第298話 逆襲の準備
おはようございます。
今月最後の投稿です!
真樹、飯田、岩本、関屋、立石の5人は大谷津学院の買収に関する交渉の為、水戸大学を訪れていた。買収に関しては学長などから懐疑的な声が上がったものの、付属校の新設の件や、大谷津学院の今の惨状を知った水戸大の理事長は、放っておけないと買収に賛成。しかし、上野と日暮里が簡単に買収に同意するはずがないので、後はその二人を足元から崩すだけだった。
「「「「「ありがとうございました!」」」」」
交渉終えた真樹達は、声を揃えて深々と挨拶した後、水戸大学を出た。バス停で帰りにバスを待っている間、飯田が真樹に対して嬉しそうに言った。
「よかったね、湯川君。これで君の退学できなくする準備ができた。」
「はい。買収に同意してくれて何よりです。飯田さん、そして岩本さんも本当にありがとうございます。」
真樹は飯田と岩本に礼を言った。岩本も微笑みながら言った。
「いいんだよ。そもそも、生徒一人にここまで考えさせる理事長と校長が悪いんだし、身売りって判断は妥当だよ。それと、先生方。」
「はい。」
「何でしょう?」
岩本に言われて、立石と関屋が振り返る。岩本は少し真剣な表情になって言った。
「校長と理事長の、お二人に対して教育免許剥奪をちらつかせるのは完全に脅迫罪です。万が一、身売りに関してごねられた場合、証言を公にして刑事告訴する準備もできています。いいでしょうか?」
岩本の問いに対し、立石と関屋は頷きながら言った。
「はい、お願いします!もう、あの理事長と校長の言うことは信用できません!身売りできないなら、裁判でも何でもやります!」
「僕も、こんな理不尽な退学や教員免許剥奪が許される学校なんて御免です。一日も早く身売りしてもらいたい。」
立石も関屋も、上野と日暮里を完全に見限っていた。そして、真樹も覚悟を決めたようで、真剣な顔で言った。
「とにかく、身売りに同意してくれたのはよかったです。後は、あの独裁者二人を追い詰めるだけです!」
こうして、いい話を持ち帰ることが出来た5人は、ご機嫌な様子で水戸を後にしたのだった。
-月曜日-
「理事長。あれから何も動きがありませんね。」
日暮里が上野に対してそう言った。上野は表情を変えずに返事する。
「まあ、いいんじゃないでしょうか。彼の退学は覆りませんし、大人しくしているということは立石先生や関屋先生が厳しく指導したのでしょう。あの二人の教員免許剥奪だけは取り消しましょうか。」
学習塾から裏口入学の賄賂をもらい、経費でホストクラブの接待を繰り返しているにもかかわらず、上野はかなり呑気な様子でそう言った。校長は少しほっとした様子で続ける。
「でも、よかったです。やっと、湯川真樹という疫病神を学校から消し去ることが出来るんですから。」
「日本中の学校に圧力をかけて、湯川真樹をどこにも編入できないようにする根回しも準備しておきましょう。私たちに逆らった罰です。親もいない、最終学歴は高校中退、どこにも就職できずに生き地獄になる。ざまぁみろです。」
上野は真樹を退学にするだけでなく、別の学校に転校できないよう圧力を掛けようとしていた。しかし、この二人は逆に真樹達に追い詰められていることをまだ知らないでいた。
-同日 3年B組の教室-
「ビッグニュース!湯川真樹が退学になるかもだって!」
教室の真ん中で嬉しそうにそう言ったのは、学校1のイケメン生徒の大和田裕也だった。裕也は嬉しそうな表情で続ける。
「余計なことばかりしてついに理事長の逆鱗に触れたんだってさ。ざまぁみろだぜ!」
裕也の発言に教室の女子から歓喜の声が上がった。
「やったー!あの不愉快な奴がついにいなくなる!」
「湯川がいなくなるだけで、学校が楽しくなりそう。」
「あんな不愉快な奴、早く退学になって欲しい!」
「学校の男子は裕也君がいてくれたら十分。湯川はいらない!」
案の定、真樹の退学の噂を聞いた女子たちは喜んでいた。そして、裕也も笑いながら言った。
「湯川がいなくなって、ようやく楽しい学校生活が送れる!あのクズが退学になった後は、女の子全員を俺の軽井沢の別荘に招待して祝賀会やるからね!」
「やったー!」
「裕也君はサイコー!」
「クズ湯川とは何もかもが大違い!」
喜びに沸く裕也と3年女子たち。しかし、この歓喜が後に悲鳴に代わることを、彼らはまだ知らなかった。
その日の夜。
「さて…どうやってあの二人を追い詰めようか…。」
その日は何事もなく、大人しく過ごしていた真樹は家に帰ってからそのようなことを考えていた。夕飯と入浴を済ませて部屋でくつろいでいると、スマホに通知が来た。
「ん、なんだ?飯田さん…?」
それは飯田からメッセージが届いた。見てみるとそこにはカメラで撮られたと思う映像があった。映っていたのは、上野と日暮里、そしてもう一人別の女性がホストクラブと思しき場所でバカ騒ぎしている動画だった。映像を最後まで見終えた後で、飯田から電話が来た。
「もしもし、湯川君?」
「もしもし、飯田さん。映像見ましたよ。」
「うん。実は、職場の同僚にも協力してもらって、今日あの二人の内偵捜査をしたんだ。そして、ここにたどり着いた。見ての通り、大谷津学院理事長と校長は経費でホストクラブに頻繁に通うだけでなく、学習塾から賄賂をもらって大量の生徒を裏口入学させようとしていたんだ。」
そう、飯田は職場であるオリエント通信の女性同僚二人に協力してもらい、上野と日暮里に張り込んでいた。そして、それが功を奏してホストクラブへの潜入も上手く言ったのだった。
「クズだとは思ってましたけど、予想以上ですね。」
「うん。岩本にも見てもらったんだけど、これなら追放するには十分だって。早速映像を公開して、明日にはあの二人を追い出そう。」
「はい!何から何までありがとうございます!」
真樹は飯田に礼を言った後に電話を切った。こうして、大谷津学院を身売りするための準備が完全に整ったのだった。
おはようございます!
次回の投稿は6月に入ってからです!
あと、このエピソードももうすぐ終わります。
それではまた6月にお会いしましょう!




