第242話 増幅する恨み
こんにちわ。
天気が不安定で、洗濯が大変ですね。
ここは都内のとあるアパート。そこの一室で一人の女性が険しい表情で何やらブツブツと文句を言っていた。
「くそっ!顔をみられたのは失敗だった。」
そう文句を言った女性。それこそ連日立石に嫌がらせをしていた犯人だった。
「あいつが…アイツさえいなければ今頃私は…。」
犯人は案の定、立石へ相当恨みを持っている様だった。そして、どこかからか撮影した立石の写真を取り出し、ハサミでバラバラに切り刻む。
「もう直接対決よ!二度と教師なんて仕事できなくしてやる。」
女性はそう恨み節を吐き続けたのだった。
翌日。大谷津学院職員室にて。
「おはようございます。」
立石はいつも通り出勤し、授業の準備を始める。しかし、まだ疑念を払うことはできなかった。
(似てるけど…本当に秋山さんかしら?だとしたら、まだあのことを恨んでいるのね。)
そう心の中で呟いた立石の所に、来客が現れる。
「失礼します。あ、先生いた!」
そう言って職員室に来たのは美緒だった。
「おはよう、菅野さん。どうしたの朝から?」
「先生、昨日ニュースで犯人の似顔絵見ました!あいつ誰なんですか?心当たりあるなら教えてください。」
美緒にそう言われて、立石は戸惑いながら言った。
「あることはあるけど…まだ確証が持てないの。それに、これ以上他の人を巻き込みたくないから、ここでは話せないわ。」
「そんなの困ります!私、そいつに催涙スプレーかけられたんですよ!このまま黙って見ていろって言うんですか?」
美緒の剣幕に立石は困った顔を浮かべたが、仕方ないと諦めたように言った。
「分かったわ。ちょっとこっちに来なさい。」
そして、立石は美緒を連れて職員室の隣にある倉庫に来た。そして、昨日思い出したこともすべて話した。
「これが今までわかっていることの全て。後は犯人が捕まるまで分からないわ。」
「分かりました。万引き捕まった腹いせってことでいいんですね。」
「多分…。」
「先生も気を付けて下さい。でも私は、あの犯人を許してませんから。」
こうして二人の話は終わり、立石は職員室へ。美緒は教室に戻ろうと廊下を出たのだが。
「予想通りだな。」
背後から声がした。美緒が振り返ると、そこには真樹がいた。
「湯川君、聞いてたの?」
「昨日ニュースで犯人の似顔絵が公表されたからな。先生に聞きに来ると思ったぜ。」
「だって、顔にスプレーかけられたまま泣き寝入りなんて出来るわけないじゃない。先生に嫌がらせをするのも許せないし。」
「気持ちは分かるが、今お前が熱くなっても仕方ない。俺にも考えがある。」
「何よ、それ?」
「今はまだ秘密だ。」
真樹はそれだけ言うと、美緒より先に教室に入っていった。
その日の正午。
「じゃあ、今日はここまで。お疲れ様。」
4限目の数学の授業が終わり、教鞭を取っていた関屋はそう言って教室を後にしようとしていたのだが…。
「先生。」
「ん、どうした湯川?」
真樹が関屋に話しかける。
「部の事でお願いしたいことがあって。」
「いいぞ。何でも言ってくれ。」
真樹は真面目な顔で関屋に話の続きをした。
「週末に練習試合したいんですが。」
「練習試合か。そう言えば関東大会終わってから、あんまり試合してないな。分かった。」
「で、相手なんですが…。新小岩高校でお願いします。」
「新小岩か。また随分強い所だな。」
「お互い春の選抜の出場条件は満たしていますし、もしもの為にある程度強い所とやった方がいいと思ったんですが。」
「それもそうだな。よし、俺が申し込んでくるから。後は任せてくれ。」
「ありがとうございます。」
そう言って関屋は職員室に向かい、真樹は教室に戻ろうとしたが。
「おう真樹。」
「先生と何話してたんだ?」
武司と伸治が話しかけてきた。真樹は二人に向き直って言った。
「大したことじゃない。東京の新小岩高校と練習試合がしたいって言っただけだ。」
「新小岩?練習試合はいいとして、そんな強い所とやって大丈夫なのかよ?」
武司は首を傾げながらそう言った。真樹は真顔で続ける。
「そろそろセンバツの出場校発表も近いし、強い所とやった方が身が入るだろ。」
「それもそうだな。他校相手に投げるの久々だし、楽しみかも。」
伸治は投げ真似をしながらそう言った。そして真樹は本当の事を話す。
「っていうのは表向きだ。もう一つ別の目的がある。」
「そうなのか?」
「何だよ、その目的って?」
驚く伸治と武司に真樹は真剣な表情で言った。
「立石先生に嫌がらせをしている犯人を捕まえられるかもしれないんだ。そのヒントが新小岩高校にある。一か八かだが、分かってくれ。」
真樹はそれだけ言うと、席に着いて昼食の時間を過ごしたのだった。
こんにちわ。
真樹の考えとは一体何なのでしょうか?
次回もお楽しみに!




