第249話 菅野ファミリー
こんばんわ。
涼しくなったと思ったら、また暑くなりましたね。
バレー部の練習を終えた後、美緒は寒い夜道の下家に向かっていた。電車を乗り継いで、自宅の最寄り駅である西船橋駅に着いた後、10分ほど歩いて家に到着したのだった。
「ただいまー!」
ドアを開け、自宅に入ると母親である菅野麻子が迎えた。
「あ、美緒。お帰り!」
「お母さん。私、練習し過ぎてお腹減った。今日ご飯何?」
「私もさっき帰ってきたばかりでね。お父さんが今おでん作ってるわ。」
「やった!」
おでんと聞いて喜ぶ美緒。美緒の両親は共働きであり、夕飯は先に帰った方が作ると決めている。急いで部屋に荷物を置き、入浴を済ませた美緒はリビングに来た。
「お父さん、ただいま!」
「おお、美緒。お帰り!もうすぐおでん出来るからな!」
美緒の父、菅野祐太郎がおでんを作りながらそう微笑んだ。慣れた手つきでおでんを煮込む祐太郎と、配膳を進める麻子と美緒。そして、おでんが出来上がった所で美緒が両親に尋ねた。
「そういえば、莉緒は?」
「あの子なら、もう帰ってきてるけど。2階にいるはずよ。」
「いつものあれだろう。そろそろ降りてくるだろう。」
麻子、祐太郎夫妻はさらっとそう答えた。それを聞いた美緒は軽くため息をつきながら2階に上がっていき、自分の部屋の隣のドアの前に立つ。そして、そこをノックするものの反応はない。
「はぁ~。入るわよ!」
美緒はそう言って軽くドアを開ける。すると、そこには一人の少女が音楽を流しながら、スタンドで固定したスマートフォンの前で歌いながら踊っていた。
「はーい、今回もありがとう!チャンネル登録よろしくねー!また次回ー♡」
少女はそう言ってカメラを止めると、素早く編集をし、動画をアップする作業に入る。
「莉緒。お父さんがおでん作ったわよ!」
美緒のその言葉に少女は振り返りながら言った。
「あ、お姉ちゃん。帰ってたんだ。」
「いいから、早く!みんなあんたを待ってんのよ!」
「わ、分かったから。ここだけちょっと編集して…。」
作業を終えた莉緒という少女は、美緒と共にリビングに降りてきた。少女のフルネームは菅野莉緒。菅野家の次女で美緒の妹である。現在14歳の中学2年生で、春には3年に進級予定だ。姉妹というだけあって、顔立ちは非常に似ている。長女と次女が食卓に着いた所で菅野家の夕飯の時間になった。
「「「「頂きます!」」」」
4人が声を揃えて挨拶をし、食べ始める。そんな中、美緒が両親に言った。
「そうだ。お父さん、お母さん。私、今度山梨で大会だから期間中は家にいないから。」
「そうだったわね。早めに準備しておくのよ!」
「そうか。少し寂しいが、頑張ってこい!目指せ優勝だな!」
麻子と祐太郎は大会前の美緒を労ったが、妹の莉緒は違った。
「え~、いいな山梨!ねぇねぇ、お土産は放蕩か巨峰がいい!」
「もう、こっちは遊びに行くんじゃないわよ!」
美緒は莉緒に対しそう突っ込んだ。そして、両親も莉緒に対して言った。
「なぁ、莉緒。お前の趣味に文句言うつもりはないが、4月から3年だろ。受験もあるし、そろそろセーブした方がいいんじゃないか?」
「お父さんの言う通りよ。受験になったら、一度お休みして高校入ってからまたやればいいじゃない。」
実はこの莉緒、動画投稿が趣味でリオリオの名義で活動している現役中学生インフルエンサーなのである。動画の内容は「現役JC(女子中学生の略)が何でもやる」シリーズといって、流行りのお菓子を食べる、ゲームを実況するなど多岐に渡っている。因みに、この日撮っていたのは「現役JCが楽しく歌って踊ってみた」というタイトルで、人気アイドルの曲をダンスしながら歌うものだった。
「やーよ。私勉強嫌いだし、動画撮る方が楽しいし。高校は名前書いても入れるような場所があればそこでいいし。」
莉緒は美緒にそっくりの顔をしているが、性格は正反対である。几帳面で文武両道な美緒に対し、莉緒は大雑把な性格で、好きなこと以外には一切手を付けないタイプである。そんな莉緒を見て、美緒はこんにゃくを食べた後に、溜息交じりに言った。
「はぁ…。あんた、舐めてるとそのうち痛い目に遭うわよ。」
「お姉ちゃんは固すぎ!もっと派手に青春送ればいいのに!」
莉緒はそう言い返した。そんなこんなで菅野家は騒がしくとも平和な夕飯時を過ごしたのだった。
その頃真樹はというと、夜のニュース番組を見ていた。
「ん?なんだこれ?」
事件のニュースになった時、真樹は画面を注目した。そのニュースの内容はこうである。
『今日、午後5時頃、男子中学生が非行グループにより恐喝され、現金3000円を奪われるという事件が発生しました。現場は東京荒川区内の人気のない公園で、被害者の証言によると、犯人は4人組で、全員10代後半と思われる少女であるとの事。被害者との面識はなく、犯人の女たちは今尚逃走中で、警察では引き続き捜査に当たるとの事です。』
「はぁ~あ。最近馬鹿な女ばっかりでウンザリするぜ。もし俺に同じ事したら、全員地獄に送ってやる。」
報道内容に対し、物騒なことを言う真樹。これから新たな事件が起こることも知らずに…。
こんばんわ。
今月は中々投稿できなくてごめんなさい!
もうすぐ9月も終わりですが、次回もお楽しみに。




