第202話 騙し合い
おはようございます。
今月最後の投稿です。
真樹が帰宅した際、玄関にある固定電話が鳴った。受話器を取ると、女性の怒鳴り声が聞こえてきた。
『うちの娘が、あんたの所の子に酷いことされて泣いてんのよ!どーしてくれんのよ!』
真樹は女性の声に聞き覚えが無く、勿論女性に乱暴な事をした覚えもない。しかし、これだけは確信していた。
(ああ…こりゃ伸治の母親を嵌めた女詐欺師だな。)
心の中でそう呟いた真樹。通常、電話による詐欺事件への対策としては、相手にせずそのまま電話を切る事が推奨される。しかし、彼は違った。
(相手は俺本人が出ている事に気づいてないな。よーし、伸治の分も仕返ししてやろう。)
邪悪な笑みを浮かべながらそう考えた真樹は、電話を切らずに会話を続けることにした。
「す、すまぬ…。今ひとつ状況が読めないんじゃが…詳しく教えてくれぬか?」
喉を潰し、低く嗄れた声を出した真樹。喋り方も正三の物真似をしている。真樹が考えた作戦は、別人を演じて騙されたフリをすると言うものだった。
『だから、あんたの所の子がうちの娘を人気の無い所に引きずり込んで乱暴したって言ってんのよ!うちの子泣きながら帰ってきて、学校も行きたくないって言ってんの!どう責任取ってくれるんですか?!』
物凄い剣幕で真樹を怒鳴りつける女詐欺師。しかし、真樹は全く動じずに心の中であざ笑っていた。
(フン。誰が女ごときに手なんか出すかよ。嘘フッ掛けるならもっとまともなのにしとけよな。)
そして、真樹は尚も正三のフリをし続けて、相手に尋ねた。
「う、うちの子はまだ帰ってなくて…ど、どうすればいいのじゃ?!」
『そうねぇ…。それなりの事されたんですから、被害者届けは出そうかしら?でも、それだとお宅の子、退学になっちゃいますよねぇ…。』
「そ、そんな…それだけは!」
『あ、でもそれなりの物を払ってくれるんでしたら、示談にしてあげてもいいわよ!』
「わ、分かった…。金は払うしうちの子にも厳しく言っておく!だから、助けてくれ!」
『じゃあ、とりあえず100万円振り込んでくれない?』
「そ、そんなすぐには無理じゃ!」
『チッ!まぁいいわ!来週まで待ってあげる。』
「申し訳無い…。」
そこまで言って、電話は切れた。受話器を置いた真樹は不敵な笑みを浮かべながら言った。
「バカな女詐欺師め!俺の演技に騙されておいて、よく詐欺なんかやろうと思ったな。」
女詐欺師は最後まで真樹の演技を見抜けていなかった。そして、真樹はそのまま固定電話で電話をかけた。
「もしもし、警察ですか?はい、実は怪しい電話がかかってきて、最近このあたりで横行している詐欺かと思いまして…。」
警察に通報した真樹。彼の仕返し作戦が、今始まろうとしていた。
その頃、詐欺グループはと言うと。
「アハハ、クソジジイが見事に騙されてやんの!」
「めちゃくちゃ焦ってたわねぇ!」
メンバー達はスマホをスピーカー状態にしていたので、全員がこのやり取りを聞いていた。そして、自分たちが湯川家を騙すことに成功したと思いこんでいる。
「退学ちらつかせて、金を取る…。ホントは私はあいつに退学して欲しいけど、地獄に落とせるなら何でもいいわ!」
一人の少女がそう言った。どうやら彼女だけ大谷津学院と関係があるようだった。
「とにかく、金の支払いは取り付けたから、来週までの辛抱よ!」
「うん!」
しかし、彼女達はまだ知らなかった。騙されているのは自分たちであり、真樹の術中に見事にハマってしまったと言う事を。
こんにちわ!
真樹はやっぱり、とんでもない子でした。
果たして作戦はうまく行くのか?
次回もお楽しみに!




