第227話 野球部の忘年会
こんばんわ。
只今、風邪の治療中の為、上手く書ける自信がありませんがよろしくお願いします。
12月末。冬休みに入り、年が変わるまで残り数日が迫っている中、大谷津学院野球部は寒い中練習に励んでいた。そして、練習を終えた野球部員たちは着替えて忘年会の会場へ向かっていた。
「でもよ、仕返しって言ったって大野は本当に現れるのか?」
「そう言われればそうだよな。どこもかしこも忘年会シーズンだし、他の忘年会に出没して荒らしてる可能性あるな。」
伸治と武司はそう話していた。彼らの言う通り、大野はSNSなどで誰かが食事をすることを嗅ぎつけて食い尽くしている為、他の同級生が忘年会を開いている場合、そちらに現れることも考えられた。そんな言葉に真樹は首を横に振りながら言った。
「安心しろ。その可能性は潰した。」
「え、どうやって?」
沙倫も首を傾げながら真樹に質問する。
「今日に備えて、オニィと菅野にはこの日に食べ物関係の事をSNSでアップしないように釘を刺しておいた。大神や宮下ら1年女子にも丈を通して同じように伝えてもらった。」
真樹は大野に止めを刺すべく、今回の忘年会を仕返しの場に選んだ。因みに顧問の関屋にも大野の被害者が増えていることと、今回の忘年会で仕返しする事、大野には料理に指一本触れさせないように徹底することを説明したら、あっさり了承してくれた。そうこうしているうちに忘年会会場が近くにある成田駅前に到着。そこから新勝寺の参道の方に入り、少し洒落た創作料理屋に到着した。
「こんにちわ!予約していた大谷津学院の者ですが…。」
「お待ちしておりました。奥の席へどうぞ!」
関屋が店員に挨拶すると、真樹達は奥の席に案内された。そして、全員が席に着こうとした時に事件が起きる。
「全員お揃いでしょうか?」
「はい、揃ってます!」
「いえ、一人追加で!」
揃っていることを伝えようとした真樹の言葉を遮るように、横から女性の声が聞こえた。するとそこには勢いよく店に駆け込んできた大野がいた。
「湯川先輩。この前私に大恥かかせておいて、自分だけ楽しく忘年会ですか?!いい御身分ですね!という訳で、私にもご馳走してもらいますから!」
勝手なことを言う大野にざわつく一同。しかし、真樹が事前に話していたことによりこの状況は全員が想定済みであり、このざわつきも真樹に言われて演技をしているだけである。勿論関屋も真樹に言われてこのことを想定していたので、一芝居打った。
「はぁ、これ以上騒がれても仕方ない。申し訳ありません、1名追加できますか?」
「か、かしこまりました。」
少々無茶なお願いだったが、店員は困惑しつつも了承してくれた。
「今日は誰も忘年会やらないからつまんなーいって思ったけど、野球部が忘年会やってくれて助かった。これでひもじい思いしなくて済むわ!あ、私唐揚げ大盛りお願いします!」
勝手なことを言った挙句、割り込んできたのに最初に自分が食べたいものを注文する始末の大野。真樹達が冷めた目で見ているのも全く気にせず、一人で勝手にはしゃいでいる。そして、大野が注文した唐揚げ大盛りが運ばれて来た途端、真樹は作戦を決行した。
「お、唐揚げ旨そうだな。1個貰うぞ。」
真樹はそう言って大野の唐揚げを一つ掴んで食べた。その後、丈と登戸も続く。
「俺も貰うぞ!」
「俺も!美味いな!」
突然の事に呆然とする大野。そして、その直後に顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「何すんのよ!その唐揚げは私専用なのに!泥棒じゃん、最低!ハイエナめ!」
これでもかという程怒る大野。しかし、それに対し同じ1年の千葉と幕張が突っ込みを入れる。
「いや、お前がそれ言うなよ。」
「そうだぞ。そもそもハイエナに失礼じゃん。」
冷ややかに言う二人。因みにハイエナも死肉やライオンの食べ残しばかりではなく、自ら獲物を狩りに行く事も多いので、ごもっともな突っ込みである。
「いや、許さない!私が大好きな唐揚げを勝手に食べて台無しにして!どうしてくれんのよ!責任取れるの?!」
怒りが収まらない大野はまだ喚き散らしている。そこへ武司と伸治が呆れながら言い放った。
「お前なぁ…登戸の誕生会ぶち壊しといてその言い草はねぇだろ。お前こそ、その時の責任取れるのかよ?」
「真樹から聞いたけど、子供の作ったケーキまで強奪するとか無いわ。どっちかって言えば、
お前の方が料理と雰囲気台無しにしてんじゃん。」
そう言われても、大野はまだ逆ギレしている。
「何よ!強奪とか被害妄想しちゃって!嫌なら断ればいいのに、そうしなかった方が悪いですよね!こっちにはそんなこと1ミリも伝わってませーん!残念でした、言いがかり乙~!」
大野はやはり全く反省しておらず、開き直って周囲を小ばかにする始末。ついに沙倫が立ち上がって怒り出す。
「もう、好き勝手言って!私、この前の鍋パーティ乱入されて料理に文句付けられた挙句、胸倉掴まれた事許してないからね!」
当然だが、沙倫は鍋パーティでの大野の身勝手な振る舞いに怒り心頭だった。そして、その後真樹が追い打ちをかける。
「俺はお前が普段からみんなにやっていることと同じことをお前にやり返した。どうだ?腹立つだろ?そういうことをお前はしてるんだぜ。これに懲りたら、二度と食い尽くしなんて馬鹿な真似しないことだな。」
そして、事のすべてを見ていた関屋も少し険しい表情で言った。
「大野。学校外の事とは言え、あんまり酷いと教師としても無視できないな。あまりに酷いと親御さんや学校側にも報告しなくちゃいけないから、その辺の覚悟はしておけよ。」
全員から白い目で見られたり、厳しい言葉を浴びせられた大野は、それでも怒りが収まらなかった。
「フン!結局みんな自分がいっぱい食べたいだけじゃん!意地汚い!貧乏人!そんなに食べたけりゃ好きただけ食べて冬太りでもすれば?!食に目が眩んだブタ共め!」
口汚い捨て台詞を吐いて、大野は勝手に割り込んできて注文したにも関わらず、1円も払わないまま店から出て行った。そんな状況にみんな溜息をつく。
「改めてやべぇな、大野って。」
「ああ、あんなのに誕生会壊されたって思うと腹立つわ。」
丈と登戸はそんなことを話していた。真樹は二人に冷静に言う。
「安心しろ。もう大野は終わりだ。食い尽くしなんか二度とできなくなるさ。」
スマホを持ちながらそう言った真樹。首を傾げる一同だったが、真樹は関屋に声を掛ける。
「先生。邪魔者はいなくなったし、注文も出揃いました。始めましょう。」
「そうだな!じゃあ、みんな飲み物を手にもって!今年もお疲れ様!乾杯!」
こうして、最初に修羅場はあったものの、忘年会は無事に始まった。そして、大野は真樹の手によって追い詰められている事にまだ気づかないでいた。
こんばんわ。
さあ、大変なことになってきました。
もうすぐ物語の結末ですが、果たしてどうなるのか?
次回もお楽しみに!




