第275話 糾弾しに行こう
こんにちわ。
このエピソードも終わりが近づいています。
大谷津学院3年生の木下希美の芸大入試が、何者かによって妨害される事案が発生してから数日が経過した。その後、写真部の杜夫と小林が怪しいと思っていた人物と、真樹が駅で目撃した撮影マナー違反の少女、実行犯の自白により、一連の黒幕は東成田高校の香取真奈という少女であることが分かった。しかし、当の本人は真樹達に尻尾を掴まれていることに気付かず、木下を更に貶めようと計画を企てていたのだった。
-AM9:00 都内のとある公園-
「フフフ~。前回はあの子が捕まってパーになったけど、今度こそあの地味女を貶めてやるわ。」
そう言って現れたのは、今回の事件の首謀者である自称人気JKブロガーの香取真奈である。彼女はわざわざ休日に東京まで出向き、スマホ片手に不敵な笑みを浮かべていた。
「今の世の中、写真は映えが全てよ。なのに、あんなつまんない写真で評価されて調子乗ってる木下も許せないし、頭の固い審査員も許さないわ。」
今の彼女はもはや、木下への逆恨み以外の感情を抱けなくなっていた。そんな彼女が訪れたのは、東京郊外にある広大な自然公園。2月になり、梅などの花が次々と咲き始めていた。彼女は他の客と共に公園に入園し、いつも通り映える写真を撮りの課と思いきや…。
「こんだけ花があれば、誰も気づいてないわよね。バレない、バレない!」
そう言って、花が咲いている梅の花を持っていたハサミで勝手に切り取り、切り取った枝と共に自撮りを始めた。勿論、花が咲いている枝を無断で切断するのは違反である。
「後でアイツの顔と合成して、アイツのせいにしちゃえ。そうすれば、どの美大もアイツの入学を認めないでしょ。」
彼女の作戦とはこうだ。自然公園にて、バレない様にこっそりとマナー違反を繰り返し、その時撮影した写真を木下の顔写真と合成して、彼女のせいにするつもりなのだ。もはや、何の為に撮影をしているのかも分からなくなっている彼女は、その後も水仙の花壇をわざと踏んだり、菜の花の上に寝そべる等、こっそりとマナー違反を繰り返しては自撮り写真を撮影していた。そして、パンジーとビオラのエリアにやって来た。
「さーてと、あんまり永いしたらまずいからここ撮ったら帰ろ!」
そう言って、作で仕切られている部分を乗り越えようとした時だった…。
「そこまでだ!香取真奈!」
「!!!」
突然自分の名前を呼ぶ男性の声に驚く香取。振り向くと、そこには自信と同年代位の少年が睨んでいるのが見えた。そう、真樹である。
「な、何よあんた!」
「俺の事はどうでもいい。佐倉駅でのイルミネーションに懲りず、ここでもマナー違反を繰り返すとは呆れたもんだ。」
「!!!見てたの?!女の子を盗み見とかサイテー、痴漢じゃん!」
真樹に対し、理不尽な暴言を吐く香取。しかし、それでも真樹は怯まない。
「何とでも言え。だが、お前には謝罪しなければいけない相手がいる。」
真樹がそう言うと、その背後から木下、杜夫、小林と写真部の面々が出てきた。
「!!…。木下希美…。大谷津学院の写真部が何でここに?!」
今まさに、自分が陥れようとした相手である木下が現れて驚く香取。そんな彼女に対し、先に怒ったのは杜夫である。
「おい、てめぇ!俺たちの先輩に対してよくもひでぇ事してくれたな!同じ写真家として恥ずかしくないのか!」
続いて小林も香取に対して厳しい言葉を投げかける。
「先輩はなぁ!誰よりも写真が好きで、今回の芸大入試も本気で取り組んでんだよ!そんな先輩の夢をぶっ壊すなんて、許さないぞ!」
杜夫と小林は声を荒げていたが、木下の方は低いトーンで話し始めた。
「ねぇ、香取さん。あなた、何でこんなことしたの?いくら何でも滅茶苦茶すぎるわ。映える写真撮るのはいいけど、人に迷惑をかけるのはさすがに違うんじゃない?ましてや、友達を使ってまで私の入試を邪魔するなんて。正直呆れてかける言葉もないわ。」
木下にそう言われると、香取は更に逆上した。
「うるさい、うるさい!私の写真は今の時代にあってる、キラキラした映える写真なの!なのに、何であんたみたいな地味女が撮るつまんない写真ばかりが評価されんのよ!だから、あんたの時代が終わって私の方が正しいってことを証明するつもりだったのに!」
あまりに滅茶苦茶な言い分に木下は言葉を失い、杜夫がまた怒り始める。
「おい!先輩の写真に対してよくも!お前がそんな終わってる性格だから、写真も評価されないんだよ!」
「待て、杜夫。一度落ち着け。」
真樹は一度杜夫を宥めると、一歩前に出て言った。
「言いたいことはそれだけか、香取?残念ながら、今回の作戦は失敗だ。お前の仲間が全部白状してくれたおかげで、俺たちはこうしてここにきて悪行を暴くことが出来た。写真を撮るのも今日で最後だ。」
真樹にそう言われたが、香取は鼻で笑いながら言った。
「フン!だから何?負け惜しみのつもり?今から私の写真と地味女の顔を合成して、ネットにアップしてやるから!ネット見た人はみーんなそいつがやったって信じるでしょうね!残念でした。」
香取にそう言われても、真樹は冷静に言った。
「残念ながら、そっちの負けは確定している…。ほら来た。」
そう言って駆けつけてきたのは公園管理事務所の職員と警備員だった。それを見て、香取は焦り始める。
「な、何よこれ…。」
「お前の悪行は全部杜夫達に撮影してもらった。そして、それを公園の管理事務所に見せた。警察もすぐに到着するだろう。」
真樹の言葉に続き、公園の職員たちが香取に詰め寄る。
「おい、あんた!よくも梅を勝手に切り取ったな!」
「水仙や菜の花も滅茶苦茶にしやがって!どうしてくれんだ!」
たじろぐ香取に警備員が近づき、連行する。
「さあ、来るんだ!」
「いやぁ!私は悪くない!」
こうして、香取は公園職員と警備員に管理事務所まで連行され、警察の到着を待つのであった。
「いやぁ、スカッとしたな。ざまぁねぇぜ!」
そう言ったのは杜夫だ。そんな彼に小林も同調する。
「ですよね。あれだけの事をしたんだから、罰は受けてもらわないと。」
一方の木下は少し複雑な顔をしていた。
「写真は、撮りたい物を撮ればそれでいいのに、あの子みたいに人を貶める道具として使われるのを見ると悲しくなるわ。私は、自分も他の人が見ても心に響く写真が撮りたいだけだったのに…。」
そんな彼女に対し、真樹は真顔で言う。
「自分の心がすさんだ時点でいい写真が取れなくなったってことです。つまり、もうアイツの写真は誰からも評価されんて訳です。」
かなり辛らつに言い放った真樹。そんな真樹に対し、杜夫が言った。
「真樹、せっかくここまで来たんだ。集合写真撮ろうぜ!」
「いや…俺はいい。」
「いいから、いいから!」
杜夫の強引に手を引っ張られ、4人は沢山咲いているパンジーとビオラをバックに集合写真を撮るのだった。
こんにちわ。
最近、自分的に話の進みが遅く感じたのでペースを上げて書きました。
この次のエピソードは、ただいま検討中です。
それではまた次回!




