第264話 委員長復活
こんばんわ。
今年最後の投稿です。
幼馴染の子安愛理の策略で、危うく命を落としかけた美緒だったが、真樹の大胆過ぎるともいえる作戦で救出され、無事に助かったのだった。その後、病院に運ばれてけがの手当てや衰弱した体を回復させるために1日だけ点滴治療を受けるために入院した。翌朝、身も心も完全回復した美緒は無事に退院し、自宅に戻った。
「はぁ~、助かった。」
家に着き、玄関に入った瞬間美緒は安心して体の力が抜けたかのようにリビングの椅子に座った。父の祐太郎はそんな長女の様子を見て微笑みながら言う。
「本当に無事に帰ってきてくれてよかった。今日はゆっくり休め。」
「うん、そうする。」
そして、母の麻子も優しい表情で美緒に話しかける。
「お母さんも嬉しいわ。今日は美緒の好きな物作ってあげるから。」
「本当?じゃあ、お好み焼きで!」
そんな様子を見て、莉緒も安心した様子で言う。
「もう…心配過ぎて何もかも手が付かなかったけど、これでいつも通りに過ごせるわね。また新しい動画も撮れるわ!」
「私探すために生配信してたくせに、よく言うわよ。」
鋭い突っ込みを掛けた美緒。とにもかくにも、菅野家に平和な日常が戻ったのは間違いない。
数日後。
「ねえ、愛理。何で私たち捕まったの?」
「もう、つまんない!ここのご飯不味いし!」
「あの、コスプレ野郎許さないわ!」
仲間たちと共に牢屋に入れられた愛理達。取り巻き達の愚痴に、愛理もイライラしていた。
「私もよ!あいつ、出所したらぶっ殺してやるんだから!」
そう話していると、看守が愛理の所にやって来た。
「子安愛理、面会だ。」
「はいはーい。面倒くさ…。」
看守に連れられ、渋々面会室へ向かう愛理。するとそこには二人の男女がいた。
「よお、誘拐犯。」
皮肉たっぷりにそう言った少年は、まぎれもなく真樹である。そして、その隣には…。
「これでやっとゆっくり話ができるわね。愛理ちゃん。」
美緒がいた。本来は真樹が愛理にホッパーフェイスの正体をばらし、嫌味を言うために一人で来るつもりだったのだが、美緒がどうしても同席させるように言ったため、二人で来たのだった。
「美緒ちゃんに…こ、この男は…?」
「爽快だったぜ。お前たちを直接ぶちのめす感覚は。」
真樹のその言葉で、愛理はようやくあの時のホッパーフェイスの正体が彼だったことに気付いた。
「その声…お前だったのね!お前のせいで…私達何もかもおしまいよ!出所したら覚悟しなさい!」
「残念だが、俺に裁かれる口実を作っちまったお前らが悪い。ま、その態度じゃ出所は当分無理だろうがな。」
「この…人でなし!悪魔が!」
真樹の挑発でさらにイライラする愛理に対し、美緒が言い放つ。
「いい加減にして!」
真樹も見たことがないくらいすごい剣幕だった。愛理だけでなく、真樹も一瞬驚く。険しい表情のまま、美緒は続けた。
「愛理ちゃんさぁ。確かにあんたは勉強も運動も苦手で先生によく怒られてたけど、少しでも何か改善しようって努力した?全部人のせいにして、自分はふんぞり返ってただけじゃない!」
「だ、だって…無理なものは無理だったし…。」
たじろぐ愛理に対し、美緒は更に続ける。
「昨日、あなたのご両親がうちに来たわ!」
「なっ!!!」
「2人とも、娘の心をいい方向に導けず、この様な事件を巻き起こしてしまって申し訳ないって言ってた。あんたが努力せず、自分は悪くないって考えを変えなかった結果がこれよ!周りのみんなに迷惑かけて、結局自分も捕まってる…。本末転倒じゃない!」
「う…そ、それは…。」
美緒に昨日愛理の両親が謝罪しに来たことを持ち出され、愛理はとうとう何も言えなくなってしまった。そして、美緒は最後に愛理へ言葉を送る。
「償いなさい。散々好き放題悪さしてきたんだから、その代償は払うべきよ。じゃあね!」
美緒はそれだけ言うと面会室を後にし、突き放された愛理は膝から崩れ落ちた後、看守に連れられて牢屋に戻ったのだった。
面会が終わった真樹と美緒は帰りながら二人で話していた。
「言いたいことは言えたのか?」
「ええ。まぁ、正直言えばこんな再会は望んでなかったけど。」
美緒の言うことは最もである。久々に会った同級生が犯罪者になっていれば、誰だっていい気分ではないだろう。
「だが、俺に叩きのめされた事は正解だっただろう。調子に乗る奴は、痛い目に遭わせるのが一番効く。」
「ちょっとやり過ぎだとは思ったけど、湯川君には感謝しているわ。」
そう話しながら、二人は岐路に着くのだった。
翌日。
「はーい。皆さんこんばんわ!リオリオチャンネルでーす!今日もよろしく!」
菅野家では、莉緒がいつものように投稿用の動画を撮影していた。しかし、今回の動画はいつもと違う。
「今日は特別ゲストに参加してもらいます!どうぞ!」
「皆さん初めまして。リオリオの姉、美緒です。妹がいつもお世話になっております!」
なんと、美緒がリオリオチャンネルに出演することになった。妹の動画にはあまり関心がなかった美緒だったが、自己紹介後に出演した理由を語った。
「この度、ニュースにもなった事件に巻き込まれ、家族や友人に沢山心配を掛けました。しかし、妹が視聴者の皆さんに呼びかけ、情報提供してくれたおかげで私は助かることが出来ました。そして、妹がこんなにも多くの人から慕われていることも知りました。情報提供してくれた皆様、本当にありがとうございました。この場を借りてお礼をさせて頂きます。」
莉緒が生配信して情報を提供してくれたことに、感謝の意を述べてお辞儀をする美緒。そんな美緒の横で、莉緒は笑顔で続く。
「とにかく、皆さんのおかげで姉は帰ってきました。私からも本当にありがとうございます!ほら、お姉ちゃん!折角の初出演なんだから、固い雰囲気を解して!ね、ね!」
そんな感じで動画撮影は最後まで平和な雰囲気で続けられた。投稿後、コメント欄には視聴者の温かいコメントが多数寄せられた。具体的には…。
『リオリオ、よかったね!』
『お姉さん、無事で何よりです!』
『リオリオそっくり!って言うか超美人じゃん!』
『ものすごい美女姉妹だ!』
といった感じだ。美緒がリオリオの美人過ぎる姉として、ファンが付き始めたのはまた別の話である。
更に日は経ち、舞台は山梨県。
「そこだ!」
そう叫んで美緒は思いきりスパイクを決めた。そう、現在美緒はバレーの大会に出場中である。完全復活して無事に帰ってきた美緒は、すぐに練習に復帰して大会に向けて急ピッチで調整をした。そして、コンディションも最高の状態で大会を迎え、今は決勝で地元山梨の強豪校と対戦中である。
「マッチポイント、これで決めるわ!」
そう言って美緒はサーブを打つ。相手と激しいラリーが続いたが、美緒は一瞬のスキを見逃さなかった。
「これで決まりよ!」
ネット付近から思いきり飛び上がった美緒はそこから止めの一撃を放った。相手もブロックを試みたが、速過ぎる美緒の球に追いつけず、美緒の決勝点が決まった!
「やった!優勝よー!」
美緒は目に嬉し涙を浮かべながら、ガッツポーズをした。先日散々な目に遭いながらも、自らの手で大谷津学院バレー部を優勝に導いたのである。
「みんなに…改めて感謝しないとね。」
天を見上げながらそう呟いた美緒。幼馴染と悲しい再会、死の一歩手前まで追い詰められたという心痛い出来事にも負けず、自らの強い意志でこれから彼女は前に進むのであった。
こんばんわ。
本エピソードが終わり、次は真章です。
次回の投稿は年明けになりますので、よろしくお願いいたします。
それでは皆さん、よいお年を!




