第22話 崩壊への道筋
こんにちわ!
対決も佳境です!
好き放題にふるまって周囲をひっかきまわす押上美紅の暴走を止めるべく、真樹達は手を組んで水面下に作戦を実行に移していた。先日は美紅の中学の同級生である桜木修二と接触させ、デートの約束を取り付ける事に成功した。また、その時の美紅の言動に怒りを覚えた修二の方も作戦の成功を願っており、みんな気合の入れようが半端なかった。そして、作戦のメンバーである野球部員の真樹と武司は放課後、部活の練習に勤しんでいた。
「なぁ、真樹。」
「どうした、武司?」
丁度キャッチボールをしていたのだが、武司が真樹に尋ねてくる。
「本当にあの作戦で上手くいくのか?」
「ああ、大丈夫。押上も奴のことは忘れてたって言ってたし、修二を信じよう。」
「だけど、本当にそんなんで効果あるのか?」
「あいつの最大の弱点はプライドの高さだ。だから、今回の作戦の切り札は、まさにうってつけという訳だ。」
互いにボールを返しながら今回の作戦に関して話す二人。先日、修二が美紅と接触後に話していたのだが、美紅は修二に好意があること、どうでもいい人に関してはほとんど覚えていなかったことがポイントになると真樹は考えていた。
「大丈夫だ。既に根回しは済んでいる。日曜日が楽しみだ。」
「しかし、お前はつくづく頭の回転が速いな。流石首席入学。」
「学力は関係ないだろ、ハハハ…。」
そう会話しながらキャッチボールをしている最中だった。校舎の方を見ると、ちょうど美紅が取り巻きたちと共に下校して行くのが見えた。そして、丁度美紅が振り向いたときに真樹と目があったのだが、真樹を見るや否や美紅はいきなり舌を出して真樹に軽蔑の視線を送った。真樹の目にもその光景が入っていたのだが、特に気にせず無視して受け流した。しかし、心の中では…。
(そうやっていられるのも今の内だぞ、押上。来週お前のそのプライドを粉々にしてやるからな。)
心の内に秘めた闘志を語りながら真樹は他の部員たちと共に、この日も練習に精を出した。
そして、日曜日-。
「よし、最終決戦だ。これであいつに止めを刺すぞ!」
「「「オー!!!」」」
真樹はそうみんなに声かけをした。場所は北総開発鉄道の大町駅の改札口。来ているメンバーは真樹の他に、慶、武司、満、修二である。ここは今回の作戦の場所である、市川動植物園への最寄り駅だ。大まかに流れを説明すると、修二と美紅が動物園にてデートをし、頃合いを見て美紅を追い詰めて成敗するというものだ。時刻はまだ午前8:30。美紅に伝えた集合時間よりだいぶ早いので当然ながら彼女はまだ来ていない。
「じゃあ、修二君。あとは頼んだよ。」
「任せておけ。」
慶が修二にそう声を掛けた所で、修二は改札口に一人残り、真樹達は人目につかない隅っこへと移動する。
「でも、作戦とは言え休日に女の子とデートできるのは羨ましいかも。」
「お前にとってはな。俺は1億もらっても嫌だが。」
羨ましがる武司に対し、真樹はお得意の毒舌を炸裂させた。
「これで押上さんも少しは懲りるといいね。あのまま大人になったら結婚詐欺師とかになりそう。」
「結婚詐欺師か…何か想像できるから笑える。」
慶が言ったブラックジョークに対し、満は思わず噴き出しそうになった。そうしてしばらく様子を見ながら待っていると…。
「修二君、お待たせー!」
「来たか。」
何も知らない美紅がのこのことやってきた。しかも、男受けしそうな可愛らしいファッションで身を包んでおり、かなりの気合の入れっぷりだ。
「ねえ、この服可愛いでしょ?」
「ああ、そうだな。」
「もう、つれないんだから!まあ、見ている内に修二くん美紅にメロメロになっちゃうよ!とにかく行こう!」
頬を膨らませつつ自信満々なことを言った美紅は、修二の腕に手を絡ませそのまま動物園へと向かって行った。
「キャー可愛い!修二君見て、レッサーパンダよ!」
「うん、可愛いね。」
「美紅とどっちが可愛い?」
「…。同じ位?」
「むぅーっ、そこは美紅って言う所でしょ、バカ!」
むくれながらレッサーパンダを前に、自信満々な発言をする美紅。デートは今のところ順調で美紅の方は完全に頭の中がお花畑の状態だった。その様子を、気付かれないように時間差で入園した真樹達が物陰から見ていた。
「でも、相変わらずの自信家っぷりだね。自分がもう彼女になった気でいるよ、あれ。」
「ああいうのがストーカーになるんだよな。だから、悪い芽を今の内に摘んでおくんだ。」
呆れてため息をついた慶に対し、真樹は皮肉たっぷりにそう返した。すると、ここで武司が疑問を出す。
「でも、それなら今回の作戦もやばくないか?押上が逆ギレして別の被害が出る可能性もあるんじゃ…。」
「平気だよ。何せ今回の切り札の効果は押上を精神的に再起不能レベルまでダメージ与えられるものだからな。おっと、メッセージが来た。」
心配する武司に対し、自信満々に語る真樹に一本の連絡が入った。相手は今いるメンバーからではなかったが、真樹は笑顔を浮かべる。
「よし、来たか。これで止めが刺せる。修二に伝えなきゃ。」
真樹は早速今北連絡の内容を修二にも伝えた。すかさずそれを見る修二。
(来たか。よし、こっちも行くか。)
「ねえ、どうしたの修二君。誰から?」
「ん?親からだ。あんまり遅くなるなって。」
「なーんだ、そっかぁ。」
美紅を何とか誤魔化した修二は、とりあえず場所を変えるべく歩き始めた。
「あー楽しかった!あ、修二君と一緒にいるから楽しかったんだよ!」
「そいつはどーも。」
園内にある休憩スペースに移動した修二と美紅。目の前には大きな池があり、周りは木々で覆われているのでここでは様々な生き物見る事が出来る。そして、美紅は修二に上目づかいをしながら言った。
「ねぇ、修二君。私、本気だよ。本当に修二君のことが大好きだったんだよ…。」
「それで…。」
「だから、私を修二君の彼女にして欲しいな。美紅が言ったんだから勿論OKよね…?」
修二の手を握りながら猫なで声で告白する美紅。大概の男はこれで落ちてしまうのだが、今回は別である。そして、美紅は見事に罠にはまっていたのだった。
「ごめん、無理。」
「どうしてよ!美紅は中学の時からこんなに修二君のことが好きなのに!私を逃したら、これ以上いい女の子居ないよ!プンプン!」
振られて怒りだす美紅。しかし、これもすべて想定済みだった。修二は呆れ顔でため息をつきながら言った。
「その自信は度っから出てくるんだよ…。まあいいや。ちょっとお前に紹介したい奴がいるからさ。」
「だ、誰よ…?」
怪訝な顔を浮かべる美紅に対し、修二はスマホのメッセージを起動させ誰かに「出てきていいぞ」と送信した。すると、茂みの方から誰かが修二と美紅の方向に歩いてきた。黒く、艶のあるロングヘアー、黒いタートルネックに白いロングのスカートを履いており、目鼻立ちがパッチリとした美人だった。年は恐らく真樹達と同い年だが、すらりと背が高く年齢以上に大人の女性を彷彿とさせている。その美女は修二の隣に立つと、険しい顔で美紅を見ながら挨拶する。
「お久しぶりね、押上さん。」
「な、何よ…。誰なのよこの女!」
美紅は何が起こったか全く状況が理解できず、苛立ちを交えた声で修二に聞く。そして、修二はその美紅の言葉を聞いて完全に呆れかえっていた。
「お前な…本当に都合悪いことは何も覚えてないんだな。まあいいや、挨拶してやれよ。」
修二は隣の美女にそう言った。美女の方は軽くお辞儀をしながら自己紹介する。
「私…塚田愛よ。今は修二君と付き合っているわ!」
その言葉を聞いた美紅は完全に頭が真っ白になり、陰で様子を見ていた真樹は心の中でガッツポーズをするのだった。
こんにちわ。
美紅が追い詰められてきました。
どうやってとどめをさすのか?
次回をお楽しみに!




