第144話 始まる受難
こんにちわ!
久々の本編投稿です!
終末に行われる、高校陸上の関東予選。埼玉の名門、春日部学院に通う天才ランナー、姫宮真依は今大会の優勝候補である。ある日の晩、練習を終えた彼女は自室に戻り、携帯電話で誰かと話していた。
「何?失敗したの?」
『ごめん、隣にそいつの友達がいて邪魔された。後、人も多かったからすぐに撤退したわ。』
「ちっ…まあ良いわ。それなら…この作戦でいこう。」
姫宮は電話の相手に何やら作戦を伝えている。
『それでいいの、真依ちゃん?』
「うん。今度こそ大丈夫。外堀埋めてメンタル痛めつければ、あいつは大会どころじゃなくなるから。」
『分かったわ。』
「じゃあ、宜しくね。」
そう言って姫宮は電話を切った。
「フフフ…覚悟しなさい鬼越慶。」
不敵な笑みを浮かべた姫宮は、そのままベッドに野転んだのだった。
翌朝。始業前の教室では慶と美緒が昨日のことを真樹、杜夫、沙崙に話していた。
「本当に意味が分からなかった!何で僕達が狙われたんだろう?」
「もう、最悪よ!お陰でスカート破けて恥ずかしかったわ!あのバイク、許さない!」
怒り心頭の二人。あの後、近くを通行人が警察に通報し、二人はバイクの特徴や、運転していた者に面識はないか等、事情聴取を受けることになった。よって帰宅時間は遅くなり、すっかり疲れ切ってしまった。
「にしても、白昼堂々人を轢きに来るなんて、ろくでもない奴だ。締めてやらなきゃな。」
「やめとけよ、真樹。どこのだれかも分からないんだし、下手すりゃお前が殺されるぞ。」
怒る真樹を杜夫が宥めた。沙崙は首をかしげながら、慶と美緒に質問した。
「でも変ねぇ。何で慶と美緒をバイクで轢こうとしたんだろう?事件の前後に何か変わったことはなかった?」
「いや、全然。皆目見当がつかないよ。」
「私もよ!むしろこっちが聞きたいくらいなんだから!」
慶も美緒も訳が分からなくなっていた。そんな二人に対し、真樹は真面目な表情で言った。
「とにかく、二人とも登下校時には気をつけた方がいいな。特にオニィはもうすぐ大会なんだし、怪我でもしたら下の子も無いからな。」
「うん、分かった。心配ありがとうね、真樹。」
「もしまたあの轢き逃げ犯が出てきたら、ガツンていってやるんだから!」
そう話しているうちに、始業チャイムが鳴って授業が始まったのだった。
放課後。
「じゃあ、俺達は先に帰るから気をつけろよ。オニィ。」
「うん。昨日家でそのこと話したら、お母さんが迎えに来てくれることになったから。」
真樹は慶にそう声をかけた。この日、慶は陸上部の練習で、帰る時に一人になった所を狙われる可能性があった。なので、慶の母親である悠が迎えに来てくれることになったのだった。
「ひき逃げ犯だか何だか知らないけどよ。」
「見つけたらただじゃおかねぇ!」
「とりあえず、菅野は俺達が護衛しよう!」
杜夫、武司、伸治が気合いっぱいでそう言った。武司と伸治も昨日のことを聞いて、二人のことを気にかけたのだった。その隣で、沙崙は美緒に優しく声をかける。
「大丈夫よ、美緒。これだけいれば犯人も簡単に出て来れないから。」
「ありがとう。なんか安心した。」
こうして、美緒は真樹達に護衛される形で帰宅し、慶は陸上部の練習へ行った。真樹達は美緒の護衛をしつつ、周りを見渡している。
「どうだ菅野?昨日お前達を轢いたバイクはいるか?」
「うーん、いないわね。さすがに二日連続同じ手は使わないか。」
真樹は美緒に質問した。どうやら昨日のバイクは来ていないようだった。
「にしても、こんな人通りが多い所で轢き逃げなんて、犯人も悪趣味だな。」
「ああ。でも、本当に目的が分からんな。」
伸治と武司はそんな事を話しながら、今回の事件に疑問を呈していた。そして、結局何も起こらないまま真樹達は駅に到着した。
「もう大丈夫よ。犯人は私の家なんて知らないだろうし、ここまでは追ってこないと思うわ。」
「分かったわ。でも気を付けて帰ってね。」
そう言って美緒は一人で京成成田の方へ向かい、沙崙が心配そうな目で見送った。そして、真樹達も改札に入り、沙崙は団地の方へ向かった。
「じゃあな。」
「うん、再見!」
こうして、美緒に関しては何事も無く護衛できた真樹だった。
約2時間後。練習を終えた美緒は、校門前にいた。これから母親である悠に来るまで迎えに来てもらうのだ。しばらくすると、1台の車が止まった。
「お待たせ、慶!」
「わざわざありがとう、お母さん。」
悠は慶を車に乗せ、家に向かって発進させた。運転しながら悠は心配そうな顔で言う。
「もう、本当に心配になっちゃったわよ。あんなに何かあったら、どうすればいいやら。」
「心配しないで、お母さん。これなら犯人も簡単に出て来れないから安心だよ。」
そう話しているうちに、慶の自宅が近づいてきた。悠が車をガレージに入れる為に減速させた時に二人は目の前の光景に目を疑った。
「ちょっ…。」
「何よ、これ…?」
慶の家の玄関前には大量のゴミが放棄されていた。おまけにドアには赤い油性ペンで「死ね!」と書かれており、二人は茫然とした。
「なんなんだよ、もう!どこのだれか知らないけど、僕に何の恨みがあるんだよ!」
「そんな…家出た時は何も無かったのに…。」
怒る慶に、怯える悠。そして、ここから悪夢がまだ続くのだった。
こんにちわ!
慶が大ピンチですが、どうなってしまうのか?
次回もお楽しみに!




