第155話 気持ちは旅行モード?
こんにちわ!
台風が心配ですが、大丈夫でしょうか?
真樹達大谷津学院の2年生(D組を除く)は、沖縄への修学旅行を控えていた。なので、出発日までの間は主に放課後を使って班別自由行動の打ち合わせや全員で回る場所に関する説明等がされる時間が設けられた。この日の放課後もその機会が設けられ、まずは移動時のバスの着席場所を決めていたのだが…。
「えー、じゃあこれから、那覇空港からホテルまでのバスの席を決めるわ。因みに、今後も何度かバスに乗る機会あるけど、決まった席順は変えないから、そこはよろしく!」
学級委員長である美緒は教壇に立って、真樹達にそう言った。席はくじ引きで決めるのだが、まずは車酔いしやすい人、その後女子、男子の順番で引く。美緒がくじの入った箱を取り出そうとしたとき、クラスの女子たちが一斉に声をあげた。
「はーい、その前にお願いがあります!」
「湯川君だけ、バスに乗せずに歩いてホテルまで向かわせた方がいいと思います!」
「あんな狭い空間で湯川君と同じ空気吸いたくありません!」
「車酔いが酷くなります!」
「湯川君は野球部で体力あると思うんで、歩かせても問題無いと思います!」
案の定、クラスの女子達は真樹が修学旅行に参加する事に嫌悪感を示しており、早速こんな声が上がった。横で聞いていた担任の立石は慌てた様子で言った。
「ちょ、ちょっとみんな何言ってるの?一人だけ置き去りになんてできる訳無いでしょ?!」
更に、慶と沙崙も加勢する。
「みんな酷いよ!あまりにも勝手過ぎるって!」
「そうよ!こんな露骨な差別するなんて、どうかしてるわ!」
あまりにひどい状況を見かねた杜夫が真樹に話しかける。
「おい、真樹。お前からも何か言ったほうがいいって。」
「知るか。正直どうでもいいし、付き合うだけ時間の無駄だ。」
真樹は少し呆れた様子でそう言った。それでも、クラスの女子達による真樹への排斥運動は止まる気配がなく、ついに立石が立ち上がり、右手で黒板横にある壁をバァンと思い切り叩いた。
「みんな、いい加減にしなさい!いくら羽を伸ばせる修学旅行だからって、何やっても許されるわけ無いでしょ!ましてや一人の生徒だけ差別するなんて!次勝手な事言ったら、うちのクラス全員参加取りやめて期間中は教室で補習にするから!」
立石のあまりの剣幕に教室内は一気に静まり帰ってしまった。そして、美緒は一息つくとクラスメート達の方を向き直って言った。
「そういう事みたいだから。身勝手な要求が出てくるなら容赦なく切り捨てます。じゃあ、気を取り直して、バスの席順を決めたいと思います!」
他の女子達はすっかり大人しくなり、バスの席順は決まった。その後、ホテルの部屋割も問題なく決まり、次は班別自由行動のスケジュールの話し合いになった。
「あーあ、疲れた。全く、何よみんな勝手に!」
美緒がぷりぷり怒りながら席に着いた。それを慶と沙崙が宥める。
「まぁまぁ、先生もああ言ってくれたし、取り敢えずお疲れ様!
「そうよ。これからゆっくり回る順番決めましょ!」
自由行動班のメンバーは班長の美緒を筆頭に真樹、慶、杜夫、沙崙の5人だ。因みに、バスの座席は美緒が一番先頭の立石の隣。真樹と杜夫が隣同士で前から3番目、向かって左側の列。慶と沙崙が隣同士で正樹達の斜め後ろの席に決まった。そして、沙崙の言葉を皮切りに真樹がスポットの希望を出した。
「じゃあ、俺から希望を出す。折角だし、琉球王国時代の遺跡が見れる所がいいかな。どうせなら本土じゃ見られない物見た方がいいだろ。」
真樹の意見を聞いたメンバー達は、特に反対する理由もなく、うんうんと頷いた。
「そうね、それはいいかもね。他に何か希望ある人いる?」
すると、杜夫と慶が手を上げて言った。
「はい、はーい!俺、サーターアンダギー食いたい!美味い店あるなら是非そこ行こうぜ!」
「僕、沖縄そば大盛りで食べたい!観光スポットとかはまだ思いつかないけど、折角の沖縄だし、お昼ご飯はそれ食べよ!」
食べる事が好きな二人らしい意見だった。美緒はフムフムと頷きながら、今度は沙崙に声を掛ける。
「沙崙はどう?どこか行きたい所ある?」
沙崙はうーんと少し考えながら、話し始める。
「そうね。私は沖縄らしいっていうか…琉球の民族衣装とか飾りとか見てみたいかな。初めての沖縄だし。」
抽象的だが、取り敢えず意見を出した真樹達。美緒は皆の意見を聞いた後、何かを手帳に描いて言った。
「分かったわ、意見ありがとう。じゃあ、具体的な場所とかは各自で調べて次の話し合いの機会に教えて。」
「「「「了解!」」」」
こうして、この日のA組の修学旅行の話し合いは、序盤に騒ぎがありながらも、最後は何事も無かったかのように終了した。
一方こちらはC組。こちらもA組と同様に修学旅行の話し合いが行われていたのだが、A組とは違う意味で騒ぎになっていたのだった。
「はーいはい!俺、一番後ろの真ん中がいい!あそこの席は、俺みたいに格好よくて人気あるものだけが座る権利があるから、当然だろ!」
そう大声で言ったのは裕也だった。バスの席を決めていたのだが、説明が始まった途端にそう声を上げたのだった。そして、C組の女子達は歓声を上げる。
「もちろんよ、裕也くん!」
「そこなら裕也くんがよく見えるしね!」
「ねーねー、裕也くん!私、裕也くんのとなり座りたい!」
最早、話し合いを通り越して、完全に裕也が好き放題やっている状態だ。それでも裕也は止まらない。
「オッケー!じゃあ、座りなよ!可愛い女の子達は俺の近くにしたいけど、どうしようか迷うなぁ!」
勝手に話を進める裕也を見かねて、C組の担任である中年の男性教師が注意に入る。
「お、おい。そんなにどんどん決めずに、もう少しゆっくり話合った方がいいんじゃないか?」
しかし、裕也は自分のやり方に意見されたのが面白くなく、教師を睨みながら詰め寄った。
「ああ?!無能先公の癖に、折角こっちが楽しく話してるのを水差してよ!邪魔すんじゃねぇ!」
「うわっ!」
裕也は男性教師の顔面に渾身の右ストレートを叩き込み、その後も4発ほど顔面にパンチを打ち続けた。男性教師はそのまま気を失い、裕也によって口をガムテープで止められ、手足を荷造り用の紐で縛られたあと、ベランダに放り出されてしまった。
「そこでくたばっとけ!話が終わったら解いてやるからよ!」
「流石裕也くん!」
「カッコいい!」
「ねぇねぇ、修学旅行のお話続けよう!」
「ごめんごめん!じゃあ、次は…。」
失神した担任教師を他所に、裕也は自分のバスの席や部屋割を全部自分の都合のいいように決めた。その後、話が終わり裕也によって担任教師の紐とテープは外されたがまだ目覚めず、そのまま放置された。それから、男性教師は教頭先生に発見されて意識を取り戻したが、裕也の攻撃があまりにも急過ぎて、失神する直前の事は何も覚えていなかった。
こんにちわ!
A組もC組もかなり荒れてましたね。
果たして修学旅行はどうなるのか?
次回もお楽しみに!




