第206話 止めを刺しに行こう
おはようございます。
今月最後の投稿です。
真樹が伸治と慶に詐欺師に関して話していたほぼ同時刻、3人の犯人グループもカラオケボックスに集まって真樹の家から金をむしり取る作戦を立てていた。
「さーてと、いよいよ湯川の家からボーナス金を頂戴する時が来たわね!」
詐欺グループの少女の1人が言った。彼女が真樹を陥れる提案をした者だ。
「まぁ、騙すって言っても相手はジジィだし、心配する事ないっしょ!」
「そうそう。この間のおばさんの時だって上手く行ったのよ!老いぼれ相手に失敗なんてありえないわ!」
仲間の2人も笑いながらそう言ったが、彼女達は真樹の物真似を未だに見破れないでいた。因みに、そのおばさんとは伸治の母親の事である。
「まぁ、今回もざっと100万円って所ね!」
「そうよね。その湯川って奴、貧乏なんでしょ?」
「破産させるには十分なんじゃない?これが上手く行ったあとは、もっと金持ちの家を狙えばいい訳だし。」
自分達が騙されているとも知らず、成功する前提で話を進める詐欺グループの少女達。そして、今回の作戦の言い出しっぺの少女が立ち上がって言った。
「みんな!協力してくれてありがとう!半分は私の個人的な願望だけど、金も手に入れて、うちの学校の女の子を不愉快にさせる湯川を追放できれば万々歳よ!」
そう言って、彼女達はドリンクを注文した後、呑気に歌いながら過ごしたのだった。
翌日。大谷津学院のグラウンドにて。
「中山!どうしたんだ?!今日は球が荒れてるぞ!」
「すみません、先生!」
土曜なので朝から野球部の練習が行われていたのだが、フリー打撃でボール球を連発する伸治に対し、関屋が激を飛ばしていた。
「今からそんなんでどうする?ストライクが入らずに勝てる程、関東大会は甘くないぞ!」
「ご、ごめんなさい…。」
関屋にそう言われて、しょんぼりする伸治。打席には1年生の登戸が立っていたが、丈達他の1年生も伸治の様子に違和感を覚えていた。
「今日の中山先輩、おかしいよね?」
「ああ、なんか元気無いっていうか…。」
「コントロールも球威も落ちている。」
みんなが違和感を覚える中、伸治はそれでも歯を食いしばって投げ続けた。その様子を、武司が悲しそうな目で見ながら言った。
「無理もねぇよ。家であんな事があったんじゃ、しばらく平常心に戻るのは難しいって。」
「そうよね…。伸治、可哀想。伸治のお母さんを騙した犯人、地獄に落ちればいいのに。」
隣にいた沙崙が同情の視線を送りつつ、やや過激な事を言った。そんな時、後ろで素振りをしていた真樹がバットを持ちながら言う。
「その通りだ。こんな事、いつまでも続けられる程、世の中甘くない。悪って物は必ず正義で裁かれるんだ。」
真樹の発言に武司と沙崙が振り向く。そして、沙崙が少し微笑みながら言った。
「真樹もそう思うよね!あ、もしかして、もう犯人も分かっちゃった感じ?」
「それは無い。分かってるならとっくに殴り込みに行ってる。」
真樹の言う通り、彼はB組の小室香菜が関係しているのではないかと踏んでいるものの、犯人の特定まではできていなかった。
「でもよ…伸治や他の騙された人達のためにも、早く犯人捕まって欲しいぜ。」
武司はマウンド上の伸治を見つめながらそう言った。真樹の方は深くは語らずに黙々と練習しているが、彼の頭の中では既に犯人をいぶり出す作戦が出来上がっていたのだった。
おはようございます。
真樹の作戦とは何なのでしょう?
次回もお楽しみに!




