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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode3 恐怖の体育祭
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第28話 不穏な動き?

こんばんわ!

今日は風が強い日でした。

 大谷津学院は今、体育祭を控えている。なので、体育の時間を使って本番の予行演習を行っているのだが、真樹はただでさえこういったイベント事が苦手なのに、予行演習とは言え女子と一緒に体育の時間を過ごさなければいけないのでとても不機嫌だった。そして、今。入場行進の練習が終わり、団体種目の大縄跳びの練習が始まった所だ。先程の入場行進で真樹達のA組は体育教師の上野にもう少し揃えるように指摘されてしまったが、大縄跳びはというと…。

「じゃあ、始めるからみんな縄の横に立って!」

「…。」

 そう声を掛けたのは縄を回す係の臼井という男子生徒だ。大谷津学院は元女子高なので女子の比率が非常に高い。しかし、長時間縄を回すには相当な腕の筋力が必要なので、よっぽどのことが無い限り男子生徒が縄を回すことになっている。因みにもう一人は真樹である。真樹が回す係になった理由は、女子が密集した空間に入りたくないと自ら立候補したからだ。勿論そんな理由を正直に話してしまった真樹は女子生徒達からは反感を買ったのだが、野球部に所属し腕力もあるということもあって、美緒がそのまま抜擢したのだった。真樹はまだ不機嫌な様子で縄を持ち、縄の横に立つクラスメートたちを仏頂面で見ている。

(ふぅ、面倒くさい。早く教室戻りたい。にしても、女子が密集するとうるせーな。教室でもそうだけど。)

 心の中でそう愚痴をこぼす真樹。確かに縄の横に立っている女子生徒達からは何やら話し声が聞こえてくるが、真樹にとってそれは不快感でしかなかった。正直な所、真樹としては体育祭を欠席したかったのだが、それを以前立石や美緒に話した所、身勝手な理由での欠席は許可できないと言われたことがあった。なので、自分がイライラしない範囲で体育祭に参加しようと思ったのだが、どうも真樹の思い通りにならなそうだ。そうこうしている内に、大縄跳びの練習が始まろうとしていた。

「みんな、練習だからって気を抜かないで。本番に向けて頑張って練習しよ!じゃあ、臼井君、湯川君、お願いね!」

 そうみんなに声を掛けたのは美緒だ。美緒はバレー部に所属していることもあって体力には自信があり、そこはスポーツウーマンの血が騒ぐのか競技では誰にも負けたくないようだ。生真面目な性格である彼女なので、足を引っ張りたくないと必死な部分もあるのだろう。そんな美緒の言葉を聞き、臼井と真樹は縄を回し始めた。

「「1,2,3…」」

 出だしは順調だった。真樹と臼井もしっかりと縄を回し、縄を飛ぶクラスメートたちも何とかついて来ていた。特に問題はなさそうだったが、やはり途中から突かれ始める生徒が出てきて、ジャンプにバラつきが生まれた。そして、15回目を飛ぼうとした時…。

「痛っ!」

 一人の女子生徒が縄に足を引っ掛け、失敗してしまった。布製とはいえ、縄はそれなりに頑丈にできているので、当たるとかなり痛かったようだ。

「大丈夫?」

「うん、私は平気。」

 美緒が心配して、女子生徒に声を掛ける。しかし一方で、他の女子生徒達はある方向へ怒りを向けていた。

「ちょっと、湯川君!」

「回すの速いんじゃない?」

「そうよ、もっと飛ぶ人のことも見てよ!」

 女子生徒達は真樹の方へ怒りの矛先を向けていた。真樹としてはあまり力を入れていなかったつもりだったが、他の生徒達には速く感じたようだった。真樹は軽く溜め息をつくと、対面で回す臼井に聞く。

「臼井、俺速かったか?」

「いや、俺は特にそう思ってないけど…もう少しゆっくり回すか。」

「分かった。」

 気を取り直して練習を再開するA組一同。今度は真樹と臼井は先程よりゆっくり回した。それに合わせて、クラスメートたちも必死でジャンプしていく。

「1,2,3…。」

 先程動揺、何なく縄を飛んで行くクラスメート。そして、先程失敗した15回目はクリアできた。しかし、20回目に差し掛かろうとした所でまたもや悲劇が…。

「きゃっ!」

 先程とは別の女子生徒が、縄に足を引っ掛けて転んでしまった。先程よりはできたとはいえ、またもやA組は失敗してしまった。そして、またもや…。

「湯川君!」

「やる気あんの?」

「ちゃんと回してよ!」

 やはり真樹が女子生徒から一斉攻撃を浴びてしまった。失敗したとはいえ先程より回数は伸びているし、真樹としては臼井と息ぴったりで回しているつもりだった。そして、先程よりもゆっくり回したのにここまで攻められると、真樹のイライラもだんだんと抑えられなくなってきていた。

「う…うるせぇ!俺はちゃんと回したぞ!何でもかんでも俺のせいにするんじゃねぇ!」

 普段から女子からの理不尽な悪口に慣れている真樹だが、ただでさえ不機嫌なのに女子生徒達の非難で余計に火が付いてしまった。先程の入場行進と同様に一触即発な空気になってしまったが、そこに見かねた慶が割って入る。

「もう!喧嘩している場合じゃないでしょ!それと、みんな真樹のせいにしているけど、いくらなんでも理不尽すぎるよ!真樹も臼井君もしっかり回してたし、人のせいにするよりも自分が次どうすれば失敗しないか考えようよ!」

 それを聞いた他の女子生徒達は一瞬黙り込んでしまった。そして、それを聞いた美緒も…。

「鬼越さんの言う通りよ!みんな、とにかく集中しましょう!今は回数よりも息を合わせて飛ぶことを覚えよう!」

 美緒の一言で女子生徒達は再び定位置に付き、練習を再開した。結局、何回か練習したもののA組の生徒達は20回以上飛ぶことはできず、この時間の練習は終了。

「よし、今日はここまでだ。みんな、本番までに怪我するなよ。」

 上野はA組とB組の生徒にそう警告をした後職員室へ戻って行き、生徒達も教室へ戻る。そんな中、慶が心配そうに真樹に声を掛ける。

「真樹、大丈夫だった?」

「何が?」

「さっきみんなから理不尽に文句言われてたでしょ?いくらなんでも言い過ぎだよね?」

「まあ、いつもの事だ。大体予想出来たけど。」

「でも…あれじゃあただ単に真樹が吊るし上げられているだけだよ。むしろ他の子たちが真樹に喧嘩売って雰囲気悪くしてるようにしか見えない!僕、流石に苛々したな。」

「まあ、俺は押しつけられた異質な部分もあるけどな。だが、気にすんな。本番終わった頃にはみんなケロっとしているから。」

 真樹はイライラはしていたものの、予行演習終了後には冷静さを取り戻していた。慶は真面目な性格故、友達の真樹が理不尽に非難されているのが耐えられなかったが、真樹は口が悪いながらも我を忘れない部分に関しては少し安心できる部分もあった。こうして、険悪な雰囲気がわずかに残ったまま、予行演習初日が終了したのだった。


 一方その頃…。

「くそっ、苛々する!」

「湯川め。あの程度じゃビクともしないか。」

「流石にそう簡単にはいかないわね。」

「全部なすりつける作戦は失敗ね。」

「でも大丈夫。また何かいい案があるから。湯川をとっちめるまで負けるわけにはいかないわ。」

 体育祭が近づく中、秘密裏に一部女子生徒の間で不穏な会話がされていた。

こんばんわ。

何やら不気味な雰囲気を残してしまいましたが、一体その正体は…?

次回をお楽しみに!

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