第141話 再会したあの子
こんにちわ!
すごい雨ですね!
大会本番を2週間後に控えた慶は、その週の部活動でいつも以上に精を入れて練習した。そして、特に大きなトラブルも無く1週間を終えた慶だったが、その週の休日。彼女は朝の成田駅にいた。
「おーい、真樹!」
彼女が呼ぶ先には、改札から出てきた真樹がいる、真樹も慶に気付き、軽く手を上げながら挨拶をした。
「おう、オニィか。相変わらず早いな!」
「そんなことないよ、早く行こう!」
慶はやけにご機嫌な様子で歩き始めた。真樹と慶は二人ともジャージにリュックサックという姿だが、これから近くの広い公園で走り込みをするのだった。二人は暇な時、時々こういう形で自主トレをしている。公園に着いた二人は、適当な場所を見つけて荷物を置き、準備運動を始めた。
「よーし、準備完了!いつでもいけるよ!」
「俺もだ。オニィ、あんまり飛ばし過ぎて怪我すんなよ!」
「大丈夫。心配しないで!」
「じゃあ、行くか!」
「うん!」
こうして、快晴の空の下、二人は元気に走り始めたのだった。
「ふぅ、走った走った!うん、状態もよさそうだな!」
「ならよかった!オニィの優勝を見られるのも近いな。」
「やめてよ、まだ気が早いって。そりゃぁ、優勝したいけどさ!」
走り終えた二人は、ベンチで休憩を取りながらそんな話をしていた。そんな時、予想外の人物が二人に介入してくる。
「あれぇ、誰かと思ったら鬼越慶じゃん。」
二人が振り返ると、白いジャージを着た少女が立っていた。長身でかなりバランス良く鍛えられている体躯、セミロングの髪をポニーテールに纏め、スポーツバッグを肩に掛けていた。走やら系のことを知っているみたいだったが、慶の方も彼女を見て思わず尋ねた。
「姫宮さん…。何でここに?」
真樹の頭の中は、現在?マークでいっぱいだった。そして、その姫宮という少女は高らかに笑いながら話し始める。
「私?実はさっき、部員みんなで世界選手権でフランスに行く先輩を成田空港でお見送りしてたの!今は自由行動でぶらぶらしてたら、あんたがいたから声掛けたって訳!」
姫宮という少女の話し方は、まるで慶を見下してマウントを取っているようだった。姫宮の方は、まだ話を続ける。
「どう?あんたのいる大谷津学院じゃ、世界で戦える人いないからあり得ない話でしょ?私もいずれ世界大会行くつもりよ!次の関東予選で、あんたを叩きのめしてからね!」
びしっと慶に向かって指をさしながら、姫宮は言った。一方の慶は、少しムッとしながら話し始める。
「悪いけど、僕は負けないから。特に姫宮さんみたいなマウントを取って人を見下すような人にはね!」
「はいはい。せいぜい悪あがきしなよ!ポンコツ校で錆ついたあんたが、この名門、春日部学院の優秀なコーチ陣と整った設備によって選手として完成した私に勝てる訳ないでしょ!」
彼女は自信満々にそう言った。春日部学院は、名前の通り埼玉県春日部市にある私立学校だ。昔から全国各地から優秀な選手が集まり、各運動部の強豪として知られている。特に陸上部は日本一までと言われ、男子はマラソンと競歩でインターハイ5連覇、女子も短距離のすべての種目で1位~3位を独占した年もあった位だった。しかし、あまりに失礼な言葉を連発する彼女に、真樹はムッとしながら彼女に言った。
「なぁ、あんた。名門だか何だか知らないけど、随分失礼じゃないか?オニィは陸上が好きで本当によく頑張っているし、次の大会に向けて調整もしっかりしている。悪く言われる部分は一つも無い!」
「真樹…。」
真樹がかばってくれて、慶は思わず声が出る。しかし、彼女は真樹を見るなり笑いながら言った。
「あ、あんた!甲子園でゴミ投げられた人だ!そりゃ、そうよね!雑魚学校が甲子園のアイドル打っちゃ、空気読めなくて叩かれるわよね!」
「姫宮さん!そんな言い方は無いんじゃないの?!」
真樹の悪口を言う姫宮に、慶は怒りながら詰め寄った。真樹は慌てて制止したが、それでも姫宮の悪口は止まらない。
「あ~あ、残念だわ鬼越慶!私の良きライバルになるはずだったあんたが、こんな雑魚学校でこんなクズ男とツルむ程堕落してたなんて。」
「いい加減にしてよ!」
「オニィ、止めろ。もういい。」
姫宮に対して怒りがまだ収まらない慶を、真樹は必死に宥める。尚も、彼女は勝ち誇ったように話を続けた。
「とにかく。私はあんたとは違う!あんたみたいに才能を腐らせて、人生無駄に生きる奴に絶対に負けない!次の大会、私は優勝して全国行く!あんたに大恥かかせて、陸上人生終わらせてやるから!」
それだけ言うと、姫宮は去って行った。慶はまだ心の中で何かがグツグツと煮え立っており、真樹は必死で宥めて、慶の怒りを鎮めることしかできなかった。
先程、書いてる途中に何故か文章が全部消えるトラブルがあり、慌てて書き直しました。
次回は起こらないことを祈るばかりです!




