表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode3 恐怖の体育祭
30/327

第29話 迫りくる危険

こんにちわ!

いきなりの雨にびっくりしてます!

「そう言う訳で、本日の会議は以上になります。皆さんお疲れ様でした。」

 この日の放課後、大谷津学院の会議室でミーティングが行われていた。その内容とは、体育祭実行委員が本番当日の流れや、各クラスの参加状況の確認などを行う物だった。本番間近なので実質最後の全体会議になったが、今回の会議も特に問題なく滞りなく進み、無事に終了した。その後、各クラスの実行委員たちが次々と教室を後にし、部活に向かったりそのまま帰宅したりしていた。しかし、そのどちらでもない者たちがいた。会議室を出た4人の女子生徒達が、会議室を出るなり1年C組の教室に入ってくる。

「お疲れー、待ってたわよ。」

「みんな、お待たせ!」

 教室内には数人の女子生徒達がいた。彼女達は後から入ってきた4人を待っていたようだった。入ってきた4人は適当に座るなり持っていた資料を広げる。

「えーっとね、これがタイムスケジュールで…あいつが出るのはここよ。」

 後から入ってきたうちの一人が資料に赤ペンで印をつけながらそう言った。実は資料を持っている4人の女子生徒達は1年の各クラスの体育祭実行委員だった。そして、教室で待っていた生徒達は彼女たちと仲がいい友人であり、アンチ湯川真樹だった。なんと彼女たちは、この体育祭を利用して真樹を潰そうと考えていた。初めは真樹が当日休んでくれる事を期待していたが、どうせなら本番で見せしめにして学校に来れなくしようと企んだ。実際1年女子のほぼ全員が真樹のアンチなので実行委員の4人が先導になり、他に集まった協力者とともに時々教室にて秘密会議を行っていたのだ。本当は次の週に体育祭のしおりが配られる予定なのだが、彼女達はそれを待たずにスケジュールを元に真樹を陥れる計画を立てていた。

「なるほどね…一発目で葬っちゃうか、それとも各種目でジワジワ痛めつけるか…。」

「どっちにしろあいつは1回で折れないし、失敗した時のことも考えて全種目で網を張っておいた方がいいと思うわ。」

「つまり、全て手を抜かずに徹底的にやるってことね。」

「とにかく、本番でシめるって決めた以上、あいつを地獄の底へ突き落すのよ!」

「まぁ、休んだら休んだで体育祭が平和になるからいいんじゃない?」

「そうだけどね。でも湯川がいる以上私達は楽しい学園生活が送れない!だから今の内に排除しなきゃだめよ!」

 女性陣の真樹に対する嫌悪感は計り知れない。体育祭が近づく中、真樹の身に対しても危険が迫っているのであった。


「ふう、今日の仕事はこんなものか。」

 一方こちらは職員室。真樹の担任である立石美咲は、その日の業務を終えて帰り支度をしようとしていた。普段の仕事に加えて体育祭に関する仕事も追加されているので忙しさを感じている立石だった。

「お疲れ様でした、お先に失礼します。」

「お疲れ様です、立石先生。」

 立石は荷物をまとめ、挨拶をして職員室を後にする。学校を出て、駅に向かいながら立石は様々なことを考えていた。

「体育祭、大丈夫かしら?」

 今立石が一番悩んでいるのはそのことだった。勿論仕事が増えて大変だということも含まれているが、一番の問題はその事ではなかった。

「はぁ、どうしてもギスギスしちゃうのよね。うちのクラス。」

 体育祭以前の問題だったが、本番が近付くにつれ、いつにも増してクラスの雰囲気が暗くなっているように立石は感じていた。その元凶はやっぱり真樹である。しかし、立石は真樹に手を焼くことはあっても一つ引っかかる事があった。

「とはいっても、湯川君から先制攻撃する事ってほとんど無いのよね。」

 真樹は常に女子生徒と険悪な雰囲気になっている。極度の女嫌いな上に口も悪い、性格も暗い、それで尚且つどの女子よりも成績がいいので余計にアンチを生むという悪循環があった。しかし、立石が覚えている限り、真樹と女子の喧嘩のほとんどが女子から因縁を吹っ掛けた物が多く、真樹の方から行動を起こしていることはほぼなかった。そもそも、女子と関わりたくない真樹が自ら話しかけることはないし、黙っていれば寡黙な優等生でもある。それでも女性から嫌われやすい要素を多く持っていることは否めないが。

「うちには気が強くてプライド高い女の子が多いせいかな?みんな湯川君の挑発に乗って大ゲンカに発展するのよね。菅野さんの時もそうだったし。」

 出場種目を決める時、真樹は空きがあればどこでもいいと言っていた。もしクールな性格の人間なら、「そう。じゃあここに入れとくわ。」とあっさり対処できるが、やはりそこは思春期。男女とも同年代の異性に対する意識に変化が現れる時期である上に感情のコントロールも難しくなる年頃である。特に進学校で女性社会的な空気がある大谷津学院で、男子が女子のプライドを傷つけるようなことをすれば、余計に目の敵にされやすい部分はあった。故に美緒は真樹に邪険に扱われて苛立ってしまったのだろう。

「なんか、嫌な予感がする。このまま無事で終るか不安になってきたわ。」

 裏で実行委員による真樹抹殺計画が動いていることは知らなかったが、立石は女の勘なのか、迫りくる危機を本能的に感じ取っていた。浮かない気分のまま、立石は駅へ向かい、帰りの電車に乗るのであった。


「ただいま。」

 真樹はいつものように自宅へ戻ってきた。予行演習の件もあって、その表情には苛立ちの様な物が垣間見える。暗い雰囲気を醸し出しながら、真樹は靴を脱いで玄関に上がり、家の中に入って行く。そんな真樹を出迎える人物がいた。

「真樹、おかえり。」

「遅かったね。」

 居間には二人の老夫婦がおり、真樹に声を掛ける。一人は湯川正一(しょういち)。真樹の祖父であり、かつてはタクシーの運転手をしていたが現在は定年退職している。もう一人は湯川多恵(たえ)。真樹の祖母で結婚後も事務の仕事を続けていたが、夫と同じくすでに定年退職している。

「体育祭だかなんだかで色々あってね。あー疲れた。」

「ご飯出来てるから食べなさい。」

「はーい。」

 多恵に言われた通り真樹はそのまま食卓に付き、正一と多恵と共に夕飯を口にする。現在、真樹は祖父母と3人で暮らしている。湯川夫妻は真樹の父方の祖父母であり、父親を亡くして一人になってしまった真樹を引き取って育てている。

「真樹、もうすぐ体育祭か。調子はどうだ?」

「正直言って全然楽しみじゃないし、不安だらけだけどやるだけやってみる。」

 正一の質問に真樹はそう答える。今度は多恵が真樹に声を掛けた。

「今の真樹なら大丈夫よ。だって、もうあの時とは全然違うから。」

 幼少期の運動会を二人は毎年見に来ていたのだが、当時運動が苦手だった真樹が公開処刑の如く苦しめられているのをずっと不憫に思っていた。しかし、痩せて運動ができるようになっているので今の真樹に関して二人はそれほど心配はしていない。

「まぁ、でも悪い思い出ばかりだから気分的には乗らないかな。」

「気にするな真樹。昔は昔、今は今だ。前を向いていけばきっといいことがあるぞ。」

 正一はそう優しく声を掛けた。確かに今の真樹は体育祭のモチベーションこそないものの、野球で鍛えた筋力には自信を持っている。ただ、今回真樹はどうしても頭から離れない不安要素があった。

(1年の体育祭実行委員は全員が女子だ。俺が出るとなればこのまま何もしてこない訳が無い。警戒しておこう。)

 やはり真樹の方も本能的に自身に迫る危機を察知していたのだった。

こんにちわ。

初めて真樹の自宅、そして家族が登場しました。

波乱の体育祭になりそうですが、果たして真樹は無事でいられるのか?

次回をお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ