
「3年の大和田先輩見た?」
「見た見た!超カッコいいよね!」
「私、ラブレター書いちゃおうかな?」
「あっ、ずるい!私も!」
新入部員たちは裕也の話で盛り上がっていた。そんな美緒は少し呆れた表情で独り言を言う。
「大和田君、案の定1年の女の子からも大人気ね。でも、ますます調子乗りそうで面倒臭きなりそうだわ。」
そんなこんなで部員たちは片づけを終えた後制服に着替え、それぞれ帰宅して行った。美緒も電車に乗って少しくたびれた様子で自宅に到着すると、母の麻子が迎えてくれた。
「お帰り、美緒。」
「ただいま。」
「夕ご飯、今日は餃子にしたから。」
「了解。早く食べたい。」
そう言って美緒は制服のまま食卓に着いて、夕飯を食べ始める。すると、先に食事を終えていた妹の莉緒が現れた。
「あ、お姉ちゃん帰ってたんだ。」
「ただいま、莉緒。」
そんないつも通りの姉妹の会話だったが、莉緒が突然こんなことを言い出した。
「そう言えば、お姉ちゃんの学校に大和田裕也ってすっごいイケメンな人いるでしょ?」
突然裕也の名前が莉緒から出てきて、不思議そうに思った美緒は一度箸を止める。
「いるけど、それがどうしたの?」
「いや、うちの学校でも結構噂になっててすごい人気なのよ。お姉ちゃんはどう思うのかなって?」
「いや、私あいつ嫌い。正直顔だけだから。あんなナルシストで自意識過剰で、気に入らないことあるとすぐキレる奴無理。」
「よかった。」
「何がよ?」
「私も前に友達から写真見せてもらったことあるけど、何か自分をひけらかす感じがして嫌な予感がした。お姉ちゃんがああいう人を彼氏にしたらどうしようって思って。」
「絶対に無理!死んでも嫌!」
「湯川さんみたいな人だったら、安心できるかも!」
「それはそれで…違った意味で面倒臭そう。」
そんな姉妹の会話が、夜の食卓に響き渡っていた。
一方ここは大和田家。
「うむ。食後に本を読みながら飲むウイスキーはやはりうまいな。」
大和田コンツェルンの総帥、大和田圭一郎氏は自宅内にある書斎で本を読みながらウイスキーをロックで楽しんでいた。そんな時、執事の山本が入ってきた。
「旦那様、ここにいらっしゃいましたか。」
「どうした、山本?」
「礼の件ですが、上手くいきました!」
「そ、それは本当か?」
「ええ。これでまたうちの利益が増えます。」
「そうか、よくやった。」
そんなふうに2人が話している所に、裕也がやって来た。
「親父!それと山本も、こんなところにいたのかよ。」
「裕也か。」
「坊ちゃん。どうされました?」
裕也は圭一郎の所に近づくと、手を合わせながら話し始めた。
「親父、お願い!俺、卒業したら慶凛大学に行きたいんだ!あそこなら名門で可愛い女の子もいっぱいいる!俺みたいに完璧な男が通うべき学校だけど、試験とか面倒くさくて…何とかならないか?」
慶凛大学は東京にある私立最高峰の大学だ。政治家や大企業の社長のほか、ミスコンテストも有名で女性アナウンサーのOGも多い。圭一郎は頷きながら言った。
「勿論いいだろう。うちが金を出せば大学は何でも言うことを聞く。私に任せてくれ!」
圭一郎は自信満々にそう答えた。その後、山本も頭を下げながら裕也に言った。
「坊ちゃん。来月発売の新作ゲーム機ですが、ソフトも含めて発売前日に手に入ることが決まりました。旦那様が向こうの社長に対し、色々口をきいてくれたおかげです。」
「やったー!最高だぜ、親父!やっぱり持つべきものはルックスと金と権力だな!」
裕也、もとい大和田家に手に入らないものはない。そう思わせるには十分すぎる家族の会話であった。
翌朝。湯川家。
「おはよう。」
そう言って真樹は食卓にやって来た。そこではすでに祖父の正三と祖母の多恵が朝食の準備を始めていた。
「真樹か。おはよう。」
「朝ごはん出来てるわよ。」
祖父母に言われ、食卓に着いた真樹は3人で朝のニュースを見ながら食事を始める。
『次のニュースです。きょう未明、静岡県下田市の海岸で、男性が頭から血を流して倒れているのが見つかり、病院に運ばれましたが、その後死亡しました。死亡したのは東京立川市に本社を置く家電メーカー、坂田工業の坂田次郎社長(60)。警察の調べでは、被害者は今日午前4:30頃、磯に釣りに来ていた男性に発見されたとの事です。上着のポケットには遺書と思われるものも見つかったことから、警察では自殺とみて捜査するとの事です。』
「嫌な世の中になったわねぇ。」
「全くだ。もう少し明るいニュースは無いのだろうか?」
そう話す多恵と正三。真樹は黙々と食事を終えると、制服に着替えて学校に行く準備をした。
「じゃあ、行ってきます。」
そう言って、いつも通りに家を出て駅に向かう真樹。しかし、頭の中ではこんなことを考えていた。
「理事長や校長と仲良かった大和田が、身売りされた後何もしてこないわけがない。そろそろ、アイツにも止めを刺しておかないとまずいことになりそうだな。」
上野と日暮里のお気に入りだった裕也が、二人とも追い出した自分に報復するのではないかと真樹は予想していた。そして、対立が深まる真樹と裕也は増々こじれていくのだった。
こんにちわ。
本エピソードに関してはVSじゃなく、VSイケメン的な内容なのはお許しください。
それではまた次回!




