第230話 食事はみんなで楽しく!
こんばんわ!
今月最後の投稿です!
大野花子の食い尽くし事案は、真樹の策略によって実質終わりを迎えた。そして、年が明けて三箇日も過ぎ、新年最初の野球部の練習中に、グラウンドに誰かやって来たのだが…。
「おい、真樹。あれ見ろよ。」
真樹とキャッチボールをしていた伸治がそう言った。真樹も同じ方向を見る。
「大野か?隣にいる二人はどうも両親っぽいな。」
真樹の言う通り、大野が両親に連れられてグラウンドの方へ歩いてきた。そして、大野の父親と思しき男性が、大きな声で言った。
「ごめん下さい!」
その声を聴いた野球部一同は一斉にその方向を見る。声の方向には少し不貞腐れている大野と、申し訳なさそうにしている大野の両親が立っていた。武司と沙倫は首を傾げながら言う。
「なんだ、大野と…親?がきたぞ。」
「なんか良く分からないけど…話だけでも聞きましょうか。」
他の部員たちや関屋も練習を中断し、大野一家のもとに集まる。皆が集まった所で、大野の両親が深々と頭を下げながら言った。
「こ、この度は娘が大変申し訳ございませんでした!今まで迷惑をかけていることに気付かなかった私たちの責任です!なんてお詫びしたらよいか…。」
「今まで、たくさん食べてくれるのが嬉しくて、つい色々与えてしまいました!小学校の時も給食でトラブルになりましたが、高校生になっても悪食が直らなかったなんて…。」
「おい、花子!お前が迷惑掛けたんだぞ!謝りなさい!」
「今まで甘やかしていた私たちのせいよ…。花子、ほら!」
両親に謝罪を促されたが、大野はまだ納得いっていない様だった。
「でも…私悪くないもん!」
大野はまだ謝ろうとしない。そんな態度に1年生部員の丈、登戸、千葉、幕張が非難の声を上げる。
「いや、どう見てもお前が悪いから。」
「俺の誕生日ケーキどうしてくれたか忘れたのか!」
「ご両親が可哀想だよ。」
「もう言い訳できないぞ。」
そこまで言われても、大野はまだ仏頂面をかましていた。それには武司と伸治も呆れ声で言い放つ。
「お前さぁ…沢山食うのはいいけど、人の勝手に食うなよ。」
「ホントそれ。挙句の果てに自分の嫌いな物見つけると、キレて掴みかかるのは無いわ。」
「だ、だって…美味しい物を見ると反射的に手が出ちゃうんですもん!」
大野はまだ謝罪の言葉を発しようとしなかった。そして、顧問の関屋が少し険しい表情で大野に言う。
「大野さん。前に言ったよね。これ以上酷くなるなら、教師として然るべき対応するって。君がそんな態度なら、僕もそれ相応の処分を考えないといけないな。」
「そ、そんな…ただ食べたかっただけなのに…。」
処分と聞いて大野は急に動揺しだした。最後に真樹が止めの一言を告げる。
「大野、諦めろ。お前が食い尽くす動画が炎上した影響で、今までの食い尽くしも全部明るみに出た。もし、コメントを少しでも読んだらどっちが悪いかなんて一目瞭然だろ?観念するんだな、食い尽くし怪獣め。」
真樹の言葉に大野は顔を真っ青にしてボソボソ何か言っている。
「わ、私が悪かったの…?」
野球部員たちや、ネットでのコメントの反応を見て、大野はようやく自分が悪いことに気付けたようだ。そして、逃げ場がなくなった大野は震えながら頭を下げて言った。
「ご、ごめんなさい…。今まですみませんでした…。」
謝罪した大野に、関屋が代表していった。
「とりあえず、これが反省するラストチャンスだからな。あとは、親御さん。お願いします!」
「は、はい!」
「私たちが責任をもって更生させます!」
そう言って、両親は大野を引き連れてグラウンドを後にした。それを見送った関屋が部員たちに声を掛ける。
「さぁ、練習再開だ!みんな、行くぞ。」
そう言われて、真樹達は練習の続きに入ろうとした。その時沙倫が真樹に声を掛ける。
「大野さん、更生できると思う?なかなか謝ろうとしなかったけど。」
「本人次第だな。まぁ、仮にあのまま食べ続けても、お先は見えているがな。」
真顔でそう言い切った真樹。その後、大野一家は宮下や津田ら1年女子たちや、美緒の家にも行き、謝罪に回ったのだった。
そして、始業式の前日。大野にさらなる悲劇が待ち受けていた。
「ヤダ、ヤダ!入院なんて嫌!」
「今まで好き放題食べさせすぎた。遅いかもしれないが、食育しなきゃな。」
「花子、大人しくしなさい!先生、よろしくお願いします!」
駄々をこねる大野を両親が諭していた。ここは千葉県内の総合病院である。両親は健康面の心配と、大野の食い尽くしは精神的な物にあるのではないかと考え、検査も兼ねて1か月入院させることにしたのだった。
「分かりました。じゃあ、まずは検査するから行こうか。大野さん。」
「いやぁぁ!」
医者は駄々をこねる大野を何とかメディカルルームに連れていき、血液検査や面談などを実施したのだが…。
「ふぅ…。大野さん。今まで何をどれくらい食べたのか知らないけど、体内物質の数値がどれも異常だよ。」
「そんな訳がない!私、どこも具合悪くないわ!」
「そうは言っても検査の結果は誤魔化せないからねぇ。それに、この状態のままだと間違いなく寿命は縮むし、普通の生活できるかも怪しくなるよ。」
「脅しなんか通用しません!」
「脅しじゃない、現実だよ。それと、さっきの面談やこの前炎上したっていう動画の件も考慮すると、精神療法と食事改善の両方が必要だね。君は入院は嫌かもしれないが、こんな結果を見れば僕も君の両親の味方をするよ。」
「う、うぅ…。」
医者にそこまで言われて、ようやく大人しくなった大野だった。そして、その後も…。
「何よ、このご飯。味薄いわ!醤油とマヨネーズ頂戴!あと、フライドチキンもお願いしま~す!」
「ある訳ないでしょ!」
「君、食事療法って何のことか知ってる?」
野菜だらけで味が薄い病院の食事に大野は文句をつけていたのだが、今度は看護師と栄養士に厳しいことを言われていた。
「うえーん!こんなのもういやぁ!!」
その後も、毎日悲鳴を上げながら大野の治療は続いたのだった。
そして、始業式の日。真樹は慶や美緒、杜夫と大野の顛末について話していた。
「大野は病院にぶち込まれたぞ。よかったな、もう飯を横取りする奴はいない!」
真樹の言葉を聞いた慶と美緒は、笑いながら言った。
「ハハハ、まぁ暫く頭冷やすべきだと思うよ。」
「本当ね。逆に、あんな馬鹿みたいに食べてよく体壊さなかったわよね!」
杜夫もうんうんと頷きながら言った。
「両親がマトモだったのが幸いだったな。まぁ、俺は一度も被害遭ってないけど、話聞く限り、遭遇はしたくないかな。」
それぞれが話していると、沙倫が登校してきた。
「みんな、おはよ!」
沙倫は4人の所に近づくと、嬉しそうに微笑みながらスマホの画面を見せる。
「ねぇ、ねぇ!今度代々木公園で台湾料理フェスやるんだけど、みんなで行かない?」
その誘いに真っ先に飛びついたのは言うまでもなく慶である。
「行く行く!よぉし、美味しい小籠包いっぱい食べるぞ!」
はしゃぐ慶を見て、美緒は少し呆れ顔で言った。
「もう、慶ったら…。でも美味しそう。私も行きたい!」
「俺も!まだ食べた事ない料理とか気になるしな。」
杜夫も乗り気である。真樹も微笑みながら言った。
「ああ。行くか。みんなで食う飯は美味いからな。伸治や武司にも声かけていいか?」
「勿論よ!」
沙倫も笑みを浮かべながら言った。こうして、食い尽くしお化けの大野による被害は終息し、皆が食事を楽しめる日がやって来たのだ。
こんばんわ!
ようやくこの章も終わりました。
次回から新章入りますんで、お楽しみに!




