第151話 尻尾は掴んだ?
こんにちわ!
今日は日差しが強いですね!
ここは、千葉市内にある警察署。姫宮の仲間である少女がナイフを持って慶を待ち伏せしていたが、杜夫に見つかってしまい、あっさり取り押さえられた。そして、こうして取り調べを受けているのである。
「で、君は何であんな所にナイフを持って来たの?」
「別にいいでしょ?ナイフくらい。」
「あのね、正当な理由もなく刃物を持ち歩くのは銃刀法違反になるの。それに、僕らが来たときにあんなに暴れててのも、やましい事があったからじゃないの?」
「うるさい!とにかく私は知らない!」
少女は一貫して容疑を否認し、呆れた警察もしばらく様子を見ようと、この日の取り調べは終わった。
「ありがとうございました。失礼します!」
出口にいた警察官にそう頭を下げながら警察署を後にしたのは杜夫だった。杜夫は刃物を持った少女の第一発見者として、警察署で事情聴取を受けていたのだった。
「あいつ、『真依の邪魔する奴は許せない』とか言ってたけど、多分姫宮の手先で間違いなさそうだな。」
勿論、杜夫はその事も警察に説明した。少女は容疑を否認し続けているが、バレるのも時間の問題だろう。
「後は、鬼越が姫宮に何かされないかと、真樹がまた無茶な事しないかが心配だな。」
複雑な表情を浮かべながら、杜夫は急いで慶のいる会場に向かったものの、既に大会は終了しており、会場に慶の姿は無かった。
その頃、真樹は西船橋駅の改札にいた。先程の美緒からのメッセージに返信した後に、『じゃあ、今から西船橋に来れる?』と来たので、そうする事にした。そして、しばらく待っていると私服姿の美緒が現れた。
「湯川君、わざわざ来てくれてありがとう。」
「全然。でも何でこんな遠くに?」
「ここ、私の地元なの。引っ張り出す様な真似して悪かったわね。」
「電車賃分と同額の何かを奢ってくれたら許してやる。」
「もう!相変わらず生意気なんだから!」
「つーか、話があるんだろ?早くどこかに行くぞ。」
「待って。まだ早いわ。もう一人来るから。」
「えっ?」
真樹が驚いた様子で首を傾げていると、美緒が誰かを見つけたのか、手を振りながら言った。
「あっ、来た来た!おーい、ここよー!」
そう言った美緒の所に、一人の男性が現れた。真樹達とほぼ同年代で、色白で小柄な眼鏡を掛けた少年だった。
「紹介するわね。彼は山中翔君。私と中学の同級生なの。山中君、こっちが湯川真樹君。今同じ高校に通っているのよ。」
「初めまして。山中翔です。よろしくお願いします!」
「湯川真樹です。こちらこそよろしく。」
山中と言う少年と真樹はお互いに挨拶した。そして、3人は駅の近くにあるファーストフード店に移動し、それぞれメニューを注文してテーブル席に着いた。
「で、俺を呼び出した理由は何だ?菅野。」
「私も、1度姫宮さんに殺されかけてスカート破かれたからね。一泡吹かせないと気がすまないわ。」
「まぁ、そうだな。で、この山中君を俺と会わせた訳は?」
「実は、山中君は春日部学院なのよ。」
美緒が説明すると、山中は少し頭を下げながら言った。
「そうなんです。僕、春日部学院の2年です。まぁ、お二人が言っていた姫宮さんはスポーツコースで、僕は普通コースなんでクラスは違うんですけど。」
山中の言葉を聞いた真樹は、ポテトを一本食べたあと、山中に質問した。
「そうだったのか。じゃあ率直に聞くが、姫宮は学校だとどうなんだ?まぁ、天才ランナーとしてマスコミに取りあげられているくらいだか、学校でもチヤホヤされているのはイメージ出来るが。」
真樹の言葉に山中は難しそうな表情で答えた。
「確かに、姫宮さんは学校内ではエリートですね。春日部学院はスポーツに力を入れているので、運動部が優遇されていますし、姫宮さんは先生からも評判がいいです。でも、僕は嫌いです。」
山中はキッパリとそう言い切った。そして、更に深刻な顔で続けた。
「姫宮さんの素行は最悪ですね。陸上の優秀選手である事を鼻にかけて、やりたい放題です。特に僕みたいな一般生徒を
を見下して、カツアゲとかの嫌がらせをしてますね。僕も何度か被害に遭いましたが、姫宮さんは学校期待の星な上に外面もいいから、先生方はみんな姫宮さんの言いなりなんです。」
山中の話を聞いた真樹と美緒は、渋い表情で溜息をついた。そして、山中は深刻な表情で携帯電話を取り出して、SNSアプリを起動させた。
「それとこれ、見てください。見つけたのは偶然なんですけど、姫宮さんの裏アカウントです。」
そこには「マイ姫」と言う名前のアカウントが表示されていた。山中は画面をスクロールすると、投稿されていた動画を再生した。
『イェーイ!大人になった気分ー!法律が何だー!私は陸上部のエースで将来の金メダリストよ!この位許せよ、クソ世間が!』
そこには、四人組の男女が、誰かの自宅で大量の缶チューハイとビールで酒盛りしている所が映っていた。顔が分からないよう、コテコテのギャルメイクを施しているが、声と言動で真樹達は姫宮だとすぐに分かった。更に、他の部員や一般生徒、そして、対戦相手の悪口も書かれていた。そして、真樹はある日の投稿を見た。
『中学の時、対戦したことある奴に会ったんだけどぉ〜、実力あるのに雑魚学校行ってて草wwwあんなのがいたんじゃ、陸上界は腐る!だから、すぐに抹殺するわ!覚悟しとけよ、オトコ女!ボクっ娘アピールとか全然可愛くないから!』
真樹はそのメッセージを見て、すぐに慶への誹謗中傷だど気づいた。そして、他にも目も当てられないような内容の投稿を見て、真樹と美緒はすっかり呆れ返ってしまった。
「思った以上に酷いな。天才女子高生ランナーが飲酒とか、世も末だな。」
「私、こんなろくでなしに殺されかけてスカート破かれたの?ホント、最悪!許さないわ!」
そんな二人に、山中は言った。
「菅野さん…なんか色々大変だったんだね。そして、湯川君でしたっけ?君が菅野さんを懲らしめてくれるって聞いたんだけど。」
真樹は山中の方を向いて言った。
「敬語は使わなくていい。そうだ。俺の陸上の友達が菅野諸共殺されかけた上に、家族まで嫌がらせに巻き込まれちゃったからな。成敗しないと気がすまないわ。俺に任せておけ。」
「そうなんだ。じゃあ、お願いします。正直、僕たち一般生徒じゃ、姫宮さんはもう手に負えなくて困ってた所なんだ。」
「分かった。なんとかしよう。これ以上、あいつの好きにはさせない。」
真樹と山中はそう言って握手をした。安心しきっている姫宮の裏で、真樹達は着実に彼女を追い詰めていたのだった。
こんにちわ!
思わぬ事実が発覚しましたね。
真樹達はどう出るのか?そして、慶の運命や如何に?
次回もお楽しみに!




