第137話 もうすぐ2学期
こんにちわ!
5月最初の投稿です!
8月31日。世間でいえば夏休み最後の1日である。様々な人が最後の思い出作りをしようとしている中、一人の男が都内のとあるオフィスで作業をしていた。
「ふぅ、やっとできた。」
仕事を終え、コーヒーを口にする男性。彼は飯田悟といって、このオリエント通信所属のジャーナリストだ。彼は取材していた大谷津学院野球部の臨時マネージャーで台湾出身の陳沙崙の甲子園出の記事を書いていたのだった。この日彼の上司は不在だったが、飯田は出来上がった記事のサンプルを上司のパソコンに送り、念の為自分のパソコンにもパックアップを取ると、片づけをしてオフィスを後にした。
「そう言えば、みんなはもうすぐ新学期か。湯川君や陳さん達は短い夏休み楽しんでるのかな?」
甲子園で暴徒化した女性ファンの被害者だった真樹達を心配していた飯田だったが、最後まで毅然とふるまっていた彼らを思い出すと、すぐに安心した気持になった。
一方こちらは真樹の家。彼は夏休み最後の1日を祖父母と共に静かに過ごしていた。時刻は丁度お昼前。真樹は祖父の正三と共に、刑事ドラマの再放送を見ていた。その時…。
「2人とも!素麺出来たよ!」
「「はーい!」」
祖母の多恵が出来上がったそうめんを持ってくる。配膳を済ませ、再燃はできたての素麺を食べ始めた。
「「「頂きます!」」」
平和なお昼を過ごす真樹一家。そんな時、正三が真樹に言った。
「それにしても真樹、甲子園すごかったな。強豪校のエース相手にホームランなんて、大したもんだ。」
「いやぁ、偶々だよ。」
褒める正三に対し、真樹は謙遜しながら言った。一方の多恵は申し訳なさそうに言った。
「ごめんね、真樹。見に行ってあげられなくて。私達二人とも足がねぇ。本当にごめんなさい。」
「大丈夫。それに、あんなことが起っちゃったから、二人が家にいてくれてよかったよ。」
真樹はそう言った。正三と多恵は足があまりいい状態ではなく、長距離の移動や大規模な人ゴミの中の移動はかなり負担がかかる。そう言う訳で甲子園はテレビで観戦していたのだったが、真樹は暴徒化した女性ファンの騒動を思い出すと、二人が巻き込まれなくてよかったと思った。そして、正三が険しい表情で言う。
「全く、けしからん奴らだ!真樹が真剣勝負をしているのに、気に入らないからってあんなことをするなんて!親の顔が見てみたい!」
「いいよ、爺ちゃん。あんなの相手にするだけ時間の無駄だよ。」
真樹はそう言った。結局現行犯逮捕の他、防犯カメラや他の観客の目撃証言で身分を特定されて逮捕された者も出て、合計で約40名が逮捕されたのだった。
「それより真樹、あんた明日から学校でしょ?宿題はもう大丈夫なの?」
「婆ちゃん、大丈夫だって。とっくに終わってるよ!」
真樹は多恵にそう言った。真樹は宿題は早めに終わらせるタイプで、甲子園への出発前も半分以上終わらせており、残りは向こうに滞在中に空き時間を利用して武司や伸治と共に終わらせたのだった。こうして、真樹の夏休み最後の1日は何事もなく平和に終わるのだった。
所変わって、ここは市内のカラオケボックス。ある一室に3人の少女が来ていた。
「イェ~イ♪」
マイクを片手にノリノリで歌っているのは慶だ。そして、美緒と沙崙は楽しそうに温度を取っている。この三人、夏休み最後の思い出づくりの為に遊びに出ていたのだ。最初は大型ショッピングモールで映画や買い物などをしており、昼食後はカラオケボックスに来たのだった。慶は、hitomiのLOVE2000を歌い終えると、美緒にマイクを渡した。
「はい、美緒!」
「ありがと!見てなさい、私の歌唱力!」
そう言うと美緒はE-GirlsのFollow Meを歌い始めた。ついでに、キレッキレのダンスも披露していた。歌い終えた美緒は少し疲れたのか、息を切らせながら沙崙にマイクを渡す。
「はぁ…はぁ…疲れた。はい、次。」
「謝々!」
沙崙はマイクを受け取ると、台湾のヒット曲…ではなくTVアニメ『機動恐竜ダイノイド』のOPを歌い始めた。因みにこのアニメ、真樹の手引きで彼の野球部の先輩の姉である稲毛智子がヒロインとして出演している。その後も安定して人気が伸びており、今ではすっかり国民的アニメの仲間入りを果たして、現在も放送中だ。
「すごいね、沙崙。ダイノイド好きなんだ!僕も好きだから嬉しいな!」
「うん。台湾でも人気よ、ダイノイド。面白いし!」
慶は嬉しそうに沙崙にそう話した。その後、彼女達は夕方まで歌い続け、最後に3人でAdoのうっせえわを歌って店を後にした。
「あ~楽しかったわね!なんか、夏休み終わっちゃうの寂しいな。」
美緒は伸びをしながら寂しそうにそう言った。沙崙の方は満足げな様子だ。
「私も楽しかったわ。みんなに甲子園にも連れてってもらえたし。」
「あ、そうだね!お疲れ様!」
慶は沙崙にそう優しく言葉をかけた。しかし、そんな時に慶の頭にあの言葉が響いた。中学3年の時に言われた『向上心が無い』という言葉を。どうしても引っかかるので、慶は美緒と沙崙に尋ねる。
「ねぇ。美緒、沙崙。」
「ん、どうしたの?」
「慶、何かあった?」
「僕って、向上心ないように見える?」
慶の質問に対し、二人は一瞬ポカンとした。そして、二人とも首を横に振った。
「何言ってんのよ!1年ころから陸上頑張ってんじゃない!」
「慶は一生懸命だと思う。誰からそんなこと言われたの?」
「いやぁ、中学の頃にそんなこと言われた気がするんだけど、その言葉だけ頭から離れなくって。」
「そんな昔のこと気にするだけ無駄よ!今を生き、未来を見なくちゃ!」
「美緒の言う通り!過去を引きずってもいい事なんか何も無いわ!」
「そうだね。フフ…ごめんね変な事聞いて!」
慶は笑顔で二人にそう言い、美緒と沙崙と共に帰り道を歩いて行ったのだった。
こんにちわ!
この章はは慶中心のお話です!
今後もご期待下さい!




