第209話 その正体は…?
こんにちわ!
この賞ももうすぐ佳境です!
真樹は詐欺師に対し、300万出す代わりに自分にも100万円を渡して欲しい、そうすればあとは好きにしても構わないという無茶な提案をしたが、なんと金に目がくらんだ女詐欺師はこれを了承。直接取引をすることになった。そして、その翌日の日曜日。ついに犯人との対決の日がやってきたのだった。
-AM11:45 成田駅改札口-
「よう、来たか伸治!」
「ああ、待たせたな真樹。」
成田駅で真樹は伸治と合流した。そう、ここが正に詐欺師との取引場所である。
「もうすぐ刑事さんたちも来る。仕返しの時は近いぞ。」
「ああ、もう家の気まずい雰囲気といい加減おさらばしたいぜ!」
真樹の言葉に伸治は切実な思いを述べた。真樹の言う通り、詐欺師を現行犯逮捕するためにこの後担当刑事たちとも合流する予定だ。
「うちの100万…早く戻ってきてくれぇ…!」
「もちろん取り戻す。ついでに犯人の詐欺師も牢屋にぶち込んでやろうぜ!」
「誰を牢屋にぶち込むのよ?」
背後から女性の声がしたので、伸治と真樹は驚いて振り返る。そこには制服姿にスポーツバックを下げた菅野美緒がいた。
「なんだよ、菅野か…。」
「びっくりしたぁ…。」
「何よ…人をお化けみたいに!」
美緒は真樹と伸治の反応に不満げな様子だった。そんな美緒に真樹が言う。
「なんでお前がここにいるんだよ?」
「さっきまで学校で船橋中央高校と練習試合があったの。それで、帰ろうと思ったら湯川君と中山君がいた訳。」
真樹と伸治の二人は内心ほっとした気分だった。すでに犯人が近くにいて、計画がばれたと思ったからだった。帰りの電車がもうすぐ到着するが、美緒は帰ろうとせずに二人に問う。
「それで、牢屋が何よ?あんたたち、ただ遊びに来たわけじゃなさそうね。」
言い訳しても仕方ないと思った伸治は真樹のほうを向いて聞いた。
「話していいのか?」
「まぁ、いいわ。こいつ口固いし。」
真樹にそう言われた伸治は、美緒にも事情を話した。すると美緒は溜息交じりに言った。
「はぁ…まったく。相変わらず無茶ばかりするのね、湯川君は。」
「伸治の家を酷い目に遭わせた犯人をとっちめるためだ。わかったなら早く帰れよ。」
「駄目よ!私も立ち会うわ!」
「おい、こっちは真剣なんだぞ!もう犯人の首をつかめるすぐそこまで来てるんだ!」
真樹は美緒を返そうとしたが、彼女は帰ろうとしない。
「犯人にうちの学校の生徒がかかわってるかもしれないんでしょ?それに、クラスメートがおとりになるなんて、委員長として見過ごせないわ。」
そう言い張る美緒。伸治は美緒のほうを向いて言った。
「わ、わかったよ。俺は、100万さえ戻ってくれば何でも…。」
「はぁ、しょうがねぇな。邪魔すんなよ。」
真樹は呆れ顔で渋々そう言った。その後、2台の車が駅前ロータリーに到着した。刑事が乗った車だ。
「湯川君たち、こっちに来るんだ。」
刑事は真樹たちを手招きして、一度車に乗せた。そして、作戦の話をする。
「昨日は通報してくれてありがとうね。それにおとり役まで引き受けてくれて。」
「いえ、全然です。」
「とりあえず、犯人がこっちの300万を受け取った瞬間に逮捕するから。後ろの車に乗っている監視役がしっかり見張っているから安心して。」
「わかりました。」
真樹が刑事と話していると、彼のスマホに電話があった。犯人からである。
「もしもし?」
「私よ!お金の準備はできた?」
「もちろんじゃ。ここまで来て逃げるほど無責任ではないわい。」
正三の物まねをしながら話す真樹を見て、美緒は怪訝な顔をした。
「ねぇ、湯川君のこのしゃべり方は何なの?」
「しーっ!これも作戦なんだ。少し静かにしてくれ!」
伸治が慌てて美緒に静かにするように言った。真樹は犯人とのやり取りを続ける。
「そっちの言う通り、今成田駅に来とるわい。」
「いいわ。じゃあ、300万頂戴!」
「いや、そっちの100万円が先じゃ。」
「は?あんた、自分の孫が加害者の分際で私たちに指図する権限があると思うの?」
「出せぬのなら、この話は無しじゃな。年寄りがわざわざ休みの日に孫の代理でここまで来たのじゃ。そんなわしが、せっかくお前さんたちが求めてきた額よりも高い額を持ってきたのに、勿体ないのう。」
「ちっ…わかったわよ!じゃあ、西口のコインロッカーに入れるから!私が入れ終わって、電話かけるまで絶対に動くんじゃないわよ!」
そう言って電話が切れた。そして、後方の車から監視役の刑事が飛び出し、西口にあるコインロッカーに張り付く。幸い、この日は利用者が少ないのか、多くのロッカーが開いていた。しばらくすると、張り込み役から連絡が入る。
『黒い服とニット帽、マスクをつけた若い女が鞄をロッカーに入れました。』
「よし、そろそろ電話がかかってくるころだ。そのまま待機!」
刑事は監視役にそう指示した。すると、すぐに犯人から真樹に電話が入る。
「もしもし?」
「100万を5番ロッカーに入れたから!早く300万持ってきてよ!」
「そう焦らんでも、これから持っていくわい。」
「入れたら、そのままこの番号に折り返しの電話してね。」
そう言って犯人は電話を切った。真樹は鞄を持って車から降りる。
「じゃあ、行ってきます。」
「気を付けてね。」
刑事にそう言われ、真樹はコインロッカーの方へ向かった。因みに、真樹は犯人に自分が正三に成りすましていることがばれないよう、地味な服装に帽子、伊達メガネで変装している。そして、犯人の言う通り5番ロッカーを開けると鞄が入っており、中身を確認する。
「フン。これくらい払えますよってか。こんな馬鹿正直で、よく詐欺なんかやろうと思ったぜ。」
鞄の中にはしっかりと現金100万円が入っていた。真樹はそれを取り出すと、自分が持っていた300万が入っている鞄を入れて、言われた通り犯人に電話をかける。
「おーい、わしじゃ。お前さんの望み通り、300万入れたぞい。」
「そう。じゃあ、あんたもう帰っていいから。これで許してあげるわ。」
そんな短いやり取りを終え、真樹は急いで車に戻る。そして、またしばらくすると先ほどロッカーに100万円を入れた女が再び現れた。
「フフフ…思わない形でボーナスが手に入ったわね!ラッキー!」
女はそう言うと真樹が入れた鞄を取り出して中を見てみる。しかし、彼女は驚きを隠せなかった。
「な、何よこれ…?!」
鞄の中は現金300万円…ではなく、大量の紙屑が入っていた。そして、一番上にあった1枚目には「騙されるかよ、バーカ!」という文字が書いている。真樹が書いた文字だ。
「動くな、警察だ!」
「恐喝と詐欺の現行犯で逮捕する!」
見張り役の刑事二人が女の両腕をつかんで確保した。唖然とする犯人の所に車にいた刑事と、真樹、伸治、美緒の3人もやってきた。刑事が犯人のマスクと帽子を外すと、真樹が目を吊り上げながら言った。
「やっぱりお前だったか。小室香菜。」
こんにちわ!
ついに犯人逮捕です。
でも、まだまだこれだけで終わりません。
次回もお楽しみに!




