第211話 帰ってきた100万円
こんばんわ!
最近寒くなってきましたね!
真樹は伸治の家を巻き込んだ詐欺師に一泡吹かすため、詐欺師が自分をターゲットにしたことを逆手にとって罠を仕掛けた。祖父の肖像の物真似をし、騙されたふりをして詐欺師を成田駅におびき出し、300万出す代わりに100万円を交換するように要求。そして、犯人はまんまと真樹の罠に引っ掛かり、警察に取り押さえられた。更に、成田駅に現れた詐欺師の正体が、同じ大谷津学院に通う小室香菜だったので驚きだった。そして、芋づる式に近くに待機していた詐欺仲間である田中理子と佐藤優香という少女もあっさりと逮捕されたのだった。
小室達詐欺グループが逮捕されたことは、すぐさまニュースで報じられた。
『今日、午後12:30頃、千葉県成田市で連続詐欺事件の容疑者とされる少女3人が逮捕されました。逮捕されたのは千葉県成田市の高校に通う17歳の少女、同じく千葉県佐倉市の高校に通う17歳の少女及び東京都葛飾区の女子高生の合わせて3名です。調べによると少女たちは同じ中学校の同級生で、詐欺グループを結成後に主に40台以上の男女をターゲットにし、娘などに成りすまして、千葉県北西部や東京都23区を中心に、事故を起こしから修理代、治療費が必要と電話をかけて現金を騙し取っていた疑い。一昨日の夕方に千葉県佐倉市在住の男性の自宅に電話をかけ、電話に出た男性が不審に思い警察に通報。本日午後におとり捜査によって逮捕されました。調べによると少女たちは容疑を認めており、「お化粧やお洒落にたくさんを金をかけたかった。歳がいっている人なら騙しやすいと思った。」容疑を認めており、被害総額は約1000万円にのぼる模様。警察では、余罪を含めさらに詳しく捜査するとの事です。』
「ふぅ…正直大博打だったが、上手くいってよかったぜ!」
警察車両の中で、真樹はそう言った。小室が現れるまで、真樹の中では自分の作戦が完璧であるという自信が持てていなかったのだ。
「まったく…上手くいったからいいものの、危なっかしすぎるわ。こんな馬鹿なことしないで全部警察に任せればよかったのに。」
美緒が呆れ顔でそう言ったが、真樹が首を振りながら言う。
「いや、それじゃ仕返しができないだろ。あんだけ人を騙して金を強奪していたあいつらに、騙された人の気持ちを思い知らせてやりたかったんだ。」
因みに、真樹、伸治、美緒の3人は刑事の車で中山家に向かっていた。真樹が取り返した100万円を輸送するためだ。伸治は真樹の方を見て言った。
「真樹…すまん。うちの問題にお前まで巻き込んで。それと、ありがとう!100万帰ってくれば、うちも元に戻る!心から感謝するよ!」
そういう伸治に真樹は冷静に返した。
「そんなに気にするな。巻き込まれたなんて思ってないし、お前の敵討ちだと思えばいい機会だった。まぁ、相手が小室なら尚更騙せてスッキリした。俺、あいつ嫌いだし。」
いかにも真樹らしいコメントだった。そして、警察車両はそのまま3人を乗せて中山家へと向かったのだった。
-同時刻 中山家-
「美子、伸治は?」
「用があるから出かけるって言って、それっきり帰ってこないけど。」
伸治の父、祐三は、妻である美子にそう言った。伸治はこの日、ただ出かけるとしか家族に伝えていない。そんな時、テレビを見ていた優奈が不機嫌そうに毒づいた。
「お兄ちゃんは、すぐに100万戻って来るとか言ってたけど、どうなんだろうね?あーあ、誰かさんが娘の声分からずに騙されなければこんな事にはならなかったのにな!」
声を荒げながら優奈はそう言った。そんな時、インターホンが鳴る。
「誰かしら?はーい!」
美子が玄関に向かう。ドアを開けると、息子の伸治の他に刑事と真樹、美緒が立っていた。
「伸治、お帰り。」
「ただいま、母さん。喜べ、100万は帰ってきたぞ!」
「ええっ?!」
伸治の言葉に美子は驚いた。美子は祐三と優奈を玄関に呼んだ。
「伸治、お前一体…?」
「本当なの…、お兄ちゃん?」
美子の言葉を聞いた祐三と優奈は信じられないといった表情で玄関にやってきた。そこで、3人を送った刑事から説明を受ける。
「中山さん。こちらにいる湯川君の協力のおかげで、詐欺師をおびき出すことに成功し、無事に逮捕できました。そして、中山さんが騙し取られた100万円も無事に取り返すことが出来ました。」
刑事はそう言って、100万円が入ったカバンを美子に渡した。美子が鞄を開けると、確かになかには現金100万円が入っている。これを見た祐三と優奈も驚きを隠せない。
「嘘だろ…本当に100万円だ…。」
「こんなに早く戻ってくるなんて…信じられない!」
驚いたままの3人に伸治は言った。
「みんな。ここにいる真樹が助けてくれたおかげで、何とか100万が返ってきたんだ。真樹に感謝しよう。それと、母さんももう気にするなよな。」
伸治が美子たちにそう言った後、真樹が口を開く。
「皆さん。まず初めに、お宅の問題に首を突っ込んでしまい、申し訳ありません。それに関しては心からお詫びさせて頂きます。ですが、僕は大事な友達であり、野球部のチームメイトでもある伸治のことがどうしても放っておけませんでした。騙されたことを知った翌日に、この世の終わりのような顔で登校し、練習も身が入らない彼を助けたいって思いました。なので大胆でしたが、大事な友人に嫌な思いをさせた犯人に復讐させて頂きました。そこはご理解いただけると幸いです。」
そう言い終えた後、真樹は美子の方を向いて言った。
「お母さん。今後の教訓として、怪しい電話があったらまずは本人に確認する事!焦る気持ちはわかりますが、そこだけは冷静になってください。」
次に真樹は祐三の方を向いて言った。
「お父さん。詐欺に巻き込まれたと聞いて怒る気持ちはわかりますが、まずは最初にゆっくり話し合うことから始めてください。こういう時にこそ、一番冷静にならなければいけません。」
そして、その次に真樹は優奈の方を向いて言った。
「妹さん。受験前にこんなことがあって、イライラする気持ちはわかる。でも、伸治だって誰よりもみんなのことを心配してたんだ。あんまり当たり散らして困らせないでくれ。」
真樹にそう言われた三人は声を揃えてて言った。
「「「お騒がせ致しました。」」」
真樹はそれを聞くと、微笑みながら言った。
「とにかくいろいろ上手くいって良かったです。じゃあ、今後もお気をつけて!」
真樹がそう言った所で刑事も署に戻り、伸治も取り戻した100万を手に自宅に入っていった。自宅から去る真樹、美緒、刑事を見送りながら美緒は伸治に言った。
「ねえ、お兄ちゃん。あの湯川って人は何者なの?」
「頼りになる大事な友達さ。そして、一番敵に回しちゃいけない奴だ!」
そして、祐三も美子に頭を下げた。
「美子、すまん。お前ばかり責めて…。謝るよ!」
「いいんですよ、あなた。騙された私が悪いんですし…。あの湯川君にはなんて感謝したらいいか…。」
そう優しく言った美子。こうして、中山家は真樹の活躍によって奪われたお金も戻り、平和な日々が帰ってきたのだった。
駅までの帰り道、真樹は美緒と二人で歩いていた。そんな時、美緒が真樹に言った。
「それにしても、意外ね。他人に興味ない湯川君が誰かのためにここまでやるなんて。」
「嫌いな人間に興味ないだけだ。」
「でも、同じクラスメートとして言わせてもらうけど、もうこんな無茶しないで!これ以上大騒ぎを起こしたら、あなたの立場は無いわよ。」
「そんなことが怖くて、生活なんてできないさ。それに、友達としても野球部のエースとしても伸治のことは見捨てられないさ。俺にとって大事な奴だからな。」
真樹の言葉を聞いて、美緒は呆れつつ微笑みながら言った。
「全くもう…湯川君はどうしようもないんだから!」
そういった美緒。ともあれ、伸治を巻き込んだ詐欺事件は解決したのだった。
こんばんわ!
まだ新ネタを思いついてはいないのですが、これが終わったら必ず新章を書きます!
ぜひ、お待ちください!




