第131話 悪夢再び
こんにちわ!
いきなり雪が降ってびっくりです!
大谷津学院の夏の甲子園2回戦。相手は強力打線が売りである山形の強豪、米沢文化高校。そんな学校相手に大谷津学院は初回に2点を先制し、先発マウンドを任された伸治も危なげなく相手を3人で抑え、2回表の攻撃に入った。そして、この回の先頭バッターは真樹だった。
『7番、ファースト。湯川君。』
名前を呼ばれた真樹がゆっくりと打席に向かった。この日は何も起こらない…そう思っていた矢先にそれは起きてしまった。
「「「「Boooooooooooo!」」」」
アルプススタンドからは大勢のブーイングが響き渡る。全て若い女性の声で、その後口汚い悪口も真樹に投げかけられた。
「バカ野郎、引っ込め湯川!」
「空気の読めない屑が!」
「試合が終わったら殺してやる!」
「さっさと三振しろ!」
「ピッチャー、湯川の頭に当てろ!」
まだ序盤にもかかわらず、酷い悪口が響き渡る甲子園。これにはアナウンサーもさすがに苦言を呈した。
『1回戦サヨナラホームランの湯川に対し、野次が飛ばされています。私としても、そのような行為は止めていただきたい限りです。』
一方、真樹はヤジを浴びせられていても冷静さを保っていた。そして、打席に立つと米沢文化のピッチャーに対して申し訳なさそうに言った。
「済まない、こんな事になって。でも気にせず投げてくれ。」
「あ、ああ…。」
米沢文化のピッチャーもすっかり困り果てていた。そして、2ボール2ストライクからの5球目…。カキーン!
「あっ!」
「よし!」
真樹の打球は1、2塁間を破ってシングルヒットになった。
『打った!湯川ライト前ヒット。野次にも負けず、今大会好調です!』
大谷津ベンチでも武司と沙崙が喜んでいた。
「よっしゃー!真樹、ナイスバッティング!」
「いいわよー!真樹は野次なんかに負けないわ!」
シュウ釣りいした真樹に対し、相変わらず女性からの野次が響き渡る。その後、8番バッターの送りバントが決まり、9番であるピッチャーの伸治の打順になった。
「おりゃー!」
伸治は叫びながら相手ピッチャーの初球を振り抜いた。打球はセンターの頭を抜けて長打になり、当然ながら真樹は2塁から一気にホームベースに帰ってきた。
『打球はセンターオーバー!2塁ランナーの湯川は一気にホームイン!ピッチャーの中山、バットでも結果を出しました!大谷津学院、追加点です!』
3-0と試合は完全に大谷津学院のペースになった。ホームに帰ってきた真樹がベンチに戻ろうとしたその時…。
「痛っ!」
パリーンという音を響かせ、真樹の膝に何かが当たった。真樹が地面を見ると、そこには割れたガラス瓶が落ちていた。当然ながら、激こうした女性ファンが真樹めがけて投げ込んだものである。これに対し、先程まで冷静だった真樹も差しがに堪忍袋の緒が切れた。
「おい、何しやがる!お前らは観戦マナーという言葉を知らないのか!」
ベンチに戻りながらバックネット裏にそう叫んだ真樹だったが、逆にそれが火に油を注ぐ結果になってしまった。
「うるさい!お前のせいだ!」
「お前が残って、三条君が初戦敗退とかあり得ないから!」
「棄権しない方が悪いのよ!」
「さっさとくたばれ、悪魔め!」
女性ファン達はそう野次を飛ばしながら更にグラウンドにゴミなどを投げ込み、大谷津学院のベンチ前は滅茶苦茶に物が散乱していた。そして、怒る真樹を宥めようと武司と沙崙が出てきた。
「うわっ!ま、真樹!とりあえず落ち着いて!一旦ベンチに戻ろう、な!」
「ちょっと、あんた達!いい加減にしなさいよ!」
沙崙が怒りながらスタンドの女性ファンに注意した。しかし、女性ファン達は更に激高して野次を飛ばし続ける!
「うるさい、ブスマネージャー!」
「あんたには関係ないでしょ!」
「引っ込んでろ!」
それでも物は投げ込まれ続け、野次が収まる気配もない。そして、遂には関屋も含む大谷津野球部が全員出てくることになった、。
「皆さん、止めて下さい!彼は何も悪いことはしていない!こんなこと、よくないですよ!」
関屋が必死に呼びかけるも、女性ファンの耳には届かない。そして、見かねた主審が試合をいったん中断した。
「タ、タイムタイム!皆さん、グラウンドに物を投げ込むのはやめて下さい!」
最早試合は収拾がつかない状態になっていた。
一方、応援席では杜夫が唖然とした様子で言った。
「おいおい、何だよこれ?こんなふざけたことが起きて良いのかよ?」
それに対して、立石も呆れた声で言った。
「もう。何なの、この民度の低さは?親の顔が見てみたいわ!」
その時、大谷津学院の応援席でも事件が起こった。
「あ!あいつら、大谷津学院の応援団や!」
「ホンマや!よ~し、シバいたろ!」
一部の暴徒化した女性ファン達が、今度は大谷津学院の応援席に目を付け、押し寄せてきた。そして、手に持っていたゴミなどを一斉に投げ込んでくる。
「うわっ!おい、止めろ、何しやがる!」
「うっさい、出てけ!」
杜夫が投げつけられたものを避けながらそう言ったが、女性ファンは怒りながら攻撃を続ける。あまりにもひどい様子に立石が怒り始めた。
「あんた達、いい加減にしなさいよ!こんなことしていいと思ってるの?」
「は?ババァが口答えすんな!」
女性ファンは立石に対しても口汚い言葉で応戦した。そして、次に吹奏楽部とチアリーディング部1年生たちにも魔の手が襲いかかった。
「あいつらも大谷津応援してるで!」
「やっちまえ!」
女性ファン達は1年生たちに襲いかかり、胸倉を掴んだり殴る蹴る等の暴行を加え始めた。
「きゃぁ!」
「何すんのよ、やめて!」
大神と宮下は思わず悲鳴を上げた。他の部員達が暴行を受けているのを杜夫と立石が必死に止めようとしている時、取材中の飯田が声を上げた。
「皆さん、これは立派な犯罪です!これ以上続けるなら警察呼びますよ!」
しかし、暴徒化した女性ファン達に飯田の声は届かない。飯田は呆れた様子で携帯電話を取り出し、警察に通報したのだった。1回戦に続き、大谷津学院の甲子園は前代未聞大騒ぎになってしまったのだった。
こんにちわ。
更なる大騒ぎになりましたが、果たして騒動は収まるのか?
次回をお楽しみに!




