第195話 早紀、怒り爆発
こんにちわ!
7月初投稿です!
真樹が早紀と望まぬ再会をしてから数日がたった。彼は肝臓疾患を抱えた異父妹の菜穂がもう手遅れであると察しているものの、特に心を痛めている様子はない。そして、この日も普段通り放課後の野球部の練習に参加している。
「次はフリーバッティングだ!湯川、打席に立て!」
「はい!」
関屋に言われて、バッターボックスに立つ真樹。マウンドには伸治が立っている。
「行くぞー、真樹!」
「かかってこい!」
二人がそう言ってフリーバッティングが始まる。伸治もボール球が少なく球速も出ており、真樹の方も当たれば長打コースを連発。二人ともいい状態でフリーバッティングを終えた。そして、終了後にベンチに戻る際に伸治が真樹に話しかける。
「おい、真樹。聞いたぞ。お前の母ちゃんヤバい人じゃん。大丈夫か?」
心配そうにそう言う伸治に対し、真樹は冷静に答えた。
「心配すんな。あんなのは放っておけばいい。」
そして、ベンチにいた武司も険しい表情で言った。
「いや、でも普通にねぇわ。勝手に家出て、久々にあった最初の一言が肝臓よこせって。」
普通に考えれば当然の反応である。真樹も少し呆れながら言った。
「もう縁を切ったとはいえ、あんなのから生まれてきた自分が恥ずかしいわ。まぁ、今はもうどうでもいいけど。」
早紀は菜穂が治ったら真樹を息子として呼び戻し、家族3人でやり直す気満々なのだが、真樹の中ではとっくに親子の縁は切れており、やり直す気は全くなかった。そして、沙崙の方も真樹に問いかける。
「でも、その父親違いの妹はもう手遅れなんでしょう?真樹のお母さんはそのことに気づいてるの?」
沙崙に対し、真樹は真顔で答える。
「今んとこ気づいてないだろうな。でも、そろそろ現実を知るだろう。あそこまで来たら、医者もごまかす訳にはいかないだろうし。」
真樹は涼しい顔でそう言い、武司や伸治達と共に練習に戻った。
翌日の夜。御茶ノ水の大学病院では、真樹の予想通りの事が起きていた。
「ちょっと、どういう事よ!」
「ですから、菜穂さんにもう移植はできません!」
菜穂の病室の外の廊下で早紀が主治医と口論になっていた。
「移植すれば治るって言ったじゃない!」
「確かに状況次第では移植も考えましたが、症状の進行が予想以上に早く、もう手遅れです。」
医者は正直に、菜穂は既に治療不可能であると早紀に伝えたのだが、当然ながら早紀は納得がいかず、医者に食ってかかった。
「ふざけんじゃないわよ!人に期待させておいて、こんな事…。許さない!菜穂の替わりにあんたが死ね!」
「うわぁ、お母さんやめてください!」
早紀は近くにあった植木鉢を持ち、医者目掛けて殴りかかった。
「いい加減にしろよ!」
そんな時、後ろから声がした。制服姿の真樹が現れたのだった。
「真樹、あんた…。」
「やっぱりここにいたのか。ようやくそして現実を知ったみたいだな。」
真樹としては、早紀や菜穂に現実を伝えようと言うつもりで病院を訪れたのだが、既に医者に伝えられて早紀が暴れているところだった。そして、今度は真樹目掛けて食ってかかった。
「あんたが…あんたがすぐに移植に同意してくれれば、こんな事にならなかったのに!仮にも妹よ!何でそんなに冷たい事が平気で出来るのよ!?この人でなし!そんな風に育てた覚えは無いわ!」
「こっちもあんたに育てられた覚えはねぇ。それと、俺と初めて会った時からあんたの娘は既に手遅れだった。いい加減現実受け止めろよ。そして、あんたも親なら子供の最期を看取ってやれるよな?」
真樹にそう言われ、早紀は涙ぐみながら悔しそうに歯ぎしりした。菜穂を巡って、夜の病院はとんでもない修羅場になってしまったのだった。
こんにちわ!
さぁ、いよいよこの章も終わりです!
どんな結末になるのでしょうか?
次回もお楽しみに!




