第260話 大ピンチだ!
こんにちは!
本エピソードもいよいよ佳境です!
幼馴染の子安愛理に誘拐された美緒は、体を縛られたまま車のトランクに詰められ、何処かに運ばれていた。そして、車が急停車したと思ったら突如トランクが開き、愛理が顔を覗かせて美緒の口の布を解いた。。
「美緒ちゃん、まだ生きてたんだ。まぁ、今死なれたら折角のお楽しみが台無しだからね。」
「何するつもりよ?」
楽しそうな表情の愛理に対し、美緒は怪訝な表情でそう言った。
「今にわかるわよ!さぁ、早くこの子を運び出すわよ!」
「「「アイアイサー!」」」
取り巻き達はそう返事をして、美緒をトランクから引っ張り出した。車から出された美緒の目に入って来たのは、意外な光景だった。
「ここは…?」
「どう、懐しいでしょ?」
愛理の言う通り、そこは美緒にとって思い出の場所でもある、東神奈川小学校。そう、二人の母校だ。
「話はまた後。さぁ、向こうに運んだ運んだー!」
愛理はそう言うと、取り巻きの少女たちに美緒を体育館まで運ばせた。体育館に運び込まれた美緒は再び椅子に座らされ、胴体をそこに縛り付けられる。
「じゃあ、みんな!準備よろしく!私は美緒ちゃんと話があるから!」
「分かった!」
「すぐに準備するわ!」
「いよいよお楽しみだー!」
愛理がそう言うと、取り巻き達は楽しそうに何処かへ出掛けていった。静まり返った体育館の中、二人きりになったタイミングで、愛理は美緒に話し始める。
「美緒ちゃんは千葉に引っ越してたから知らないけど、この学校去年から統廃合されて、校舎を移転したの。ここは残された旧校舎って訳。つまり誰もいない。」
「し…知らなかったけど、それが何だって言うのよ。」
愛理の言う通り、東神奈川小学校は少子化の影響で隣町の東神奈川第2小学校に吸収合併され、今はそちらが東神奈川小学校を名乗っている。旧校舎はまだ解体されずにそのまま残されており、半ば廃墟と化していた。
「どう?充実してた思い出の場所が無くなる気分は?」
「ど…どうしようもないとしか言えないじゃない。」
美緒は愛理が何を言いたいのか分からず、困惑しながらそう答えた。愛理は美緒を鼻で笑いながら話を続ける。
「そうやって、勉強も運動も人望も、何もかも恵まれて本当に良かったわねぇ!その裏で嫌な思いしている人がいる事も知らないで。」
「私のせいで愛理ちゃんが嫌な思いしてたって事?」
「今更気付いてももう遅いわ!学校でも家でも、皆美緒ちゃんを褒めてばかり!こっちは親にも学校にも見放されて、四面楚歌だったって言うのに!」
「それは愛理ちゃんが何の努力もせずに、学校の事サボり続けたのが悪いんでしょ!」
文武両道だった美緒に対し、愛理は授業も碌に聞かず、行事にも真面目に取り組んだことはなかった為、教師からは目を付けられ、両親からも呆れられていた。その事を棚に上げて、自身を貶された美緒は沸々と怒りが湧いてきた。しかし、愛理は相変わらず呑気そうに話を続ける。
「そうやって偉そうに説教垂れてればいいよ!私はあんたみたいに恵まれてる奴に痛い目にあわせて復讐してやろうと思った。あの子達も私と似たような境遇だから、すぐに打ち解けた。そして決めたわ!あんたみたいな充実してそうな奴を痛めつけてやろうと。」
「な…なんて事を…。」
あまりに身勝手な言い分で、美緒は絶句してしまった。愛理は愕然とした表情の美緒を見て、更に楽しそうに続ける。
「最後に美緒ちゃんを攫った理由を教えてあげる。美緒ちゃんの高校は去年甲子園出て、なおかつ千葉の中でも上位の進学校。そして美緒ちゃんはそこのバレー部のエースでチームも大会の優勝候補。相変わらず充実して腹立ったから、全部破壊してやろうと思ったの!」
「そ、そんな…。」
美緒は愛理にもう何も言葉をかけることが出来なくなっていた。どうしようもないと思ったその時、取り巻き達が戻ってきた。
「愛理ー!」
「ただいまー!」
「持ってきたよー!」
3人はそれぞれ何かを持っている。一人は何かが詰まった紙製の大きな袋。もう一人は鍬のような物。もう一人はバケツが入った水と大きな桶だ。
「お帰り!早速準備に取り掛かるわ!」
「「「ラジャー!」」」
そう言うと、取り巻き達は何かの準備を始める。まず袋を開けて、中に入っていた灰色の粉を桶に入れる。そして、粉に水を混ぜると、持っけきた鍬で掻き混ぜ始めた。
「な、何よこれ?」
「見ての通り、セメントよ!美緒ちゃんへのプレゼント!」
「嫌よ!こんな物要らない!」
「だーめ!拒否権はありませーん!」
セメントを見て、美緒は少しパニックになった。しかし、愛理達は手を休めることなく、セメントを混ぜ続けた。
(な、何よ…。何で私がここまでされなきゃいけないのよ…。)
美緒は心の中で泣きそうになりながら、絶望的な気持ちで目の前の光景を見届けるしかできなかった。
一方こちらは真樹達一同。昼休みに入って昼食中だが、楽しい雰囲気では無い。
「しかしなぁ…横浜にいるかもって言うけど、広いから分かんねぇよな。」
そうぼやいたのは杜夫だ。それには慶と沙崙も頷きながら言った。
「そうだよねぇ。しらみ潰しに探してたら手遅れになりそうだし…。」
「あともう少しで見つけられそうだけど、一体どうすれば…。」
がっくりとうなだれる3人。そんな時、伸治がある事に気づく。
「あれ、リオリオのコメント欄に新規のコメントが増えてるぞ…。東神奈川駅付近で、似たような車を見たってさ!」
それに呼応するかの様に、武司も何かを思い出した。
「そういえば、あいつ前に横浜の学校と試合した時に『東神奈川は昔住んでた所で懐しい』とか言ってたな。犯人があいつの昔馴染なら、地元で犯行ってのもおかしくない!」
その言葉を聞き、今度は真樹が口を開く。
「場所は9割絞れた。だが、確定では無い。最後にあいつの妹にも確認を取って、分かり次第カチ込みに行く!」
無表情だが、言葉に何処か力強さをを感じさせた真樹。美緒は万事休すだが、真樹達も確実に愛理に近づいていたのだった。
こんにちは!
このエピソードをどうやって終わらせるかとても悩みましたが、結末が見えてきたので執筆が捗りました!
次回もお楽しみに!




