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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode7 新入生の悩み
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第109話 噴火寸前?

おはようございます。

最近寒くなってきましたね。

 台田みどりは怒っていた。彼氏である本郷丈から別れを切り出されたこと、そして真樹が裏で糸を引いていたことが腹立たしかったのだ。

「丈は私の物なのに、年上だからってそそのかして大切な彼氏を奪った湯川を許さない!」

 ずいぶんな言いがかりだが、今の台田は精神的ショックから正常な言動、判断ができない状態だった。今は自宅にて怒りの感情を込めながらネット掲示板に愚痴を書き続けている。

「どうして!どうして私の言うことを聞かずに同じ学校の先輩の言うことを聞くの?普通彼女の言うことを最優先にしてくれるでしょ!」

 どこまでも唯我独尊、それが台田だった。彼女の強烈な依存心と独占欲の強さは、幼少期に経験した生活が関係しているようだった。一人っ子且つ両親が共働きの台田は、物心ついた頃から一人で自宅で過ごすことが多かった。そして、台田は段々と寂しく感じるようになり、誰かと一緒の時は自分に構ってもらいたいという願望が強くなっていた。両親は勿論のこと、学校でも同じだった。コミュニケーション能力が高くなく、内気で引っ込み思案気味の台田だったが、小学生時代に親友と呼べるほど仲がいい友人はいた。その友人は習い事をしていた関係もあって放課後はいつも遊んでいた訳ではなかったが、学校にいる間は話をしたり遊んだりと、彼女の寂しさを埋めてくれる数少ない存在だった。そして、それゆえに台田はその友人への依存度や独占欲が増加していき、遂に事件が起こる。ある日、その友人が台田以外の別の同級生と話しているのを見た台田は、友人をその輪から引き離して問い詰めた。

「ねぇ、どうして私以外の子達とあんなに仲良く話してるの?」

「どうしてって…じゃあみどりちゃんも一緒に話そうよ!」

「嫌、私あの子たちと仲良くないし!二人っきりで話そうよ!」

「そんな…。悪い子じゃないから話に混じるだけでも…。」

「私はあおいちゃんじゃなきゃ嫌なの!あおいちゃんは私にとって特別な存在なのに!」

「ちょっと、そう言うの重いからやめてくれない?今日のみどりちゃん、なんか変だよ。」

 あおいと呼ばれた友人は台田にそう言った。しかし、台田はあおいが自分のことを拒絶して別の同級生を優先したと思い込み、逆上しながら掴みかかった。

「やだやだ!あおいちゃんは私の物なのに、他の子と仲良くするなんて嫌!あおいちゃんはそんな子じゃない!その精神叩き直す!」

「痛いよ!やめてよ!」

 感情が暴走し、制御不能になった台田はあおいに馬乗りになって殴り続けた。その様子を見た他の同級生や教師は慌てて仲裁して台田を取り押さえた。しかし、あおいが横で鼻血を流しながら泣いているのに対し、台田は反省の色を見せることなく…。

「あんたが私のあおいちゃんを勝手に奪ったのが悪いの!そのせいで私まで怒られてるんだから、謝ってよ!」

 といった具合にあおいが先程話していた同級生に対して悪態をつく始末だった。その後、教職員は台田の母親に連絡を入れ、連絡を受けた母親は台田と共にあおいの家を訪問して直接謝罪した。しかし、恐怖を感じたあおいはその日から台田から距離を置くようになった。台田は自分が避けられていることに恐怖を感じ、学校だけでなく、あおいの自宅や習い事先まで付きまとうようになった。結局あおいは精神的に耐えられなくなり、両親に頼んで転校する事になってしまった。そして、台田はあおいを転校するまで精神的に追い詰めた戦犯として他の同級生に非難されたが、やはり反省する気などなく…。

「分かったわよ!私が悪いんでしょ!みんなそうやって私のこと悪者にしたいんでしょ!だからみんな大っ嫌いなの!あおいちゃんはそんな私でも優しくしてくれたただ一人の存在なのに…!元はと言えばみんなが私からあおいちゃんと話す時間を奪うのが悪いのに!」

 と、あくまで自分は被害者で全て同級生が悪いと言い張った。これがきっかけで台田は小学生時代は孤立し、余計に独占欲と依存心を増幅させてしまったのだった。


 そして、現在。台田はまだ部屋で愚痴を言いながらネット掲示板に書き込みをしていた。両親はまだ帰っていないので自宅には台田一人だ。因みに、台田の両親は彼女より早く家を出て、遅く帰宅しているので台田の状態を把握することは少し難しかった。

「こうなったら、あの湯川とか言う奴を殺して丈を取り戻す、それしかない!」

 凄まじい形相でそう言った台田は、その後も文句を言いながら深夜までネットへの書き込みを続けた。


 翌朝。真樹はいつものように自宅を出て学校に行くべく電車に乗る。前日、台田の掲示板を見た後に容赦はしないと言った真樹だったが、相手にするのも馬鹿らしいという気持ちも半分あった。そんな気持ちで電車に乗った真樹だったが、その直後に声をかけられる。

「おや、この間我が校に来た湯川という者。」

「実はそなたのことが少し心配になっておる。」

 座席には、時々電車で見かけるアニメ好きの男子高校生二人組がいた。この二人、台田とは同じ高校に通っており、真樹は二人のその言葉を聞いた直後に溜息交じりに言った。

「掲示板の事だろ?見たよ。犯罪者にされちまった。」

 そんな真樹に二人は続ける。

「台田の掲示板など相手にする必要はない。」

「それぞまさしく時間の無駄と言える。」

 真樹は二人に対し、気になっていることを質問した。

「そう言えば、台田は学校ではどんな様子なんだ?誰かに八つ当たりして迷惑かけているとか?」

 真樹の質問に対し、二人は少し間を置いて話し始める。

「台田みどりは週明けから学校に登校しておらん。」

「体調不良と申していたらしいが、ネットに書き込む元気はあるから仮病の可能性大。」

「教員は心配しておったが、同級生たちは安心している者が多い。」

「台田の行動に迷惑している者が多く、休んで平和になったという声を聞く。」

「だが、怖い事に油断はできん。」

「あやつは自分が得する為に手段を選ばない者。」

「いつまた暴走するか分からず、我々も冷や汗を流しておる。」

 二人の言葉を聞いた真樹は少し難しい表情で考え込んだ。もしまた本郷に被害が出たらどうしようかと思っていたのだ。

「わかった。教えてくれてありがとう。」

 真樹は二人に礼を言い、電車を降りた。しかし、後に大事件が起きるなど、真樹はこの時考えもしていなかったのだった。

おはようございます。

今日は真樹の出番は少なめでした。

事件とは一体何なのか?

次回をお楽しみに!

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