第123話 落ち込まないで
おはようございます。
今日はいい天気ですね!
先程行われた甲子園の対戦相手を決める抽選会の本抽選にて、全ての初戦カードが決定した。大谷津学院は初日の第3戦、対戦相手は昨年夏に準優勝、そして春の選抜でもベスト4に選ばれた強豪校である京都の洛陽高校に決まった。その後、初戦で当たるキャプテン同士の挨拶が行われ、カメラの前に堀切と洛陽高校のキャプテンで昨年夏の大会でホームラン王にもなった橋本が並んだ。
「大谷津学院の堀切です。宜しくお願いします!」
「洛陽高校主将の橋本です!お互い頑張りましょう!」
学校名が書かれた看板を持ち、両校キャプテンが握手した。その後、お互い簡単なインタビューに答え、それぞれ撤収する事になったのだが、帰る前に一度関屋が真樹達を集めた。
「えー、と言う訳で我々の初戦の相手は、京都の洛陽高校に決まりました。昨年度準優勝、今年の春の選抜でもベスト4の強豪校ですが、頑張っていきましょう。」
関屋はそう言ったが、堀切の方は先程の挨拶時の元気はどこえやら…この世の終わりのような表情をしていた。
「おい、堀切。いつまで沈んでんだ?!決まっちゃったものはしょうがないんだから、いつも通りプレーするしかないだろ!」
「で、でも…くじを引いたのは俺ですし、しかもよりによっていきなりあんな強い学校と当たるとなるとやっぱり焦ります…。」
落ち込む堀切を関屋が励ます。そして、真樹の方も何故かやる気満々だった。
「そうですよ、先輩!こんな強い相手に勝てたら、大金星じゃないですか!俺は勝ちにいきたいですよ!」
「どうしてお前はそんなにやる気満々なんだよ?」
武司が不思議そうに尋ね、真樹が微笑みながら答える。
「終業式の時に停学明けの大和田や、クラスの女子達に絡まれてな。『調子に乗ってる』だの『さっさと負けろ』だのボロクソに悪口言われてきたよ。だから、あいつらが言ったことと逆のことをしてやりたいのさ。」
そう自信満々に言ったものの、伸治からは憐みの視線を向けられた。
「な、何か…お前を見ていると悲しくなってきたよ。ま、まぁ理由がどうあれお前がやる気なら俺も頑張ろうかな。」
そして沙崙の方もやる気に満ち溢れていた。
「皆さん!真樹の言う通りですよ!県予選だって、格上の相手に勝ってここまで来たじゃないですか!頑張りましょうよ!」
沙崙の言葉に先程まで気分が沈んでいた堀切達の目に光が戻り始めた。そして、最後に関屋が言った。
「その通りだ。俺は仮に20-0で負けたとしても、お前達がみんな最後まで全力で楽しんでプレーしたなら文句は言わん。当たって砕けろ精神で行こう!」
「「「はい!!!!」」」
部員たちにやる気が戻った所でこの日は解散し、全員ホテルに戻ってゆっくり休んだのだった。
翌日。真樹立ち大谷津学院野球部のモチベーションをさらに上げる出来事があった。
「おお…!これが…!」
「甲子園…本物だ!」
伸治と武司が驚きの表情でそう言った。そう、大谷津学院野球部は今甲子園球場に来ているのだった。武司と伸治は初めて来た甲子園球場に驚愕していたのだった。
「そうか。俺達はここであの洛陽と明日戦うのか。楽しみだなぁ。」
「私もよ、真樹。日本に来て初めて来た野球場が甲子園なんて、嬉しいわ!」
真樹は目を輝かせ、沙崙もご機嫌な様子だ。なぜ大谷津学院がここにきているのかと言うと、甲子園の開会式の予行演習が行われるからだ。なので、周りを見ると既にほかの学校の野球部も集合して予行演習に備えている。
「各校の皆さん!これから中にご案内しますので、名前を呼ばれた学校は順番に入場して下さい!」
入口にいた係員がそう言った。各校が順番に名前を呼ばれ、大谷津学院もすぐに呼ばれて球場入りした。その後、入場に関する注意点や説明を受け、大谷津学院のプラカードを持った女子学生の元に案内された。
「大谷津学院の皆さん、初めまして。私、兵庫県立新西宮高校2年の高橋と申します。当日もよろしくお願いします。」
「大谷津学院監督の関谷です。」
「主将の堀切です。宜しくお願いします。」
当日入場行進で先導する女子学生に関屋と堀切が挨拶する。一方、武司と伸治が何やら嬉しそうな顔でひそひそと話していた。
「なぁ、あの子…。」
「ちょっと可愛くね?」
「声掛けたいな。」
「俺も。」
しかし、そんな不純な話を真樹が聴き逃すはずもなく、小声で二人に説教した。
「おい、これから予行演習だってのに、何下品な話してるんだよ!」
真樹に言われて俊とする二人。そして、いよいよ入場練習が始まった。まずは前年度優勝校が優勝旗を持って入場し、その後は北から順位入場するので、大谷津学院の入場行進は真ん中あたりだ。それから次々と学校が入場し、大谷津学院の番が来た。
『千葉県代表、大谷津学院高校!』
甲子園に大谷津学院の名前がアナウンスされる。千葉大会の優勝旗を持った堀切を先頭に、真樹達は甲子園のグラウンドに入場した。そして、そこには真樹の見たこともない世界が広がっていた。
(これが、甲子園…。)
晴れた空に、広々とした空間、緑色の芝に褐色の土。今までテレビでしか見たことが無い場所に自分が経っている。そう思うと真樹のモチベーションは急上昇していた。
(遂に明日、ここで試合するんだな。最高の思い出にしよう。)
そう思いながら、真樹は景色を楽しみながら入場行進を続けたのだった。
『』
おはようございます。
なかなか試合に進めなくてごめんなさい。
ですが、もう少し試合前の事を書かせて下さい!




