第213話 幸せと災難の始まり
こんばんわ!
今月初投稿です!
季節は12月。気温がどんどん冷え込むと同時に、1年ももうすぐ終わろうとしている。世間ではクリスマスや大晦日を控えて静かに盛り上がり始め、テレビ番組も年末特番などが各局で放送されている。特に、日本ではクリスマスは恋愛イベントという認識が広がり、付き合い始める男女が増えていくイメージがある。そして、それはここ大谷津学院でも例外ではなかった。
ある日の昼休み。
「やっと午前中の授業終わった。さてと…いい加減ホットは導入されたのか?」
そう言いながら真樹は学校の外に出た。校庭付近にある自動販売機で飲み物を買うためだ。やがて自販機前に着くと…。
「お、あった。冬はやっぱり熱いほうじ茶に限る。」
真樹は嬉しそうにそう言って、温かいペットボトルのほうじ茶を購入した。取り出し口から手にとって、教室に戻ろうとした時…。
「なんだよ、こんなところに呼び出して…?」
「ご、ごめん…。でも、どうしても話したいことあって!」
少し離れた茂みの方からそんな男女の声が聞こえてきた。真樹が思わずその方向を見ると、二人の生徒がいた。
「ん?あれは本郷と…チアリーディング部の宮下郁美か?」
よく見ると、その正体は真樹の野球部の後輩の1年生である本郷丈と、チアリーディング部の
1年生である宮下郁美がいた。尚、二人は真樹の存在に全く気付いていない様子だ。丈と宮下はそのまま話し続ける。
「で、話っていうのは…?」
「わ、私ね…その…本郷君のことが好きだったの!」
宮下は丈にそう告白した。本郷は目を丸くしているが、真樹は自販機の裏に隠れて、真顔で立ち聞きしている。
「え、その…何で?理由聞いてもいい?」
「いつも野球頑張ってるのもカッコいいって思ったのが一つ。もう一つは…私、勉強苦手で赤点取りそうだった時、質問したら教えてくれたり、甲子園のチアのパフォ褒めてくれたり…とにかく、本郷君が優しくしてくれたことが嬉しくて好きになったの!」
「…。」
「勿論、本郷君が前の彼女にひどい目に遭わされたのも知ってるし、トラウマが治らないって言うなら無理強いはしない。でも、気持ちだけはどうしても伝えておきたかったの!」
宮下の言う通り、本郷はかつて交際していた台田みどりという少女のわがままに振り回されて疲弊しきっていた。そして、台田は真樹を逆恨みして立てこもり事件を起こし、警察に逮捕されている。
「い、いや…俺の方こそ、いいのか?」
「うん!」
「お、俺でよければ…宮下の彼氏にしてくれ!」
「ホント?!嬉しい!」
こうしてカップルが成立した。その後、宮下はトイレに行くといって先に戻り、本郷は飲み物を買いに来たのだが…。
「わっ!湯川先輩!」
「本郷…その、よかったじゃないか。」
「もしかして、全部見てました?」
「ああ、だが恥ずることじゃない。」
真樹は真顔のまま話し続けた。
「宮下は台田と違って、常識人だ。もし嘘告白なら割って入るつもりだったが、あいつは本当にお前のことが好きだな。大事にしてやれよ。」
「あ、ありがとうございます。先輩。」
「ほれ、やるよ。」
真樹は本郷にそう言って熱いペットボトルの紅茶を渡した。
「さっきほうじ茶買ったら、ルーレットで当たってもう一本出てきた。俺からのお祝いだ。」
真樹は本郷にそう優しく微笑みながら、彼と共に教室に戻っていった。
こうして、宮下と本郷は時間が合えばともに帰宅したり、期末テスト対策するなど順調に交際を続けた。そんな幸せの絶頂期、宮下に悲劇が襲い掛かる。
「ねぇ、頼むよ!」
「しつこいわね。やめてよ!」
本郷が練習の為に共に帰れない日、宮下はある女子生徒と言い合いになった。
「だって、あんた関係ないじゃん!」
「郁美ばっかりずるい!邪魔しないからいいって言ってるでしょ?!」
その女子生徒は宮下に何やら頼み込んでいるようだったが、宮下は拒否し続けた。しかし、あまりにもしつこく食い下がるので、とうとう彼女は折れた。
「はぁ…わかったわよ、もう。」
「ありがとう!郁美最高!」
ため息交じりに何やら同意した宮下。しかし、のちに彼女はこの判断を後悔することになるのだ。
こんばんわ!
新章始まりました。
今度はどんな話になるのか、どうぞお楽しみに!




