第176話 雰囲気最悪
こんにちわ!
今日は一段と寒いですね!
クラゲに刺された真樹は病院に搬送され、辛うじて一命を取り留めた。そして、搬送された直後、海辺に残された他の生徒や教員たちの間では最悪な雰囲気が漂っていた。
「真樹、大丈夫かな?僕、心配だよ。」
「馬鹿な事言うなよ、鬼越。あいつが死ぬわけが無い!」
ずっと心配そうな表情を浮かべる慶に対し、杜夫はそう言った。伸治と武史も同様である。
「そうだ!冗談でもあいつが殺されるなんて、あってたまるか!」
「なんでクラゲが入ってたのかは知らんが、あいつが自分で入れた事じゃないのは確かなはずだ!」
二人は強くそういった。一方、裕也や他の女子たちは、真樹が救急車で運ばれるやいなや、何事もなかったかの様に遊びを再開した。
「よっしゃー!邪魔者湯川もいなくなったし、もっと遊ぶぞー!」
「うん!」
「行こー!」
「湯川がいないだけで、こんなに雰囲気良くなるのねー!」
「サイコー!」
人一人の命が掛かっているというのに、あまりに不謹慎とも言える裕也たちの行動。そして、そんな彼らに美緒と沙崙が鬼の形相で近づいてきた。
「ちょっと!何呑気に遊んでんのよ!今そういう場合じゃないでしょ!」
「同級生が倒れて、救急車で運ばれたっていうのに、よく平気で遊んでられるよね。」
2人は目を釣り上げながらそう言ったが、裕也は知ったこっちゃないと言う感じで言い返した。
「うるせー!知らねーよ!あんなやつ死んで当然だろ!せいせいするし、この状況が楽しくて仕方ないわ!」
周りにいた親衛隊の女子も裕也に続く。
「そうよそうよ!」
「湯川がいない方がいい!」
「クラゲだって、私達に嫌がらせするために湯川が捕まえたんじゃない?」
「それで失敗して刺されたのよ!」
「自業自得!」
「湯川ザマァ!」
裕也や他女子達はまるで聞く耳を持たない。そして、砂浜ではガイドの玉城とB組、C組の担任が深刻な様子で話し合っており、やがて生徒達の方へ呼びかけた。
「みんなー、集まってー!」
「お話があります!」
教師2人の声で全生徒が集まる。そして、玉城が話し始めた。
「えー、皆さん。誠に申し訳無いのですが、本日の海での自由時間はこれにて中止します。非常事態なので、何卒ご納得を。」
その言葉に裕也は怒りを爆発させた。
「ふざけんなよ、クソガイド如きていますが!やっと邪魔者いなくなって楽しい所だったのに!こっち来い、ぶっ殺してやる!」
「やめんか、大和田!」
殴りかかろうとする裕也をB組の担任が止めに入る。そして、他の女子たちからもブーイングが鳴り止まない。
「酷い、最低!」
「折角の海なのに!」
「鬼、悪魔!」
「先生たちも地獄に落ちろ!」
好き放題言う裕也達に、とうとうガイドの玉城の怒りが爆発した。
「やかましいっ!…いい加減にしなさい。同級生の命が掛かっているというのよ!今まで何回も修学旅行のガイドをしてきましたが、あなた達ほど非常識で態度が悪いのは初めてです。とにかく、こんな状況で続けるのは無理なんで、一度ホテルに引き上げましょう。いいですね、先生?」
「は、はい。」
C組の担任が首を縦に振り、大谷津学院一同は海岸から強制撤収になった。
「僕、もう修学旅行楽しむ気になれないよ。真樹がこんなことになって。」
「だな。俺もあいつが心配だし。」
慶と杜夫は肩を落としながらそう言った。美緒と沙崙はまだ怒りが収まらない。
「もう!みんな好き放題言って!今の状況分からないとか、頭おかしいんじゃない!?」
「同感!でも、真樹…死んじゃ嫌だ!絶対に助かってほしい!」
泣きそうになる沙崙を武史と伸治が慰める。
「大丈夫だって!お前を体張って助けてくれたやつだ!クラゲに殺されてたまるかよ!」
「そうだぜ。お前が信じてやらないでどうするんだよ。あいつは絶対に死なない!」
2人に慰められて、沙崙は少し落ち着いた。こうして最悪な雰囲気のまま、修学旅行3日目の自由時間は中断されたのだった。
こんにちわ!
今回も真樹の出番がなくてごめんなさい。
果たして、この修学旅行はどうなるのか?
次回もお楽しみに!




