第121話 現地到着
明けましておめでとうございます!
新年初投稿です!
甲子園出場を決めた大谷津学院野球部は、遂に出発の時を迎えた。慶達が見送る中、真樹達を乗せたバスが宿泊地である大阪へ向けて発車したのだ。揺れ動くバスの中、真樹は隣に座った伸治に話しかけられる。
「遂にこの時が来ちまったな、真樹。」
「ああ。先生も言ってたが、ここまできたらもう後戻りできないぜ。」
「俺達が甲子園か。やっぱりまだ夢見てりみたいだ。」
「確かにそうだよな。だが、これは夢じゃなくて現実だぞ。」
「はぁ、甲子園かぁ。緊張するな。」
「おいおい、まだ試合前だぞ。」
そんなふうに突っ込む真樹。バスの中は緊張感に包まれているが、それでもバスは大谷津学院野球部を乗せて大阪へと走り続けるのであった。
その頃。ここは慶の自宅だ。彼女は自室で大きなカバンの中に何やら沢山の物を詰め込んでいた。
「えーっと。着替えはこんなものでいいか。あと充電機と日焼け止めも必要だよね。」
彼女は真樹達が出場する甲子園を観戦するので、宿泊の為の荷造りをしていたのだった。準備を進めている慶だったが、しばらくして部屋のドアがノックされる。
「慶、入るぞー!」
声は男性の物だった。ドアが開き、声の主が慶の部屋に入ってくる。
「あ、お兄ちゃん!」
「おお。甲子園行く為の準備か?」
「うん。もうすぐ終わるよ。」
慶の言葉の通り、彼は慶の実兄である魁である。慶より3つ上で、現在は地元の千葉を離れて新潟の大学に通っている大学2年生だ。
「それより、どうしたの?」
「母さんが呼んでるぞ。お昼にしようって。」
「分かった。今行くね!」
魁はそのままリビングに向かい、慶も荷造りを終えてリビングにやってきた。今回は魁が夏休みで帰省していたこともあり、珍しく家族全員が揃っていた。
「いやぁ、びっくりした。慶の学校が強豪の習志野商業に勝って甲子園とは。スゴいな。」
「僕もびっくりしたけど、嬉しいよ。仲がいい子も出るし。」
魁は感心した様子でそう言った。両親も嬉しそうに話す。
「いやぁ、父さんも是非、お前の大谷津学院を応援するよ!」
「私もよ!優勝したらすごいわよ!」
楽しそうに話す両親。すると、慶が魁に尋ねる。
「お兄ちゃんはいつまでここにいるの?」
「うーん、来週は夏合宿行くから…とりあえず今週いっぱいはいるつもりだが。」
「そっかぁ。折角帰ってきたからお兄ちゃんに僕の走りを見てもらおうと思ったけど、僕は明後日から向こうに行っちゃうから無理そうだな。」
慶が少しさびしそうにそう言った。魁は慶と同様に陸上をしており、高校の時に全日本高校駅伝で優勝したこともある。大学でも期待の星としてその才能を発揮していた。
「まぁ、今更俺がお前に教えること無いわ。お前は俺の妹だし、心配することは何も無い。甲子園、楽しんで行って来いよ!」
「ありがとう、お兄ちゃん。」
魁は慶に優しくそう言い、慶の方もご機嫌になる。甲子園出発前に、久々の一家団欒を過ごした慶だった。
その日の夜。
「おお。」
「大阪だ。」
バスの窓から外の景色を見た一年生の登戸と丈は、目を輝かせながらそう言った。途中サービスエリアでの休憩をはさみながらおよそ9時間、ようやく外の景色が大都市大阪の明るい街並みを映している。
「すごーい!私大阪って初めて来たけど、こんなに大きい街なんだ!なんだかワクワクしちゃう!」
そう言ったのは台湾、台南出身の沙崙だ。日本に来てからこんな長距離に遠征したのは初めてである。
「来ちゃったねぇ。いよいよ。」
「どうしよう。緊張してストライクはいらなくなったら恥ずかしいわ!」
3年生主将の堀切とエース大橋もかなり緊張しているようだった。そして、武司と伸治、そして真樹の表情も少し険しくなった。
「修学旅行で関西に来たんじゃないよな、俺達。」
「あ、ああ…甲子園の為なんだよな。」
「二人共落ちつけよ。試合はおろか、対戦相手すら決まって無いんだから。」
それぞれの思いが入り混じる中、バスは遂に宿泊地である大阪市内のホテルに到着した。一同はバスから下車し、荷物を纏める。
「よーし、みんなお疲れ様。と言いたいところだが、部屋に荷物を置いたら1階の大会議室に集合してくれ。明日の抽選会に関して説明するから。」
顧問の関谷が部員たちにそう言った。その後、チェックインを済ませてそれぞれの部屋に荷物を置きにいく。因みに真樹は伸治と同部屋だった。
「あー、疲れた。ミーティングなんていいから先に風呂入らせて欲しいわ。」
「バカなこと言ってないで、さっさと行くぞ!ほら!」
真樹はベッドに寝転がる伸治を強引に起こし、引っ張るように部屋から出てミーティング場所である大会議室に向かった。大谷津学院が甲子園の土を踏める日が、刻一刻と近づいていた。
改めまして、皆さん明けましておめでとうございます!
今年も投稿頑張っていきたいので、どうぞよろしくお願いします!




