第173話 真樹敗北
こんにちわ!
今、非常に…眠いです。
大谷津学院の沖縄修学旅行は3日目を迎えていた。裕也や取り巻きの女子と口論になる事もあったが、真樹はあまり気にせず楽しんでいた…筈だった。そんな真樹を悲劇が襲う。
「うぅ…痛い。い、意識が…息が…。」
うめき声を上げる真樹。ビーチバレーの後に、飲み物を取ろうと荷物置き場に戻って来たのだが、鞄に左手を入れた直後に激痛が襲った。そして、立ちくらみと呼吸困難を起こした真樹は、その場に倒れ込んで意識を失ってしまった。
「ねぇ。真樹遅くない?」
「水ついでにトイレにでも行ってるのか?」
砂浜では、慶と杜夫が中々戻ってこない真樹を心配していた。
「全く、どうせ気分変わって泳いだりしてるんじゃないの?もう、勝手なんだから!」
美緒がイライラした様子でそう言った。そして、伸治が痺れを切らした様子で言った。
「ちょっと、俺探してくるわ。早くしないと昼飯が遅れる。」
「あっ、私も行く!」
沙崙も伸治と一緒についていった。そんな時、武史が首をかしげながら言う。
「流石にこんな所でサボって、時間守らない奴じゃ無いと思うけどな。どうしたんだろ、あいつ?」
一同の疑問は後に最悪な形でわかる事となるのだった。
先程真樹を探しに出た伸治と沙崙は、荷物置き場に到着した。そして…。
「ねぇ、真樹いたわ!」
「何だ?何であんな所で寝てるんだ?」
二人は荷物置き場のテントの下で横たわっていた真樹を発見した。慌てて駆け寄り、声をかける。
「おい、真樹!何でこんな所で寝てんだよ?みんな心配してんだぞ!」
「真樹!どうしたのよ?!早く戻るわよ!」
二人が声を掛けても真樹に反応は無い。そして、伸治がある事に気付く。
「何だこいつ?鞄に手を入れたままノびてんぞ?」
「どういう事よ、この状況?」
沙崙も訳が分からないでいた。真樹は鞄に左手を入れた状態で横たわっており、2人は疑問に思いながら真樹の左手を鞄から引き抜いたのだが…。
「キャァァァ!」
「な、何なんだよこれ?!」
直後に悲鳴を上げた沙崙と、状態が全く読めずに戸惑う伸治。そして、2人の悲鳴を聞いた慶達が驚いた様子で駆け寄ってくる。
「ふ、2人共どうしたの?!悲鳴がこっちまで聞こえたけど?」
「一体何があったんだ?」
慶と杜夫が2人に問う。伸治と沙崙は言葉で説明できない程動揺した様子で、横たわる真樹を指差す。そんな2人を見て、美緒が苛立ちの表情をしながら真樹に近づいた。
「一体何が何よ?!ったく、もう!湯川君、こんな所で寝ちゃだめでしょ!早く起き…キャァ!」
ようやく状況を読めた美緒が悲鳴を上げる。そして、武史も驚きを隠せなかった。
「な、なんで…真樹の手にクラゲが絡みついてんだ?」
そう。最初に伸治と沙崙が驚いていた理由はここにあった。引き抜いた真樹の左手には、透明なクラゲが長い帯状の触手を絡ませていた。毒に侵されているのか、触手が絡まっている部分の真樹の皮膚は赤黒く変色し、巨大な水膨れのような物が出来ている。
「真樹!ねぇ、真樹!起きてよ!僕だよ!」
慶はすっかりパニックになった様子で真樹を起こすものの、全く反応が無い。そんな時、一同の様子を見に立石が現れた。
「みんなどうしたのよ?こんな所で騒いで?」
「先生、ま…真樹が…ヤバいんです!」
「私も訳が分かんないんです!」
杜夫と美緒もかなり戸惑いながら立石にそう言った。立石は首をかしげながら横たわる真樹に近づいたのだが、状況を見て驚きを隠せなかった。
「ど、どういう事よ、これ!?」
「水飲むって言って、中々戻って来なかったから探してたんですけど、来たらこうなってて。」
「起こしても無反応だったから、取り敢えず鞄から左手を抜いたんですけど、そしたらクラゲが絡まってたんです!」
伸治と沙崙が動揺した様子でそう説明した。立石もどうしてそうなったのかまでは理解が追いついていなかったが、慶達に指示を出す。
「取り敢えず、先生が救急に連絡します。誰か、ライフセーバーさん呼んできて!」
「は、はい!」
慶は立石に言われて、ダッシュでライフセーバーを呼びに行ったのだった。
一方、裕也やその親衛隊の女子達も荷物置き場で真樹が倒れて騒ぎになっているのを把握した。そして、最初に真樹の鞄に仕掛けをした女子が喜んでいる。
「やった、やった!上手く行ったわ!」
「見てよ。湯川の奴、完全に死んでるわ!このまま地獄に落ちてもらおうよ!」
女子達は左手にクラゲをつけた状態で、ぐったりと砂浜に横たわる真樹を見て喜びながらそう言った。そう、あの時真樹の鞄にクラゲを入れたのは彼女達である。前日の自由行動で砂浜で彼女は打ち上げられたクラゲを発見。その時、クラゲの毒で真樹を痛めつける方法を思いつき、近くに落ちていた空き瓶も拾い、海水と一緒にクラゲをその中に入れて持って帰った。そして、この日の自由時間に真樹に隙ができるのを見計らい、クラゲを仕掛けて今に至るのだった。
「いいね、いいね!学校の産業廃棄物が処分される瞬間は!」
嬉しそうにそう言ったのは、学校1モテるイケメン男子の裕也だ。彼も真樹を見下して嫌っており、そんな真樹が瀕死になっている事に喜びを隠せないでいた。
「ザマァ見ろだぜ湯川!女の子達に嫌がらせをしてきた天罰だ!このまま死んで、ずっと地獄で苦しんでろ!今まで女の子に不愉快な思いさせていた分な!」
「そうだ、そうだー!」
「湯川死ねー!」
裕也の言葉に他の女子達も賛同する。そして、裕也はクラゲを仕掛けた女子に近づき、彼女の頭を撫でたあと肩に手を置いて言った。
「良かったね、上手く行って!きっと、湯川を始末したいって言うみんなの願いが神様に届いたんだ。あのクラゲは神様の贈り物だね!感謝しようよ♡」
「いやーん♡裕也くんったら、ロマンチック!素敵♡」
「ねぇねぇ!帰ったら部屋でパーティーしよ!お菓子いっぱい買ってきたし!」
裕也の言葉に笑顔になった女子達は、真樹を追い詰めると言う目標が達成できたことで、すっかり祝勝会モードになっていた。そして、当の真樹は絶体絶命の危機に瀕しており、慶達友人は驚きと心配な気持ちで見守るしかできなかったのだった。
こんにちわ!
とんでもない展開になってしまいました!
真樹は果たして大丈夫なのか?
次回もお楽しみに!




