表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode8 大波乱の甲子園
126/328

第124話 開幕前夜

こんにちわ!

今日は滅茶苦茶寒いです!

 今年度の夏の甲子園、全国高校野球選手権の開幕を前日に控えたこの日、大谷津学院の甲子園での活躍を一目見ようとやってきた者が少なからずいた。最初に地元成田から関西に到着したのは、飛行機でやってきた慶と美緒だった。

「ふあぁ、やっと着いた!」

「ええ。でもここからホテルにチェックインしないとだめね。」

 伊丹空港に到着した二人は、そんな事を話しながら到着ロビーから出てくる。出場校の宿泊地はほとんど大阪市内だが、その影響もあって大阪ではホテルが取れず、結局二人は尼崎で宿泊する事になった。大阪モノレールに乗り、電車を二回乗り継いだ後、二人は尼崎市内のホテルに無事チェックイン。部屋に荷物を置いて少しの時間くつろいだ。

「そう言えば、真樹達は今日は予行演習だよね?いよいよ明日の甲子園が現実のものになるのか。」

「そうよ。私も最初は信じられなかったけど、クラスメートが出るんですもの。応援しない訳にはいかないわ。」

「そうだね。僕も楽しみだなぁ。」

 二人は荷物の整理をしながら楽しそうにそんな話をしたのだった。


 一方杜夫はというと…。

「着いた!よーし、次はチェックインだ!」

 無事近鉄線の難波駅に到着した。杜夫もホテルに向かう所なのだが、慶達と同じ理由で大阪市内や甲子園周辺のホテルが取れず、豊中市内のビジネスホテルに宿泊する事になった。難波から更に電車で移動し、ホテルにチェックインした杜夫は早速ベッドにダイビングした。

「あー、明日は真樹たちの活躍が見れる!楽しみー!」

 微笑みながらそう言った杜夫は、更に溜息交じりに呆れるように付け加えた。

「しっかし、バカだなぁ。吹奏楽部もチア部も上級生がボイコットするなんて。ただただ感じ悪いだけじゃん。1年の子達も、あんなのと一緒にやってたんじゃ、たまったもんじゃないな。」

 そう皮肉りながら、杜夫は部屋に置いてあったお茶を入れて飲んだ。


 そして、先程杜夫が触れた吹奏楽部とチアリーディング部の1年生達は、立石引率の元無事に新大阪駅に到着したのだった。

「あー、疲れた。やっぱりのぞみの方がよかったわ。」

「贅沢言わないの。新幹線代確保できただけでもありがたいって思わないと!」

 ぐったりとした宮下に対し、大神がそう諭した。1年生が全員こだまから下車した所で、立石が一度集合をかける。

「みんな、楽器とか衣装とか忘れてないわよね。」

「はい!」

「大丈夫です。」

 チアリーディング部の持ち物は応援時の衣装だけで済むのだが、吹奏楽部となると演奏する為の楽器が必須だ。幸い大神はトランペット、残りの部員もホルン、サックス、フルートと持ち運びが可能な大きさだったので、配送の手間は省けた。

「じゃあ、ホテルに移動するわ。疲れてるかもしれないけど、もう少しよ!」

 そう言って立石と1年生たちは新幹線の改札から出て福知山線に乗り換える。立石は楽器の運搬なども考えて、少しでも球場から近い場所を探し、何とか西宮の隣の芦屋市内のホテルを確保できたのだった。そして、一行はホテルに到着したが、辺りはすっかり暗くなり、全員すっかり疲れ切っていた。

「疲れたわよね、みんな。明日もあるんだし、お部屋に着いたらゆっくり休みなさい。」

「「「はい。」」」

「「「わかりました。ありがとうございます、先生。」」」

 チェックインの済ませて、1年たちはぞろぞろと部屋に入っていく。立石も自分の部屋に入ると、ベッドに腰掛けながら一息ついた。

「ふぅ。いよいよね。湯川君、頑張るのよ。みんなから嫌われてても、私はあなたが努力家で悪い子じゃないってわかってるんだから。」

 そう言いながら立石はスマートフォンを開き、甲子園に関するニュース記事を読み始めたのだった。


 そして、予行演習を終えた大谷津学院野球部は、宿泊地である大阪市内のホテルに戻ってきた。そして、一度部屋に戻って休憩を挟んだあと、ミーティングルームに集まって明日の試合に関する話をした。関屋がホワイトボードの前に立って口を開く。

「みんな、今日は予行演習お疲れ様。早速だが、明日の相手である洛陽高校の分析を始めよう。」

 そう言って関屋はホワイトボードにペンを走らせる。書いたのは洛陽高校の地方予選での得点数と投手陣の失点数だった。

「地方予選での平均得点は6点とそこそこだが、失点数は決勝までの5試合でわずかに2点だ。つまり、圧倒的投手力で相手打線を寄せ付けないチームと言っていいだろう。そして、明日の先発は、初戦勝つために間違いなくエースの三条が来るはずだ。」

 三条、という人物の名前が出た瞬間、部員たちの表情が一気に強張った。

「三条ってあの…。」

「怪物1年て言われてた…。」

 1年生の丈と登戸が思わずそう言った。洛陽高校のエース、三条(さんじょう)友明(ともあき)は、昨年夏の大会で故障したエースに代わり、1年生ながら急遽先発。そして、初戦を完封し、決勝までの5試合で3完封、失点もわずか2と言う圧倒的な投球を見せた。決勝戦では爪を割ってしまった影響で降板し、チームも敗れたものの、その1年生離れした投球に世間は度肝を抜かれた。春の選抜にも登板し、2回戦でノーヒットノーランを記録してチームのベスト4進出にも貢献した。投球スタイルは、最速156km/hのストレートに切れ味の鋭いカーブやシュート、打者が直球と間違えるほどの高速フォークが武器である。

「あーあ、マジか。いきなりヤバいのが来ちゃうのか。」

「あんなのが俺たちと同い年なんて信じられない。化物だよ。」

 武司と伸治はすっかり弱気になっていた。しかし、そんな二人に真樹は立ち上がって言った。

「おい、二人共!落ち込むな、むしろ喜ぶべきだろ!」

 真樹の言葉に二人はきょとんとした。

「真樹?お前、どうしたんだ?」

 武司は訳が分からないと言いたげな目で真樹にそう言った。真樹がなおも続ける。

「そんなすごいピッチャー、俺達が打ち崩したら大金星じゃねーか。いきなり打てなくても、チャンスがない訳がないから、隙をついていけばいい、そうだろ?」

 熱くそう言った真樹に対し、武司達は難しい顔をしていた。だが、キャプテンの堀切も立ち上がって言った。

「そうだ。真樹の言う通りだ。確かに俺たちじゃ力不足かもしれないが、せっかく甲子園に出れたんだ!少しでも可能性があるなら、それに賭けるべきだ!そうですよね、先生?」

 関屋はうんうんと頷きながら言った。

「その通りだ。だから俺はこうしてミーティングしている。いくら相手が強くても、俺はみんなに甲子園で楽しく野球をやってもらいたい。緊張して力が発揮できず、後悔するようなプレーは絶対にするな!俺からのお願はそれだけだ!」

 関屋の言葉に、部員たちは心を打たれたような感じだった。マイナスな雰囲気が少し晴れた所で、大谷津学院野球部は持ってきたパソコンで洛陽の予選での様子や昨年度の試合を見て、対策を練ったのだった。こんな感じでミーティングは終了し、部員たちは部屋に戻る事に。その途中、沙崙が真樹に話しかける。

「ねぇ、真樹。」

「ん、どうした?」

「ずいぶん自信たっぷりだったけど、何か対策があるの?」

「さぁな。正直、実際の球を生で見ないと分かんないかも。」

 真樹の言葉に、沙崙はきょとんとした。

「無いんじゃん!」

「今はな。でも明日どうにかすればいいっしょ。」

「呑気ね。」

「でもこれだけは言える。何があっても全力でいけば、きっと突破口が見つかる。なにせ、お前のマネジメントもあるしな。」

 微笑みながら真樹は沙崙にそう言った。沙崙は少し間をおいて、真樹に微笑み返しながら言った。

「そう言ってもらえると嬉しいわ。だったら、私も真樹を信じて良いかな?」

「ああ。俺も武司も伸治も、先輩達もいる。とにかく頑張ろう!」

 モチベーションが少し上がってきた大谷津学院野球部は、翌日を楽しみに待ちながらその日を終えたのだった。

こんにちわ。

話しの進みが遅くてすいません。

次回はいよいよ開幕です!

お楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ