第236話 元気のない立石
こんにちわ。
まだ暑くなりましたね。
真樹の担任、立石美咲は今悩んでいた。身に覚えのない事で自宅に嫌がらせをされ、本人も訳が分からずに気分が沈んでままである。しかし、彼女はそんな状況でも泣き言ひとつ言わずに出勤し、この日も教鞭をとっていた。
「え~。この部分に置いて、筆者が一番皆さんに伝えたいのは…。」
立石は今、2年B組の教室で現代文の授業をしていた。平静を装っているものの、やはり声には元気がなく、授業を受けていた武史と伸治も心配そうな表情で呟いている。
「なぁ、伸治。立石先生やばくね。」
「ああ。でも、仕方ないっしょ。家があんなことになれば…。」
「だよなぁ。にしてもいったい誰がそんな悪戯を…。」
「後で真樹にも聞いてみようぜ。」
小さい声でヒソヒソと話す武史と伸治の声を、立石の耳が拾った。
「前原君、中山君。」
ビクッと肩をすくめる二人。
「先生の心配はありがたいけど、今は授業に集中しようね。」
「「す、すみませんでした。」」
ユニゾンで謝った二人。それでも、やはり立石の元気のなさは心配になってくるレベルであった。
その後の休み時間。職員室にて。
「失礼します。」
大きな声で生徒が一人入ってきた。そして、早歩きで立石の所に向かった。
「あ、あら。菅野さん。どうしたの?」
入ってきたのは美緒だった。美緒は真面目な顔で立石に問う。
「先生。ニュース見ました。本当に大丈夫なんですか?」
「う、うん。正直言えばびっくりして頭追いついてないけど、あとは大丈夫よ。」
「その割に、先生の表情がいつもより暗いですが。」
「そ、そう…。でもね、社会人ってそんな時でも出勤しなければいけないのよ。」
「学級委員長としても個人的にも、元気がない先生を見るのは辛いです。辛くなったら私たちにも話してください。」
「あ、ありがとう。でも、警察も動いているから心配しないで。」
「分かりました。失礼しました。」
そう言って美緒は職員室を出て行った。立石は表情を曇らせながらつぶやいた。
「はぁ、生徒にまで心配かけちゃって…。私、だめね。」
そう言いながらも立石は次の授業に向かった。
午前の授業が終わり、昼休みになった。そして、A組の教室内には真樹、慶、杜夫、美緒、武史、伸治、沙倫といったいつもの面々が集まり、話をしていたが内容の中心はやはり立石の事である。
「立石先生はやはり元気がない。やはり、ニュースでやってた事件の影響だろう。」
真樹の言葉に慶も頷く。
「ホント!酷いよね!あんないい先生なのに、誰がこんな嫌がらせしたんだろう?僕なら、犯人を地獄の底まで追いかけていくな。」
杜夫も難しい表情をしている。
「共、いったい本当に誰なんだろうな?先生の事恨んでそうな人。」
杜夫の言葉に沙倫が答える。
「元カレ、とかかな?気付いてほしくて意地悪したとか。別れたけど、未練タラタラて感じの奴?」
沙倫の言葉に真樹と慶が首を振りながら言った。
「多分、それは無いな。ヨリを戻したければ、ヨイショする言葉を掛けるなり、直接現れたりするだろう。今回みたいなことしても意味がない。」
「それは僕も同感。だって、恨みつらみの手紙よこしてたし、警察沙汰になってるからね。だら高氏らにけど、先生の事恨んでいる人がいるのは間違いないかも。」
そう話しているうちに、武史、伸治、美緒も口開く。
「なんか、先生悲しそうだったな。授業中も声の通り悪かったし。」
「ああ、あんなに沈んでる立石先生初めて見たぜ。」
「私もさっき、職員室行って話したけど、なんか無理して元気出してるような気がした。やっぱり心配だわ。」
やはり、みんな立石の事は心配していたのだった。その後、沙倫は暗い表情で話す。
「本当に、もう大丈夫なのよね。これ以上事態がエスカレートするとか、無いよね?」
その言葉に、真樹も表情を曇らせる。
「問題はそこだな。犯人逮捕までに、立石先生に人的被害が出ないことを祈るしかない。」
そんな感じで話していると、チャイムが鳴り午後の授業の時間になった。
こんにちわ。
前みたいに週1ペースで登校できたらいいのですが、今はそれも難しくて申し訳ないです。
次回もよろしくお願いします。




