第24話 真樹の気持ち
こんにちわ!
今回は閑話休題です。
真樹たちの活躍により、自身の可愛さに鼻を掛けて気に入らない人間を悪者にしていた押上美紅を停学に追い込むことができた。それから3日後、まだ美紅が停学中なので隣のクラスのB組は幾分静かな印象を受けた。
「押上さんが来なくなって随分変わったね。」
「ああ。いい事だ。」
放課後。ホームルームを終えた時に教室内で杜夫が呟いと事に対し、真樹がそう誇らしげに答えた。杜夫は美紅に嫌われており、何度か濡れ衣を着せられた上に怪我まで負わされている。
「何で俺って女の子から好かれないんだろう?」
「悩むことか、それ?あんなのに好かれて嬉しい奴なんていないぞ。」
杜夫は成績が悪く、女子からもモテない。しかし、年相応に異性には興味があるのでもう少し女子からの好感度を上げたいと思っていた。しかし、入学して半年たった今も浮いた話などは一切ない。
「でもさ、やっぱり学園ドラマ見たいに男女で仲良くして楽しい学校生活に憧れるな。」
「ドラマの見過ぎだ。」
「真樹、お前が女子を恨んでいる気持ちは分かるけど、もう少し女性に心開いてもいいんじゃないか?俺だったらこんなピリピリした状況耐えられないぜ。」
相変わらず女子に悪いイメージしか持たない真樹に杜夫は溜め息交じりでそう答えた。ちなみに、美紅が停学になったニュースにB組の生徒達が驚いたのは言うまでもなく、裕也を含む押上派の生徒達からは停学を取り消すように求める声も上がった。しかし、真樹達が捨て身で掴んだ決定的な証拠がある以上、学校の対応として取り消すことは不可能である。
「勝手にピリピリしているのは向こうだ。でも俺は今まで通り普通に過ごす。それだけだ。」
真樹はそれだけ言うと、荷物をまとめて教室を出ようとする。水曜日なので野球部の活動日だからだ。写真部の活動が無い杜夫とはここで別れて、真樹はグラウンドへ向かって行ったのだった。
「「ありがとうございました!」」
「お疲れ様!気をつけて帰れよ!」
この日も野球部の練習は何事もなく終わった。真樹達野球部員たちはグラウンド整備を終え、着替えを済ませて帰宅する。そして、駅へたどり着きホームで電車を待っている時に真樹の携帯電話が鳴った。
「ん、何だ?」
画面を見て見ると、相手はこの間美紅を追い詰める作戦に協力してくれた桜木修二からだった。真樹は首をかしげながらも電話に出る。
「もしもし?」
「もしもし真樹。今大丈夫?」
「うん、いいよ。」
あの作戦から二人は意気投合し、名前で呼び合う仲にまでなっている。そして、修二は話を続けた。
「この間は感謝してるぜ。ありがとう。」
「お礼を言うのはこっちだ。お陰で奴を停学に追い込むことができた。」
「そうか。これであいつも懲りて真人間になってくれるといいんだけどな。あ、そうだ、お前と話したい奴がいるから今替わるわ。」
そう言って修二は誰かに電話を替わろうとした。最初真樹は修二の友人で今回の作戦に協力してくれた一人の飯山満だと思っていたが、予想は外れた。
「もしもし、湯川君?」
「もしもし…えーっとどちら様ですか?」
出たのは女性の声だった。真樹は一瞬顔をしかめ、相手が何者なのか尋ねた。
「私よ。塚田愛。もう忘れちゃったんですか。」
「ごめんなさい、忘れてました。」
相手は修二の彼女で、美紅からの最大の被害者である塚田愛だった。愛も今回の作戦に参加していたが、女性のことはどうでもよいと思っている真樹は忘れているようだった。
「まあいいわ。私、中学の時押上さんに勝手に逆恨みされて、取り巻きからもずーっと虐められて、鬱病で不登校に追い込まれたの。結局耐えられなくて転校しちゃったけど、いつか罰が当たればいいのにって思ってた。そして湯川君が鉄槌をお見舞いしてくれた。ありがとう。」
「いいよ、そんなこと。俺だってあいつ嫌いだったし。それと、二人に怪我がなくてよかった。」
作戦実行中、逆上した美紅は石を真樹達に投げてきただけでなく、太く長い枝を使って修二と愛に殴りかかってきた。しかし、真樹と慶が体を張って止めたおかげで二人とも助かったのだった。
「あの時は怖かったけど、二人のお陰よ。感謝するわ。」
「別にもういいよ。済んだ事だし。」
愛に対して、相変わらず素っ気ない返事をする真樹。今回、美紅を成敗するにはどうしても愛の力が必要だったので協力を要請したが、根本的に女嫌いの真樹は作戦が終わったらできればあまりかかわりたくないと思っていた。それでも、感謝の気持ちは抱いている。
「ふぅ、相変わらず不愛想ね。でも恨みは晴らせたわ。何度も言って申し訳ないかもだけど、ありがとう。」
「どういたしまして。」
「それと、恨みが無い女性にはもう少し優しくしようね。じゃあ、替わるね。」
それだけ言って愛は再び修二に電話を替わった。
「真樹。俺の彼女の恨みを晴らしてくれてありがとな。」
「いいの、いいの。当然の事をしたまでだから。」
「満もスカッとしたって言ってたぞ!今度お礼にハンバーガー奢るわ!鬼越さんにもありがとうって伝えておいてくれ!」
「分かった。じゃあね!」
「おう!」
そう言って真樹は電話を切った。この時真樹は、謎の違和感を覚えていた。先程愛は恨みを晴らしてくれた真樹に感謝の気持ちを述べていたが、真樹自身、今まで女性から感謝されたことが無かった。小さい頃は、女子の落とし物を拾って渡そうとしても「お前に触られたらもう使えない、弁償しろ!」と責められ、消しゴムを忘れた隣の席の女子生徒に貸そうとしても「お前の消しゴムなんて使いたくない!」と文句を言われた。こういう目に遭い続けた結果、真樹は女性に親切にすることをやめたのだった。なので、慶以外の女性から初めて感謝の言葉を言われたことが理解できないでいたのだった。
「うーん…よく分からんな。まぁ、何もないならいいか。平和も戻ったし。」
頭の中がこんがらがりながらも、真樹はホームに入線してきた電車に乗り、自宅を目指すのだった。
こんにちわ。
平和が戻ってよかったですね。
次回、新たなる刺客が登場予定です!
お楽しみに!




