第2話 メラメラ対抗心
こんばんわ!
今日は真樹たちが普段どんな学校生活をしているのかを書かせていただきます。
真樹と慶はいつもと同じように二人で登校してきた。ここ、大谷津学院には男子生徒よりも数多くの女子生徒が見受けられるが、これには訳がある。元々ここは大谷津女子高校という女子高であった。しかし、不景気や少子化の波には勝てず入学者は年々減少。OGの反対意見も多かったが学校存続のために5年前に男子生徒を受け入れて共学化した。つまり、真樹達は共学5期生という事なのだがそれでもやはり女子の方が多く、今年の在校生の内男子生徒は3割くらいしかいない。なので、良くも悪くも男子は目立ちやすいのだ。
「はぁ、今日も授業めんどくさいな。」
「ちゃんと勉強しないと将来痛い目に会うぞ、おニィ。」
「分かってるよ。分かってるけど、僕は真樹みたいに勉強得意じゃないし。」
「ここ…進学校だぞ、一応。」
「い、家から近かったし、受かると思ってなくてダメもとで入試受けたらうかっちゃったの!」
他愛も無い話をしながら真樹と慶は昇降口に着き、ローファーから上履きに履き替える。上の階にある教室を目指して階段に向かおうとした時だった。
「きゃー!」
「おはよー、大和田君!」
「一緒に教室いこー!」
女子生徒たちの黄色い声が廊下中に響き渡り、二人がその方向を見る。そこには背が高くて目がパッチリとしており、鼻筋が綺麗に通った男子生徒が大勢の女子生徒の囲まれながら登校してくるのが見えた。嬉しそうにはしゃぐ女子生徒に加えて、その男子生徒も楽しそうに笑顔を振りまいている。
「大和田君、相変わらずすごい人気だよね。サッカー部でイケメンで愛想もいい。天は二物も三物も与えちちゃたみたいだね。」
慶は男子生徒を見ながら真樹の横でそう言った。この男子生徒の名前は大和田裕也。真樹や慶と同じ一年生でサッカー部所属。そしてイケメンという事だけあって、女子が大半をしてているこの学校ではアイドル級の人気がある。
「何が楽しいんだろうね。俺だったら逃げるわ。」
「真樹。女嫌いなのは知ってるけど、露骨に毛嫌いせずにせめて事務的な対応取っても罰は当たらないと思うけど。」
「無理なもんは無理!とにかく教室行くぞ!」
顔を顰めながら慶と共に教室に向かう真樹。今日も長い一日が始まるのだ。
真樹たちが教室に着くと、既に大勢の生徒たちが教室で雑談に花咲かせていた。真樹が席に着くと一人の痩せ形の男子生徒が話しかけてくる。
「おっす、おはよう真樹!」
「おお、杜夫か。おはよう!」
「さっき大和田の奴が女子たちに囲まれてるの見たか?真樹。」
「ああ、見たけど。」
「羨ましい!夏休みの間に彼女欲しかったのに出会いが全然ない!なのにあいつは何もしなくても可愛い子たちが寄ってくる!不公平だ!」
「俺がお前と同じ立場だったらどれだけ幸せか。騒音公害が無くて静かな生活送れるのはありがたいだろ?」
「お前はすぐ女子の事を悪く言うよな。もう、男が女を好きになるのは自然なことなんだから少しは親切にしろよ。」
「無理。汚れる!」
真樹がバッサリと否定したのを見て杜夫と呼ばれた少年は唖然とする。彼の名前は公津杜夫。真樹のクラスメートで、角刈り、色白の肌、細長い目がトレードマークの少年だ。部活は写真部で、カメラに関しては結構うるさい。また、女子にはかなり興味を持っており彼女が欲しいと普段から言ってはいるものの、未だにできる気配はない。そうこうしている内にチャイムが鳴り、全員が席についてきたタイミングでドアが開いて一人の女性が入ってきた。
「おはようみんな。じゃあ、ホームルーム始めるわ。」
グレーのスーツを着込み、黒くて長い髪をポニーテールにしているどこか大人びた雰囲気の女性。彼女の名は立石美咲といい、国語を担当している28歳だ。また、真樹のクラス担任でもある。
「2学期から体育祭、文化祭と行事が多くて大変になるけど頑張っていこう!じゃあ、一時間目は古文だからこのまま始めるわ。皆、準備して。」
ホームルームが終わるとすぐに授業となったので皆教科書とノートを取り出す。そして全員が準備できた所で立石は言った。
「じゃあ、早速だけどこの前やった小テストを返すわ!」
「「ええ~!!」」
教室内からは不満の声が上がる。
「先生、この前の小テスト難しすぎるんですけど!」
「もっと簡単なのにして欲しかったです!」
二人の女子生徒がそう立石に文句を言う。
「そう言うこと言わないの!普段の授業を聞いていれば絶対出来る問題にしたつもりよ!それに、満点も出てるからね!じゃあ、返すわ!一人ずつ呼ぶから取りに来て!」
そう言って立石は生徒一人一人を呼び、テストを返却していく。
「鬼越さん!」
「はい!」
「もう少し頑張ろうね。」
「うう、僕古文苦手だなぁ。」
テストは50点満点だったのだが、慶は22点と半分に満たず、がっくりと項垂れる。
「公津君。」
「はーい!」
「…。後で職員室に来なさい。」
「え?うわぁ!!」
一方の杜夫はと言えばたった8点しか取れず、立石は鬼の形相で杜夫を睨みつけていた。その後も次々とテストは返却され、真樹の番になった。
「湯川君!」
「…はい。」
「おめでとう。唯一の満点よ。」
「そいつはどーも。」
満点だと言うのに真樹はあまり喜んでいるように見えなかった。それに対し、立石が苦言を述べる。
「相変わらず不愛想ね。嬉しくないの?」
「拍子抜けしてるだけですよ。満点取れて当然の内容ですから。」
真樹のその言葉に教室の空気が凍りつく。立石もカチンとしながらも何とか取り繕うとした。
「あ、あのねぇ。湯川君には簡単だったかもしれないけど、そうスカしてばかりいると株下がるわよ。もっと素直にしようよ!」
「素直ですか。まあ、僕と同点か上回る点数の女子がいないのは嬉しいですね。」
真樹はそれだけ言うと自分の席に戻っていった。そして女子からはヒソヒソと不満の声が上がった。
「何なのあいつ?」
「ウザいんだけど。」
「自分ができるからって…!」
そして、慶と杜夫も頭を抱えた。
(あちゃー、やっちゃった…。)
(ここまで女嫌いとか、重症だな。)
当の真樹の方は全く意に介していなかった。そして、心の中で呟いた。
(フフフ、言いたいだけ言えばいい。俺が全部なぎ倒してやるだけだけどな。)
わずかに不敵な笑みを浮かべる真樹は内に秘めた女子への対抗心を燃やしていたのだった。
こんばんわ!
今回は大和田君、公津君、立石先生の3人のキャラが初登場しました。
今後も新キャラ出していく予定です!
それではまた次回!