第281話 再見、陳沙崙
こんにちわ。
今月最後の投稿です。
真樹達大谷津学院は21世紀枠ながら春の甲子園に出場し、名だたる強豪校を次々と破って準々決勝まで進出した。そして、前年夏に対戦して勝利した京都の名門、洛陽高校と激突。先制点を奪い、粘りを見せた大谷津学院だがすぐに逆転を許し、超高校級エースである三条知明の前に最後のバッターである真樹が三振に倒れ、敗退してしまった。悔しさを隠せなかった大谷津学院だが、もうすぐ甲子園を去る日が近づいている。
試合が終わったその夜。野球部が宿泊しているホテルのホールの一室ではお疲れ様会が開かれることになった。壇上の前で、関屋が真樹達に対して話を始める。
「みんな、お疲れ様!今回負けてしまったことは俺もすごく悔しい!だが、歴史が浅く、強豪校の様な設備や人数もない中、甲子園ベスト8までこれたのはお前たちのおかげだ!本当にありがとう!心から感謝する!」
関屋の言葉に真樹達はうんうんと頷きながら拍手をする。関屋は更に言葉を続けた。
「俺からは以上だが、もう一人から言葉がある。陳、前に出てくれ。」
関屋にそう言われて、沙崙が壇上に上がった。彼女は一息置いてから話し始める。
「皆さん。本当にお疲れ様です。私も今日、とても悔しかったですが、1年間マネージャーを務められたことを誇りに思います。」
そう言ってからは沙崙は少し寂しそうな表情を浮べながら続ける。
「皆さんご存じの通り、今月で留学期間が終わり、台湾に帰らなくてはいけません。日本に来たばかりの頃は本当に色々あって辛かったですが、真樹が助けてくれてたお陰で、こうしてここに立って居られています!そして、野球部に招き入れてくれたこと、本当にありがたく思っております!台湾に帰ってからも、向こうで皆さんの事はずっと応援し続けます!これからも是非、頑張ってください!」
沙崙は力強くそう言って、深々とお辞儀をした。そして、再び関屋が口を開く。
「陳はもうすぐ帰国するが、俺達も帰国後の陳を応援しよう。とにかく今日はお疲れ様!たくさん食べて元気付けて、新学期迎えよう!乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
こうして、野球部のお疲れ様会が幕を開けた。ご飯や飲み物が沢山用意され、真樹達はおいしそうに食べ始める。沙崙の所に伸治と武司がやって来た。
「ありがとうよ、名マネージャー!さっきの言葉で元気出たぜ!」
「俺もだ!バッティングは自信出てきたんだ!夏は優勝するぞ!」
「伸治に武司もありがとう!伸治は一人であそこまで投げ抜いてくれてくれて、本当にすごいわ!でも、あまり無理はしないでね!武司も今日の初回、ナイスバッティングだったわ!最強の一番バッターになるのよ!」
沙崙は微笑みながらそう話した。真樹は近くで黙々と唐揚げと枝豆を食べていたが、伸治と武司が真樹の手を引いて沙崙の所に連れてくる。
「ほら、真樹も!」
「もうすぐ帰国のマネージャーに最後何か一言!」
2人にそう言われた真樹は、唐揚げを飲み込んでジュースを飲みほした後、話し始める。
「あの時、お前を助けられて本当に良かったと思うし、マネージャーになってくれて心から感謝している。台湾に帰ってからも元気でいてくれ。」
「私も真樹に感謝しているわ!国際科でいじめにあった時も助けてくれたばかりか、八広さんや金町先生たちも見事に成敗してくれて。こうして最後まで留学生活を送れたのは真樹のおかげよ謝謝!」
「俺は当然のことをしただけだ。」
「でも、おかげで助かったことには変わりはないわ。でも、真樹のあの型破りな作戦がもう見られなくなるのは、ちょっと寂しいかも。」
「好きでやっているわけじゃないし、見世物でもない。」
真樹はぶっきらぼうな様子でそう言った。その後、丈、千葉、登戸、幕張の後輩4人組が沙崙の所に挨拶に来た。
「陳先輩、留学お疲れさまでした!」
「野球部のために色々、本当にありがとうございました!」
「台湾帰ってからもお元気で!」
「また日本に来てください!」
原曲あいさつした後輩たちに、沙崙は一人一人に対し優しく声を掛ける。
「みんなありがとう。本郷君、これからも連取頑張って、あと宮下さんとも仲良くね!千葉君、あんまりゲームやり過ぎちゃだめよ。ほどほどにね。登戸君、練習に精を出すことは立派だけど、勉強をおろそかにしちゃだめよ。幕張君、ぷ手地大好きなのはいいけど、毎日食べ過ぎたら体壊すから気を付けて!」
「「「「はい!!!!」」」」
沙崙の優しいアドバイスに丈たちは元気よく返事をした。そして、もう一人彼女の所に近づいてきた。
「やぁ~、陳さん。それに湯川君たちもお疲れ様。」
そう言ったスーツ姿の男性は、オリエント通信のジャーナリストの飯田だった。このお疲れ様会ではいくつかの取材班が来ていたのだが、そのうちの一人が飯田だった。
「飯田さん。いえいえ、ありがとうございます!」
沙崙は笑顔で飯田に挨拶した。飯田は以前の事を思い出しながら話した。
「もう1年か。早いな~。あの時、真樹君が知らせてくれたおかげで君を助ける手立てが出来た。元気な陳さんをずっと取材できて、僕も嬉しいよ。湯川君も勇気を出して教えてくれてありがとうね。」
「俺はそんな大したことしてませんよ。あの馬鹿どもを地獄に突き落とすには俺だけじゃ無理だったんで、飯田さんに力を貸してもらいたかっただけですから。」
「いいんだよ。君はそうして、一人の命と留学生活を救ったんだから。誇りに思いなよ!」
謙遜する真樹に飯田は優しくそう言った。沙崙も飯田に感謝の意を述べる。
「飯田さんはその後も私たちを熱心に取材してくれて、本当にありがとうございます!」
「いいの、いいの。僕も大谷津学院の取材が一番楽しいし。台湾に帰ってからも元気でね!」
「はい、ありがとうございます!」
飯田と沙崙はお互い微笑みながらそう握手をした。こうして、楽しい雰囲気のまま時間は過ぎ、お疲れ様会はお開きになった。
こんにちわ。
番外エピソードはこれで最後です。
4月から本編新エピソードを投稿しますので、よろしくお願いします!




