第103話 異常な彼女
おはようございます!
今日は天気が悪いですね。
野球部の後輩である本郷丈から、彼と交際中の女子高生である台田みどりに苦しめられていることを打ち明けられた真樹。何とか救い出そうと考えを巡らす真樹だったが、その表情は重い。
「相手は他校だしなぁ…手出しし辛いのが問題だ。」
自室の布団に寝転がりながらそう呟いた真樹。本郷には必ず助けると言ったものの、具体的な解決策はまだ思い浮かんでいない。そして、真樹は経験上もう一つ問題があることに気付いていた。
「そう言った輩は、外面だけは良くて身隠しが上手いからな。下手すりゃ、周囲が言いくるめられて、俺らが悪者にされちまう。」
真樹は昔同級生にカツアゲされた時に、教師に発見されたもののその同級生が上手く教師を言いくるめて、言い逃れされた時のことを思い出していた。
「簡単に手出しはできないけど、かと言ってあいつを放置できない。でも、今は何も思い浮かばないからとりあえず寝よ。」
真樹はそう言ってそのままぐっすりと眠りに就いた。
翌朝の日曜日。
「おはよう、真樹!今日もありがとうね!」
「おはよう、オニィ。今日も気合入ってるな。」
時刻はまだ朝の8時だが、成田駅前の改札前にはジャージとリュック姿の慶と真樹がいた。この日は二人が時々行っている合同自主トレの約束をしていたのだった。合流した二人は普段使っている広い公園へ向かい、準備運動を済ませてから走り込みを始める。夏が近づき、気温が上がり始めている季節だったので、走り終えた二人は大量の汗をかいていた。
「ふぅ~、いやぁ、やっぱり暑いね。喉乾いちゃった!」
「待ってろオニィ。今あそこの自販機で飲み物買ってくるわ。」
「え、いいの?じゃぁ、アクエリで。」
「分かった。」
真樹はそう言うと、自動販売機で二人分のスポーツドリンクを購入し、慶と共にベンチに腰掛けて水分補給をした。
「ぷはー、やっぱり生き返るねぇ、真樹!…真樹?」
「ん?あ、あぁ…そうだな。」
「どうしたの、何か深刻な顔してるけど…。」
「んー、実はな…解決が難しい問題にぶち当たってるんだ。」
心配そうな表情を浮かべている慶に対し、真樹は昨日本郷から聞いたことを慶にも話した。本郷が同じ中学で別の学校に通う台田と交際していること、台田が普段から本郷に我儘を言って振りまわしていること、それらのことが原因で本郷の心が蝕まれ、野球部の練習に支障をきたし始めていること等、分かっていることをすべて説明した。話を聞いた慶は目を吊り上げながら立ち上がった。
「何それ、酷くない?あまりにも自分勝手すぎるよ!」
「ああ、全くだ。だけど、本郷もあの性格だからなかなか強く言い返せないらしい。注意するとこれでもかってくらい喚き散らして、手が付けられないそうだ。」
「にしても、お金むしり取ったり、授業中に鬼の様に連絡したり、出ないと理不尽に怒るとか人としてどうかしてるよ!彼氏彼女の関係じゃない!完全に犯罪者と被害者だよ!」
「俺も何とか救いだしてやりたいんだが、如何せん相手は他校の生徒。簡単に手出しできない上に、言って聞くような相手じゃない。寧ろ、こっちが手を出せば帰ってエスカレートさせそうで困っているんだ。」
「かと言って、放置すれば更に調子に乗って、大問題になりかねないもんね。本当に、どうしてそう言う人ってどこにでも現れるんだろう?」
「折角人生初の恋人ができたのに、その恋人に苦しめられて精神病むとか…最悪だよな。若いうちに恋愛した方がいいって言う奴いるけど、全然そんなことないことが証明されたな。」
「い、いや…これはその女の子が頭おかしいだけだし、高校生同士の恋愛も悪いもんじゃないと思うよ。もし僕が真樹の彼女になったら、絶対にそんなことしないし!」
「おい、変なこと言うな!」
「ごめん、ほんの冗談!さ、もう一回走ろう!」
休憩を終えた二人は再び走り始めた。そして、気が済むまで走って体を鍛えた二人は荷物をまとめて帰宅する事にした。
「いやぁ、よく走ったな。今年こそ全国狙えるんじゃないか、オニィ。」
「いやいや。真樹も毎回付き合ってくれてありがとうね。」
話しながら公園を後にし、駅に向かう二人。そんな時、慶があることに気付いた。
「そう言えば、さっき言ってた本郷くんだっけ?今日日曜日だから、今頃二人その…ヤバい彼女とデートしてるんじゃない?」
「まぁ、間違いないだろうな。その彼女が何をしでかすかを考えると、いやな予感がする。電話してみよう。」
真樹はそう言ってスマートフォンを取り出し、本郷に電話をかけた。しかし、いくら電話しても彼が電話に出ることは無かったのだった。
「出ないな。余計に心配になる…。」
「僕もだよ…。」
心配が拭えない状態の二人だったが、そのまま駅に向かってそれぞれ別の電車に乗り、帰宅したのだった。
一方その頃。本郷は真樹の予想通り、台田とデートをしていた。待ち浅瀬場所に到着するなり、台田は本郷に右手を差し出した。本郷は首をかしげながら尋ねる。
「その手は何?」
「スマホ出して。今日1日預かるから。」
「何でだよ!連絡取るのに必要だろ?」
「私がずっと一緒にいるんだから別にいらないでしょ?それに、丈のスマホに変な連絡来たらデートの邪魔。気分が冷めちゃうじゃない。」
「お前のスマホにも連絡くらい来るだろ。それならお前のスマホ貸せよ。」
「だーめ。いくら彼氏でも、女の子のスマホを預かるなんてサイテーよ!プライバシーだってあるんだから。」
これが、真樹が本郷に電話おかけても繋がらなかった理由である。以前に比べて自分勝手さに拍車がかかっている台田に対し、本郷は呆れて言葉も出なくなっていた。そして、不満そうな顔で台田を見つめていると、彼女は目を吊り上げながら言った。
「何?彼女がデートを楽しくするためにここまでやってるのに、そんなに不満なの?分かったわよ!じゃあ、こうしてやるから!」
台田は預かった本郷のスマホを起動させ、どこかに電話をかけた。そして、繋がった先はというと…。
「もしもし?警察ですか?いや、事件じゃなくって、彼氏が110番にいたずら電話してみようって言ってたら本当にボタン押しちちゃって繋がっちゃったんですぅ。」
「ちょ、お前何やってんだよ!」
何とこともあろうに台田は警察の110番にいたずら電話をかけた上に、それを本郷の提案だと説明したのだった。本郷は慌てて台田からスマホを奪い取って事情を説明し、こっぴどく叱られながらも何とか許してもらえた。話が終わった直後、台田は再び本郷からスマホを奪い取り、笑いながら話し始める。
「ほーら、彼女の言うこと聞かないから怒られちゃった。でも、怒られてヘコヘコしている丈の様子が面白かったから許してあげる。じゃあ、行こ!」
「…。」
あまりの無茶苦茶っぷりに、本郷は言い返す気力も無くなる位呆れかえっていた。そして、この日のデートも台田に振り回され、本郷の精神的疲労は更に加速していったのだった。
おはようございます!
台田さんの面倒くささが全開の話でしたね。
本郷くんは大丈夫なのでしょうか?
次回をお楽しみに




