第196話 悲劇の末路
こんにちわ!
本章もいよいよクライマックスです!
ある日の夜、御茶ノ水の大学病院で一つの修羅場が繰り広げられていた。真樹の異父妹の菜穂が既に手遅れである事が医師から早紀に伝えられていたのだが、早紀はそれに納得ができずに暴れていた。そして、そこに真樹が現れて追い打ちをかけていたのだった。
「そんな…菜穂まだ10歳よ!なのに…こんなに早く…酷すぎる!可哀想だと思わないの?」
早紀は涙を流しながら真樹に詰め寄る。しかし、真樹の方は至って冷静に返した。
「病気になった事は気の毒だし、生まれた子供に罪はない。だけど、あんたの事は一生許さないから。」
真樹の表情は氷のように冷たかった。そんな中、異変が起きる。
「せ、先生!大変です!杉田菜穂さんが!」
「な、何だって!?」
看護師の言葉に医者が大慌てで菜穂の病室に駆け込み、早紀と真樹も後を追った。病室に入ると、菜穂が顔を真っ青にして小さいうめき声をあげながら苦しんでいる。
「菜穂ちゃん、しっかりして!」
「と、投薬だ!点滴の準備をしろ!」
心電図が異音を鳴り響かせ、もがき苦しむ菜穂。医者達も懸命に治療をしたが…。ピーッ…。心電図が心肺停止を表示した。
「…。21:10、ご臨終です。」
医者と看護師が早紀にそう告げ、病室を出た。早紀は涙を流しながらベッドにすがる。
「菜穂ー!何で、何でぇぇぇ!」
菜穂の亡骸にすがりながら泣きじゃくる早紀。そして、真樹の方に振り返って言った。
「お願いよ、真樹!もう一度私の息子として戻ってきてぇ!旦那にも娘にも死なれて、どうしようも出来ないのぉ!苦労はさせないからぁ…!」
しかし、真樹が首を縦に振ることはなかった。
「無理。今更そんな虫のいい話あるか。そして、分かっただろ。家族だった人間を失う辛さが。あの時の俺と父さんと同じように。俺の家族は爺ちゃんと婆ちゃんだけだ。」
真樹は最後まで早紀を突き放し続け、暗い表情で病室を後にしたのだった。久々の血の繋がった者との再会は、あまりにも後味が悪い結末になってしまった。
その後、菜穂の死亡診断書が作成され、数日後に葬儀も行われた。しかし、早紀の方はどんどん転落していった。真樹には苦労させないと言ってはいたが、元々の浪費癖が抜けていなかった上に、菜穂の治療費で貯金もかなり少なくなっていた。そして、菜穂をなくしたショックで肝硬変にも関わらず酒浸りの毎日に陥り、最早廃人同然と化していた。もっと幸せになりたいと真樹と夫を捨て、不倫相手の所に転がり込んだ早紀の末路は、余りにも因果応報と言える程最悪なものとなったのだった。
そして、ある日の朝。真樹はいつも通り家を出て、電車で学校に向った。そして、改札を出ようとした時…。
「真樹!」
後ろから声がしたので、振り返るとそこには慶がいた。しかし、いつもの様な笑顔ではなく、少し心配そうな表情をしていた。
「おう、オニィ。おはよ。」
「…。何か、色々大変だったね。」
「あぁ、でも大丈夫。菜穂は死んだが、全然会ったことないから妹って認識はなかったしな。」
「そうか。でも、良かった。」
「何が?」
「真樹があのお母さんの所に戻るって言わなくて!あんな勝手な人、見たことないよ。僕が同じ事されたら、即縁切り物だよ。」
「当然だ。不倫するやつと一緒に生活なんかしたくない。」
「うん。それでこそ真樹だよ!でも、何かあったら無茶せず僕にも相談してよね!力になるから!」
「ありがとう。オニィ、本当に良い奴だな!」
「そんな、照れるよ!」
そう話しながら、学校に向かう二人。因縁の相手との望まぬ再会、トラブルを乗り越えて、真樹はいつも通りの日常を過ごすのだった。
こんにちわ!
今までで一番後味が悪い結末になってしまいましたが、お許し下さい。
次回から新章です。
今度はまたスカッと成敗するお話を書きたいと思ってますので、よろしくお願いします!




